第97話 狸寝入りといたずら

俺と仁科さんは二人揃ってリビングへ戻る


母「あら?もう出て来たの?ゆっくり温まってないんじゃない?」

そう仁科さんに声をかける母さん

もしかして仁科さん、お風呂上り?


仁科「大丈夫です!私、烏の行水って感じでお風呂にそんなに時間かかんないんです!」

いや、それでいいの?

女の子でしょ?

髪の手入れとか色々あるんじゃないの?


母「そう?」


仁科「はい!あ、そういえば今日は私何処で寝ればいいんでしょうか?」


母「息子のところよ?」

なっ⁉


俺「はぁ⁉」

仁科「えぇ!?」


母「ジョークよ」

真に受けたらどうすんだよ!!


仁科「よ、よかったぁ……」

ほら、信じかけちゃってたじゃん!!


母「あら?ウチの息子と一緒はイヤだった?」

何聞いてんだよ⁉


仁科「い、いえ、そういう訳じゃないんですけどっ……えっと、まだ心の準備が……」

はぁ……からかわれてるって気付いて!


母「意外と初心なのね~♪可愛いわぁ~」

楽しんでやがる……

付き合ってらんねぇよ


俺「俺、部屋行って寝るから……」


母「ふふ、おやすみ~。私は豊ちゃんともう少しお話しするわ~」


俺「そう。揶揄うのも程ほどにしてくれよ」

いじられ慣れてないみたいだし……


母「揶揄うだなんて心外ね~。楽しくお話ししてるだけよ?」

はぁ……もうそれでいいよ


俺「おやすみ~」


仁科「あ、うん。おやすみ」


母「しっかり寝なさいよ~」

まさか、南城さんと堀北さんの不法侵入の事知ってる?

なら、止めてくれてもいいのに……


階段を上がり部屋に行く

簡単に明日の支度を済ませると

ハンガーにかかった制服から、甘いお菓子の匂いがする

えっと、消臭スプレーは……あ~、もういいや……めんどくさいし


布団へ横になり天井を見上げる


まぁ、何もないんだけどさ……

目を閉じるとすぐに眠気が襲う


今日は何があっても……起きられなそうだ




























目覚ましのアラーム音が聞こえる……


起きなきゃ……起きなきゃ……


う…うん……


俺「ふわぁ~~~~~~……」

よく、寝たぁ~……


部屋には俺一人

良かった……今日は誰も不法侵入してきてないな


制服に着替え、リビングへ下りる




俺「おはよ~」


母「はい、おはよ」

リビングには母さんと妹だけで、仁科さんはまだ来ていなかった


俺「仁科さんは?」


母「まだ起きてきてないわよ?」

起きなくて大丈夫なのかな?

そろそろ起きてこないと朝飯食べる時間足りなくなるのに……


母「気になるなら様子見に行ってくれば?」

う~ん……そうだな

寝坊してたらマズイし、起きてるか確認しに行くか


俺「ちょっと見てくるよ」

客間用の部屋へ行きノックする

しかし、返答が無い……

まさか、本当に寝坊でもしてるのか?


俺「仁科さ~ん!」

声をかけても返事はない……


俺「開けるよ~?」

やっぱり返事はない


しかたない、開けて中入ってみるか

ガチャっとノブを捻ってドアを開ける


中では、仁科さんがベッドで眠っていた


俺「はぁ~……」

起こすか


ゆさゆさと仁科さんの肩を揺する

俺「仁科さん、起きて。そろそろ支度しないと遅刻しちゃうよ?」


仁科「う~、ん……すーーすーー」

起きないな……

もう少し強めに揺すってみるか


俺「仁科さん~!起きてー!」


仁科「うん?……うん、あと5ふん……」

なんともベタな……


俺「ダメだよ。今すぐ起きてって!」

5分後、もう一度同じ事言うのが目に見える

今、しっかり起こさないと


揺する力を強めてみる

しかし……


仁科「う、ふふ、ん……すーーすーー」

ココまでして起きないなんて、あり得ないだろ……

あ、もしかして……実は起きてるんじゃね?

