第90話 割チョコ刻む係

昼飯(半分ケーキ)を食べ終えた俺と仁科さんは次の作業に入る


仁科「さてと、みんなが来る頃にはチーズケーキは固まってるはずだから……放課後用に作るよ~」

今度は何を作るんだ……?


仁科「何作ろうかなぁ~」


俺「何作るか、決まってないの⁉」


仁科「そうだよ~。いやぁ、楽しすぎてもう作りきっちゃったんだよね、今日の分」

何だってー⁉


俺「どうすんだよ⁉」

俺がすぐ作れるのはクッキーくらいしかないんだぞ⁉


仁科「だいじょーぶ!!」

な、何か案があるのか!!

よかった……


仁科「君と一緒に考えれば何とかなるって!」

ぜんぜん大丈夫じゃなかった⁉


俺「いや、俺じゃどうにもならないって!!」


仁科「君がクッキー以外も作れるのは知ってるんだからね?」

いや、それこそ超簡単なモノしか作れないって!!


仁科「とりあえず方針は、チョコ系で攻めるよ!!」

チョコ系って言ったって……何作るんだよ


仁科「なんでもいいから、君の知ってるチョコ系のお菓子の名前挙げて!」

何でもいいって言っても……

え~っと、何だ?

いきなりそんな事言ったって……


俺「生チョコ……フォンダンショコラ……ガトーショコラ……」

あと、何かあったっけ?


仁科「いいね!全部作ろ!」

はぁ~!?

今から全部!?

ムリムリムリ!!

放課後までに間に合うはずないって!!


俺「どうやって⁉」


仁科「気合!」

気合!?


仁科「ってのは嘘、今言ってくれたモノなら作れる理由があるんだよ」

作れる、理由?


仁科「まぁ、生チョコは冷やすから早めに作るとして…フォンダンショコラはガナッシュが冷蔵庫にあるから簡単に作れるよ!」

ガナッシュ?


仁科「ガトーショコラには一手間加えてみたいから、ちょっと時間かけるけど」


俺「間に合うのか……?」


仁科「うん!君が手伝ってくれるならね!」

まぁ、手伝うのはいいんだけど……


俺「じゃあ、まずは何から?」


仁科「そうだね、まずはチョコ刻んでもらっていい?」

それなら簡単かな


俺「了解」

包丁と俎板を用意してっと

どのくらい使うのかなぁ……さすがに500gじゃ足らないだろうけど


仁科「じゃあコレ全部よろしく!」

はいぃ⁉⁉

持ってこられたチョコは割チョコ……

製菓売り場なんかで500g入りで売られてるチョコの塊だ

これ自体は自分でも買って使ったこともあるけど……!

この量はおかしいでしょ⁉

何で3袋も用意してあるの⁉

1500g!?1.5kg!?!?

こんなに使うの⁉


仁科「頑張って!それが出来ないと全体の作業が遅れちゃうからね!」

いやいやいや⁉

俺一人にコレやらせるつもり⁉


俺「仁科さんは⁉」

俺一人にこれ押し付けるつもり!?


仁科「私?私は材料量ったりするから忙しいんだよ⁉だから君も早く刻んじゃってね!」

なんですとーー!?

た、確かに俺じゃ分量分かんないけどさ!

この量を俺一人でやるの⁉


俺「手が空いたら手伝ってくれるよね⁉」


仁科「手が空いたらね!」

よ、よし!

最悪終わらなくても仁科さんも刻む作業はしてくれるみたいだし……始めるかな


ゴリ!ザク!ゴリ!ザク!

一つの塊が70~80g前後で、それが6コくらい入って1袋……それを3袋かぁ……

これ、俺の腕持つかなぁ……

途中で包丁落とさなければいいけど……


ひたすらにゴリゴリザクザク割チョコを刻む

やっと一袋が終わりそうになった所で、細かくなったチョコを仁科さんが回収に来た


仁科「うん、良い感じだね。できればもう少しだけ細かくしてほしいな」

バレたか……!

少し楽しようと思って荒めに刻んだんだけど……即バレとか……マジかよ……


俺「りょ、了解……」

仕方ない、次の袋の分はもう少し細かくするか……

ちまちまと刻み続ける

コレ、手にタコ出来そうなんだけど⁉


仁科さんは一人でアレコレ量っては混ぜてと高速で作業を進めている


そんな忙しい仁科さんに追い打ちをかけるように、試食担当の女子が家庭科室に入ってくる


仁科「あ、来たね⁉今切り分けるからちょっと待ってて!」

冷蔵庫からチーズケーキを取り出し、細目にカットしていく

皿に乗せて、ソースを掛けて机に並べていくが

並べた端から試食担当の女子たちに食べられていく

しかし、仁科さんも負けない速度でケーキを並べていく

ある程度すると人がひいていき、計量に戻る


そんな姿をチラ見しつつ、俺はチョコを刻み続ける

ゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリ


まだあと一袋残ってるんだよなぁ……

でも……負けてられないな


3袋目を開けて俎板の上に取り出す


俺「ふぅ~……やるか」

気合を入れ直し包丁を握り直す

既にプルプルし始めているけど!

止まるわけにはいかない!!


俺はチョコを刻む作業を再開する

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