第94話 仁科さんと帰宅

仁科さんと一緒に帰宅すると

何度目だろうか……妹が仁王立ちで待っていた……


俺「た、ただいま」


妹「おにー、まさか忘れてないよね?」

どうやら俺は何かを忘れていたみたいだ

なんだろ……妹と何か約束したっけ?


仁科「あ、妹ちゃん!やっほ!」


妹「えっと……仁科先輩?」


仁科「そうそう!覚えててくれたんだね!嬉しい!」

妹よ……なぜ“?”を付けた

実は自信無かったんだろ?


妹「は、はい……。それはそうと、おにー?」

あ、ハイ

何か約束すっぽかしてるみたいだな

何だ?何の約束だ?


妹「最近、妹の扱いが悪い気がする……」

いや、そんな事ないぞ?


仁科「何か約束してたの?」


俺「え?あ~、そうみたい…なんだけど……」

何だっけな


妹「ぷーりーんーーーーー!!」

あ~、そかそか

プリン作る約束してたんだ……!


俺「明日じゃ、ダメ?」

もう今日はキツイんだけど


妹「ダメ!今日食べたい!」

マジかぁ……

しゃーないなぁ、作るか


俺「食べるのは夕飯の後だからな?」


妹「うん!」


仁科「手伝おうか?」


俺「いや、いいよ。俺が作る約束したんだし」

はぁ……しんどい……


仁科「それじゃ、見学しててもいい?」

見学って……


俺「面白いモノでもないと思うよ?」

正直退屈するんじゃないかなぁ


仁科「私、誰かがお菓子作ってるの見るの好きなんだよね」

変わってんなぁ


俺「お好きにどーぞ」


仁科「わーい!」

物好きだなぁ


妹「むぅ~……私も見てるからね」


俺「そんな見張らなくてもちゃんと作るよ」


妹「見張りじゃないもん……」

じゃあなんだよ……



制服から普段着に着替えてキッチンへ立つ

念の為頭にはバンダナを巻いて、エプロンはメンドクサイから付けない

制服とかと違って汚れてもすぐ洗濯すればいいしな

さて、やるかな!



まずは

卵と牛乳と……










漉して、ダマや気泡を潰して……











蒸して、荒熱取って、冷蔵庫にIN






鍋でカラメル作って、小皿へ移してコレも冷蔵庫に入れる



はい、おしまい!



仁科「君って、手際いいよね?」


俺「まぁ、慣れてるからね。そこの愚妹の要望がある度に作ってるからな」


妹「私はおにーが作ってくれたの食べてるだけだもん!」


俺「チョコといい、クッキーといい、ホントよく食うよな」


妹「もう!それじゃ私が食いしん坊みたいに聞こえるじゃん!」


俺「いつも残さず食べきるくせに?」


妹「それは美味しいのがいけないの!!」


仁科「あ!それ分かる~!美味しいと食べちゃうよね~」


妹「ふふん!二対一だよ!」

何が二対一だよ


仁科「それで?この後は何するの?」

この後かぁ

何しようかなぁ


俺「特に決まってないよ?夕飯まで何の予定もないし」


妹「またゲームする?」

ゲームかぁ


仁科「あのさ!何もないなら、相談したい事あるんだけど……いいかな?」

相談……?

なんだろ?


俺「いいよ」


妹「じゃ、私は部屋行ってるから」

席を立つ妹

しかし


仁科「あ、妹ちゃんにも聞いてほしいんだけど時間あるかな?」


妹「私もですか?」

コイツも交えてって、どんな相談だ?


仁科「うん。お願いできないかな?」


妹「いいですよ?でも、私じゃ力になれないと思いますけど……」

そうだよなぁ


仁科「ううん。寧ろ妹ちゃんの意見が聞きたいの」


妹「私の意見?」


仁科「うん!」

なんの相談なんだろうな……

妹はもう一度席に着き、聞く体制になる






そして、始まった仁科さんの相談タイム……



内容はお菓子の事についてだった
















仁科「あのね、今考えてるお菓子があるんだけど……試作して食べてみたんだけど、何か違うんだよね」

カバンからプラスチック容器を取り出す

中には、見たことのないお菓子が入っていた


仁科「コレなんだけど、ちょっと食べてみてくれる?」

一口サイズのお菓子は、どうやら焼き菓子のようだけど……

なんだろうな

一つ詰まんで口に放り込む


うん……美味い

なんだろ……果実酒かなんかの香りがするな

全体的にサクサクしてて、美味しいと思うんだけど


妹「もぐもぐ……ん?」


仁科「どうかな?」


俺「美味しいよ」


妹「はい。美味しいです……」


仁科「妹ちゃん、何か気になったことある?」


妹「えっと……その……何て言うか、ちょっと物足りない気がします」

物足りない……?

充分美味いと思うけどな


仁科「やっぱりそう思う?」

え?そうなの?


妹「少しだけ……ですけど……」


仁科「まだあるから、ソッチも食べてみてくれる?」


妹「はい」


どうやら、妹と仁科さんは何か納得いってないみたいだ

俺には分からないから、戦力外って感じかな……?


仁科さんはカバンから複数のプラスチック容器を取り出し並べる

それを食べては首を傾げる二人

さて……俺は純粋に美味い菓子として楽しむかな

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