第96話 プリンと寝落ち

たらふく夕飯を食べた後


妹「プリン!!」

と妹が声をあげる

まぁ、わかってはいたが……

よくそんなだけ夕飯食ってプリンも食えるな


俺「ちょっと待ってろ」

プリンを冷蔵庫に入れる時、生クリームがあったから

ハンドミキサーでホイップにして乗せてやろう


ボウルに生クリームを入れ、砂糖を加える

今回はグラニュー糖じゃなく上白糖だ


ミキサーのスイッチを入れると、けたたましい音と共に回転を始める

モーター音と、ボウルと泡立て器がぶつかる金属音、液体が動く流動音

それらがキッチンで数分間響く

角が立ってきた所で一度スイッチを切りボウルを傾ける

流れてこないほどの硬さに仕上がったのを確認し、絞り袋へ移す

口金はオーソドックスな星口金タイプでいく


出来上がったプリンを皿に出す

最初はここで失敗すると全部が台無しになるイメージがあったが……

まぁ、少し崩れたくらいなら誤魔化しは効くというのも経験上知っている


串でカップとプリンを剥がし、皿を被せて逆さまにする

少し勢いをつけてぐるんと回し、そーっとカップを持ち上げる

上手く剥がれればプリンは重力によって更に落ちる


よし、出てきた!!

カップの底面と着いていた部分、出てきた時は天辺になる部分が少し形が悪い

でも、この程度なら問題ないな


冷やしておいたカラメルソースをスプーンでかける

普段ならコレですぐ妹に出すんだが、今日はココに更に生クリームをトッピングする

絞り袋を握り、ホイップクリームを絞り出す

コレで崩れ気味の部分は隠せたし、甘さも格段にアップした

問題は色味だけど……冷蔵庫の中に何かしらフルーツ入って無かったかなぁ

漁ってみるが、見つからない

しかたない、コレで完成にするか


リビングへ持っていき、妹と仁科さんの前へ運ぶ


俺「お待たせ」


妹「プリン♪プリン♪」


仁科「え?私もいいの?」


俺「もちろん」

1個作るよりも複数作った方が簡単だからね


母「私のは~?」


俺「母さんも食べるの?」


母「食べるわよ?あるんでしょ?」

いや、あるけどさ


俺「今持ってくるよ……」

はぁ、母さんまで食べるのかよ


キッチンにあるのは後1皿だけ

自分で食べるつもりだったんだけど……

まぁ、いいか

最後の一皿を母さんのに持って行く


母「ありがとー」

あ~あ、俺だけ食べ損なったなぁ


俺「じゃ、俺風呂入ってくるよ」


母「あれ?あんたは食べないの?」


俺「出すより先に食べたからね」

そう言っておけば、気にせず食べてくれるだろう


母「そう?ならコレは食べていいのね?」


俺「どうぞ~」


さて、風呂入ってこよう


さっと頭と体を洗い、浴槽に浸かる


俺「ふぃーーーーーーーーーーーー……」

今日は……疲れたなぁ……


あ、ヤベ……ちょーねむい……

風呂あがったら……さっさと布団入ってねよ……

あれ……なんか意識が……そろそろあがるか

あ、あれ?腕に力入んない?

足も力入んないな……このままじゃマズイんじゃね……?

あー……でも、何か眠くて……これ以上何も考えられない……


























目が覚めると、裸にタオルを巻いた状態で寝かされていた……⁉


俺「え?あれ?」


母「あ、起きたわね?」

母さん?

ってここリビング?


俺「あれ?俺、風呂入って……寝落ちした?」


母「あんまり心配ばっかりかけないでほしいわ」


俺「ごめん」


母「あんたが中々出てこないから心配で様子見に行ったら、気失ってるし」

あれ?気絶してたの?


母「二人にも手伝ってもらって、風呂場からコッチに運んだのよ」

二人って……妹と仁科さん⁉


俺「え、それって……」

もしかして……全裸見られた!?

めっちゃ恥ずかしい!!!!!!!!!!

死にたい……マジで死にたい……


母「ちゃんとタオル巻いておいたから、二人は今の状態しか見てないわよ」

か、母さん!!さすがだよ!!

ナイスファインプレー!!


俺「よかった……」


母「あんたの粗末なモンなんて年頃の子に見せるわけにいかないでしょ!まったく……」

粗末って……確かに自慢するようなモンでもないけどさ


母「目が覚めたなら、さっさと着替えちゃいなさい。風邪ひくでしょ」

あ、そうだった

よいしょっと!

よし、少しだるいけど動けそうだな


俺「えっと、下着は?」


母「小さな子供じゃないんだから、自分で用意しなさい」

少しくらい労わってくれてもいいじゃん……


え~っと、下着は脱衣所だな

タオルを腰に巻いて廊下を歩く

何か変な感じだな

ドアを開けると……






下着姿の仁科さんがいた……⁉


俺「あ……」

仁科「え?」


俺「キャーーーーーーーーーー!!」

仁科「キャーーーーーーってなんで君が悲鳴上げてるの⁉いいからドア閉めて!!」

あ、そうか

ドアを閉めて、一呼吸

なんで仁科さんが……


仁科「着替えたから入っていいよ」


俺「失礼しまーす……」

中へ入ると服を着た仁科さんが背中を向けて立っていた


俺「なに、してんの?」


仁科「見ないようにしてんだよ⁉」

それなら風呂場の方へ行ってくれると助かるんだけど……

ってあれ?誰か入ってる?


仁科「早く着替えちゃってよ!」


俺「ご、ごめん」

いそいそとパンツを履いてシャツを着る

パジャマを着て着替えは完了っと!


俺「着替え終わったよ」


仁科「す~……ふ~~~~~」

何故に深呼吸?

振り向いた仁科さんは顔を真っ赤にしていた

え?そんなキャラだっけ?

一回襲われそうになった事あった気がするんだけど……⁉


仁科「ふ…不意打ちは、苦手なの」

どういうこっちゃ?


仁科「自分から意識していくのは、まだ心の準備が出来るけど……不意打ちはダメなの……びっくりし過ぎて心臓止まるかと思った……」

いや、え?

何それ?


仁科「あ、あのね。この事は誰にも言わないで……絶対からかわれるから……!」

俺も言えないよ⁉

仁科さんの下着姿見たとか……そんな事言ったら殺されちゃうよ??


俺「もちろん、絶対に誰にも言わないよ」


仁科「約束だよ?」


俺「うん。約束する。とそうだ、助けてありがとね。命拾いしたよ」


仁科「あ、ううん!こっちこそ気絶するほど疲れさせちゃったみたい……ごめんなさい!!」

いや、多分一番の原因は仁科さんじゃないんだけど……

昨日、一昨日と部屋に忍び込んだ人たちのせいでメチャクチャ寝不足だったのが原因だと思う


俺「仁科さんのせいじゃないよ。ただ最近、寝不足気味でね」


仁科「そうなの?」


俺「うん、寝つきが悪くてね」


仁科「そっか。今日はちゃんと眠れそう?」

夜中とかに仁科さんが忍び込んでこなければね!


俺「うん」

というか寝ないとマジでヤバイって


仁科「そっか。よかったぁ」


妹「あの~」

あれ?妹の声が聞こえたような


妹「あの~!!そこに居られると出られないんだけど⁉⁉」

風呂場のドアが少し開いていて、そこから妹がこちらを覗いていた


妹「もう!!これ以上いたらのぼせちゃうよ!!早く出てってよ!」


仁科「あ、ごめんね!」




俺と仁科さんは脱衣所を出てリビングに戻った

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