狸寝入りだろ!


俺「起きないと……えっと、どうするかな……あ、いたずらしちゃうぞ~?」

きっとコレで反応するはず


仁科「…………………………」

あ、寝息が聞こえなくなった

息止めてる?

なんで?


仁科「う……………………」

少し苦しそうになった

もうしばらく観察してみようかな


仁科「……………………っ」

そろそろ限界かなぁ

ならもうひと押ししてみようか


耳元で

俺「ほ~ら、早く起きないと……大変な目にあっちゃうよ~?」


仁科「っ⁉⁉」

プルプル震えてる……

もう完全に起きてるな


さて、行くか

もちろん何もせずに部屋を出て行くか


俺「もう起きてるのは分かってるから、着替えてリビングに来てね。朝飯食べる時間無くなるよ~」

ガバッと起き上がる仁科さん

やっぱり起きてたね


仁科「え⁉なんで⁉」


俺「あんだけ揺すって起きないなんてありえないでしょ……?」


仁科「え?揺すって……?」


俺「けっこう強く揺すった時、小さく笑ったでしょ。ふふって」


仁科「それは知らないよ⁉目が覚めたのは君が悪戯しちゃうよって言った時だよ」

途中で起きてたのは認めたな……


俺「じゃあ、なんですぐ起きてくれないのさ……」


仁科「それは……だって、君がどんな悪戯してくるのか気になったから……」

するわけないだろ⁉


俺「しないよ。てか、そういうの苦手なんでしょ?」

覚悟だか心の準備が出来てない時はダメだって、昨日言ってたじゃんか


仁科「えっと……今日は夢の中で予行練習してたから……」

どんな予行練習だよっ……⁉


仁科「夢でね、君が私を抱きしめてね」


俺「そんなの話さないでいいから!!」

まったく……朝っぱらから何言い出すんだよ……


仁科「えへへ……思い出したら、少し恥ずかしくなってきちゃった……」

なら思い出さないで!!

忘れて!!

夢の中の俺は何やらかしたんだよ……

何で夢の内容なんて覚えていられるんだよ……⁉


俺「そんな事より、遅刻したくないから遅れるようなら置いていくかなね?」

これ以上欠席や遅刻なんてしてたら、内申点ヤバくなるだろうし


仁科「えー⁉ヤダヤダ!一緒に行く!」


俺「なら、早く支度してよ……俺は先にリビング行ってるから」

今度こそ部屋を出て行きリビングへ戻る




朝飯を待っていると

制服姿の仁科さんが慌ててリビングに現れる


仁科「よかったぁ……まだ居てくれたぁ」

本気で置いていくって思われてたのか……

まぁ、半分は本気だったんだけどさ


仁科「あ!おはようございます!」


母「はい、おはようございます。すぐご飯用意するから座って待っててね」


仁科「はい!ありがとうございます!」

昨日と同じ位置でテーブルを囲む


仁科「妹ちゃんも、おはよ~」


妹「はい。おはようございます」

既に妹は食べ終えていて

食後のオレンジジュースをチビチビ飲んで出る時間までヒマを潰していた


母「はい。おまちどおさま」

出て来たのは、スクランブルエッグとベーコン、サラダの定番モーニングセットが2人分


俺の分も仁科さんの分と一緒に出てきた

母さん曰く一人分ずつ作るのは面倒らしい


俺「いただきまーす」

仁科「いただきます!」




朝食を食べ終わった丁度その時

ピンポーンとチャイムが鳴る


多分、南城さんと堀北さんだな……

ん?待てよ……?

もし二人が来てて、一緒に登校するってなったら……

俺と名前持ち3人の4人で登校することになるんじゃね?


あはは!両手に華どころじゃないな!はははは……はぁ……


多分今までで一番、辛い登校になるなぁ……

薬箱に胃薬あったら飲んでおこうかな

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