第95話 手巻き寿司

仁科さんの試作お菓子を妹がつまみ、ぼやけた感想を真剣に伝える

という行動を何度か繰り返した頃、母さんが買い物から帰ってきた


俺「おかえり~」


母「ただいま。あの子たちは何してるの?」


俺「仁科さんの試作したお菓子食べて、……感想言ってる?」


母「なんで最後疑問系なのよ」


俺「あれって感想、なのかなぁって」

なんかこう…ふわってしてるんだよなぁ


母「それで、あんたは何してんの?」


俺「……何もしてないよ」


母「ふーん、そう。暇なの?」

ヒマっていうか、疲れてて何もしたくないんだけど……


母「夕飯の支度手伝いなさい」


俺「え……いや、今日はちょっと疲れてるっていうか」


母「何言ってんのよ。そんなのいつもの事じゃない」

いつものは割と単純な言い訳っていうか方便っていうか……


俺「今日は、マジで疲れてるから」


母「今日は?なんでよ?」

家庭科室で仁科さんとお菓子作りに励んだ事を説明する


母「そう、頑張ったのね」

わかってくれらか……よかった


俺「じゃ、そういうわけで」

部屋に行って夕飯まで寝てようかな


母「待ちなさいよ。手伝わなくていいとは言ってないでしょ?」

はぁ⁉

今の流れ的に『休んでなさい』って言ってくれる感じだったでしょ⁉


母「今何時か分かってないの?」

何時って……18時過ぎだな


母「いつもより遅いのよ。だから手伝ってほしいの」

手伝うったって俺は料理の方はそんなに上手くないし

もう今日は包丁握ったりしたくないんだけど……


母「まずはお米研いで」

はぁ……


俺「わかったよ……でも、ほんっっっとに疲れてるから手は遅いよ?」

のんびりやらせてくれ


母「ダメよ、ご飯早く炊かなきゃいけないんだから」

えぇーーーー……


俺「出来るだけ善処するから勘弁して」


母「しょうがないから、お米研いだら休んでいいわよ」

はぁ~……


俺「お米、何合?」


母「今日は、4合炊いておいて」


俺「了~解」

てか、多いな……





お米水と4合を研いで炊飯器に入れスイッチオン

はい、終わり!

もう、何もしたくない!



夕飯まで、リビングの自分の定位置につき突っ伏して寝る











炊飯器から炊き上がりを報せるメロディーが流れ、目が覚める


俺「う、うん、う~ん……ふぅ……」

目を開けると目の前に仁科さんの顔があった⁉


俺「うおぉっあ!?」

何⁉何なの⁉


仁科「おはよ」


俺「な、何してんの⁉」

名前持ちは人の寝顔?を覗き込む習性でもあんの⁉


仁科「寝てるな~って」

そりゃあ疲れたからね⁉


俺「びっくりするから、覗き込むのヤメテ欲しいんだけど⁉」


仁科「ごめんね!」


俺「なんで覗き込むの?」


仁科「え?だって……無防備でおいs、可愛かったから」

おいsって何⁉

何言いかけた⁉

そもそも男子の寝顔可愛いとか意味分かんないにも程があるだろ⁉


俺「起きた時びっくりするから、本当にヤメテね?」


仁科「うん。もうしないよ」

ホントかなぁ

疑心暗鬼って訳じゃないけど、信じられない……


俺「あ、そういえばお菓子はどうだったの?」

妹はちゃんと感想言えたのか?


仁科「あ、あれね!妹ちゃんのおかげで解決できそうだよ!!」


俺「そうなの?」


仁科「うん!」

まぁ、役に立ったみたいで良かったよ

あの妹がねぇ……


仁科「今日さ……疲れちゃった?」


俺「あ~、うん、まぁ」

経験上、嘘吐いてもすぐバレるからな……


仁科「そっかそっか……ごめんね、付き合わせちゃって」

気にしてたんだ

半ば無理矢理だったからなぁ

でも、結果的には悪くはなかったし


俺「いや、楽しかったよ。あんな量のお菓子作り、なかなか出来ない経験だったし」

良い経験を積めたと思う

活かす場は思いつかないけど……


仁科「本当に楽しかった?無理してない?」

そんなに心配することか?


俺「本当に楽しかったよ」


仁科「そっか……ふふ、よかった。私だけ楽しんじゃったかなって心配だったんだ~。私、お菓子作りになると周りが見えなくなっちゃうから……」

そんな言うほど周りが見えなくなってるようには感じなかったな


俺「今日見た感じ、大丈夫だと思うけど?」


仁科「へへ、そうかな?なら大成功、かな」

まぁ、お菓子も時間までに間に合ったし

そんな言うほどの失敗なんて無かったと思うな


俺「ああ、大成功なんじゃないか」


そんな今日の感想を話し合っていると母さんから声をかけらた


母「今日のお夕飯は~~~~~~~~~」

ずいぶん溜めるな


母「じゃじゃーん!手巻き寿司でーす!」

おお!!

久しぶりだ!


母「ノリと酢飯と具材、自由に使っていいからね」

この流れは、うちでは恒例の


母「手巻き寿司パーティーよ!」


仁科「わぁ~!美味しそう!!」


母「じゃんじゃん食べてね~!」


妹「いただきまーす」

仁科「いっただきまーす!」

俺「いただきまーす」


何から巻こうかなぁ

マグロ、サーモン、イカ……迷うなぁ

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