第98話 地獄の登校再び 救いの手は何処

玄関を開けると、やっぱり南城さんと堀北さんが来ていた


俺「おはよう」


南城「おはよ!」

堀北「おはよう」


俺「支度してくるからちょっと待ってて」

仁科さんは飯食い終わったかな……

リビングへ戻ると仁科さんは『すぐに出れます!!』って感じで待っていた


俺「行ける?」


仁科「うん!置いてかれたくないからね!」


俺「じゃ、行こっか」


玄関を出て、南城さんと堀北さんと合流する


俺「お待たせ」


仁科「おはよー!」


南城「おはよー!」

パチン!とハイタッチする南城さんと仁科さん

何してんの?


堀北「おはよう」


さて、行きますか……

登校という名の地獄の始まりだ



俺の右に仁科さん、左に南城さんと堀北さん

この俺が挟まれた並びは非常によくない

どっからどう見ても俺が3人の関係者にしか見えないじゃないか!

既にチラホラ聞こえ始めてるんだぞ……

『あいつ何なの?』『すげー邪魔』『リア充爆死しろ』などなどなど!!

学校に近付けば近付くほど、こういった声は多くなるんだよなぁ

怖ぇよぅ……


学校が視認できるほどに近付いた時、まさかの救いの手が差し出された


四季島「みんな、おはよう」

し、四季島ぁ~……一緒に登校しよう!な?な?

もうこの際爽やかイケメンのお前でもいいや!

俺を救ってくれ、頼む!


南城「四季島くん……?」

堀北「四季島君……」

仁科「ああ、君が噂の……」


四季島「やぁ、どうしたんだい?」


南城「いつもの女の子達はどうしたの?」

あれ?

そういえば、四季島は何で一人でここに?


四季島「……ははっ、たまには一人で行動することもあるよ!」

一人で行動するのがたまにしか無いって、疲れないか?


堀北「そう、くれぐれも暴走させないように管理しておいてね?」

管理って……小さな子どもじゃないんだから……


四季島「ああ、もちろん。あの子たちの心のケアもしっかりしてるよ」

カウンセラーかよ!


仁科「へ~、君がアノ四季島くんなんだねー」

あれ?初対面?


四季島「ああ、初めまして。仁科 豊さん。俺は四季島太一、よろしくね」

仁科さんの下の名前も知ってるのか

やっぱり俺が知らないだけで、仁科さんって学校では有名だったのか


仁科「下の名前なんてよく知ってるね」

あれ?下の名前はそんなに知られてないの?

どっちなの?


四季島「当たり前じゃないか。君みたいな可愛い子の名前ならすぐに覚えられるよ」

うわー……

イケメンじゃなければキモイやつだ……


仁科「可愛いって、四季島君に言われてもトキメかないなぁ」


四季島「はは、これは手厳しい。家庭科部の部長であり、将来有望なパティシエのたまごの君から、そんな辛い評価をされてしまうとはね」

よく知ってんなぁ……


仁科「へぇ~、そんなことも知ってるんだ。四季島君って物知りだね」


四季島「日々勉強は欠かさないからね。あ、そうだ。豊ちゃんって呼んでいいかな?」

会って数分で下の名前にちゃん付けで呼ぶとか、すげーな


仁科「いや、と言いたい所だけど。いいよ。でも私はって呼ぶからね」


四季島「ありがとう、豊ちゃん。仲良くなったら太一って呼んでほしいな」


仁科「いやよ」


四季島「そうか、残念だよ。気が変わったらいつでも呼び方変えてくれていいからね?」


堀北「それで、一人で待ち伏せしてた本当の目的は何かしら?」

本当の目的?

挨拶したかっただけじゃないの?


四季島「お見通し、みたいだね。俺の目的は君だよ。男子生徒A」

え⁉俺⁉!?


南城「また嫌がらせでもするつもりなの?」

えぇ!?嫌がらせ!?


四季島「少し二人だけで話しがしたいだけだよ」


仁科「二人だけ?何で?私たちも一緒に聞きたいなぁ」


四季島「ごめんね、それは出来ないよ。プライベートな事だからね」


南城「……授業が始まる前に戻ってくるなら」


四季島「約束するよ。ごめんね、少しだけ彼を借りてくよ」


堀北「千秋……いいの?」


南城「うん。なんか大事な話しみたいだし……最近の四季島くんなら、大丈夫。信用できる」














四季島に連れて来られた場所は校舎裏だった


四季島「さて、人目の少ないこんな場所に来てもらったのは他でもない」


俺「カツアゲか⁉金ならねーぞ!」


四季島「違う……お前に現状についてだ」


俺「俺の現状?」


四季島「そうだ。今お前は3人の名前持ちから好意を持たれているな」


俺「南城さんと堀北さんと仁科さん」


四季島「そうだ。しかし、お前自身は名前無しmobだ」

そうだけど……


四季島「お前、このままだと一年以内に死ぬことになる…かもしれない」

え……?


俺「どういう意味だ?」


四季島「言葉通りの意味だ。お前はこのままだと死ぬ」

は?

俺、死ぬの⁉


俺「なんで⁉」


四季島「お前がmobだからだ。周りの3人の存在感がお前の存在感を上書きしていって、長くても1年以内にお前という存在は全く別の何かに書き換えられる」

存在が書き換えられる……?

何それ?どういう意味だ?


四季島「簡単に言うと、今のお前と1年後のお前は全くの別人になってるってことだ」

別人……?

でも、そんな変化なんてするわけないじゃん

だって、俺は…名前無しmobなんだぜ?


四季島「命に関わる事じゃないのは確かだし、変わったとしても不幸になるわけでもない。でも、今のお前は消えてなくなる。抹消されるんだ」


そんな……やっと、少し前向きになれたのに……


四季島「打開策はあるし、まだ猶予もある。どうするかは、お前次第だ」


俺が俺じゃなくなる……

ホラー漫画みたいな話しだな……

3人を遠ざけて話したってことは、3人には報せられない話しって事だもんな


消えたくないという思いと……

死ぬわけじゃないっていう思いと……

何も変わらずこのままでいられないかなって想い


どうしたらいいのかな……俺は……

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