第5話 よく考えたら

病院に行った次の日

久しぶりに一人で登校している


うん。やっぱり目立たないっていいな!

mobはmobらしく!

ヒッソリと日々を平和に過ごす

これに限る


今日は土曜だし、授業は午前中の半日だけ

午後は盛んな部活動の時間だ

どうやら昔土曜を完全な休みにしようという動きがあったらしい

部活も休み、グラウンドも使用禁止

そんな提案が上がった

しかし、当時の生徒たちがそれに猛反発した

結果、登校するなら勉強もするように!となった

俺としては部活に入ってないから休みで良かったんだけどな


まぁ、そんな訳で俺は今午前中の授業の為だけに学校へ向かってる



俺「……だるいなぁ」







教室に着くと、クラスメイト達が遠巻きに俺を観察する

ヒソヒソと俺にギリギリ聞こえない声で何か言っている?

気のせいかな?


俺「B、D!おはよー」


B「おはようございます」


俺「なんで敬語!?」


D「俺たち無害なんで消さないでください」


俺「いやいやいや!なんで⁉いつもみたいにしてよ!」


B「仰せとあらば」


俺「なんでそんな他人行儀なの⁉」


D「我々は無害です。信じてください」


俺「だから何言ってんの⁉どうしたのさ⁉」

一昨日までは普通に会話できてたのに、なんで今日はこんな変な感じなの?

昨日、何かあった?

俺が休んでる間に何が起きた⁉


南城「あ、おはよ」


俺「おはよー、南城さん」

何かいつもと雰囲気が違う?

大人しすぎる?そんな感じだする……?


堀北「おはよ、具合はどう?」

堀北さんはいつも通り、かな?


俺「全然問題ないよ。あ、そうだ!二人が助けてくれたんだって?ありがとうね」


南城「ううん。半分は私達のせいだから」


堀北「そうね。ごめんなさいね」

なんだ?

なんか二人とも陰のあるような……?


俺「あの、さ……なんかみんなの様子がおかしいんだけど……何か知らない?」


南城「えーっと……」

堀北さんへ目配せする


堀北「……ごめんなさい」


俺「ん?どういう事?」


堀北「詳しくは、ここでは話せないの。放課後、時間いいかしら?」

放課後?

まぁ、いいか?


俺「予定はないから、いいけど」


南城「ほんとにごめんね」

南城さんと堀北さんはそれ以上何も言わず自分の席に着いた




なんなんだ?

BもDも様子が変だし……

そういえば!

今日は誰も俺に嫌がらせしてきてない⁉


そういえば……四季島は?

今日は見てないな……

名前持ちが見当たらないなんて、珍しい事もあるもんだな

病欠かな?







今日のこのクラスは異常なまでの静けさに包まれながら授業を終えた

先生たちも不思議がってはいたが授業がし易いからか何も言わない

そして、約束の放課後になる






堀北「おまたせ」


俺「いや」

南城さんは沈んだ表情で黙ってる?


堀北「まずは……何から説明しましょうね」


俺「今日、クラス全体がおかしな雰囲気だったのは関係あるの?」


堀北「ええ、そうね。関係あるわ」


俺「えっと、なんで?」


堀北「それは、」


南城「ごめんなさい!私がいけないの!」


俺「南城さん?」


南城「一昨日ね、君を助けるためにね……」

俺を助けるため?


堀北「千秋、落ち着いて」


南城「ぐすっ……」

南城さんが涙を流す


俺「南城さん?」


堀北「まずは、そうね。一昨日の出来事の説明からしましょうか……」

一昨日の出来事って、俺が気絶して保健室に担ぎ込まれた時か?


堀北「あの日、君は一通の手紙を受け取ったのは覚えてる?」

手紙……?誰からの……?

わかんない

でも、なんか…引っかかる……

あんまり良いことでは、無かった気がする……


堀北「覚えてないみたいね。あの日、君は偽のラブレターで呼び出されたのよ」


俺「偽の、ラブレター?」


堀北「そう。それで君はまんまと屋上へ呼び出されたの」


俺「屋上?」


堀北「そう。そして不良の彼らに死ぬほど暴行されたの」


俺「え?でも、俺ケガなんてしてなかった」


堀北「そう、世界の理で修正されたの」


俺「世界の理?それって名前持ちの人たちの為にあるモノなんじゃ」


堀北「ええ、私たちの想いで世界の理が発動したの」


俺「堀北さんたちの?」


堀北「ええ。君を害する人は必要ないって想いで、君に危害を加えた人は」


俺「まさか……」


堀北「消失したわ」

そんな……


南城「ごめんね。ごめんね」


堀北「そして、昨日それを四季島くんが言いふらしたの」


俺「四季島が……?」


堀北「ええ、君と喧嘩した不良5人が消失したって」


俺「え!?でも、俺は」


堀北「そう。何もしてないし、普通に考えれば被害者なの。でも」


俺「でも、もし俺が当事者じゃなければ……そいつとは距離をとるな」


堀北「そう、よね……今日の周りから君の扱いが変だったのはそれが理由」


俺「そっか……わかった。教えてくれてありがとね」

まぁ、そんな理由があるなら

しかたない、のかな


堀北「いいえ、私たちのせいで君の友達が君を警戒しちゃったわ」


俺「ま、きっとそのうち分かってくれるさ」

あいつらなら、大丈夫だと思う


南城「春香……」


堀北「千秋……そうね。言わなきゃね……よく聞いてほしいの。まだ本題というか、本質を話してないの」


俺「え?本質?」


堀北「……君が渡されたラブレターは、とある女子が書いたものだったの」


俺「とある女子?」


堀北「そう、彼女は女子生徒D。四季島太一の取り巻きの一人よ」

四季島の取り巻き?がなんで不良に加担したんだ?


堀北「彼女の役目は手紙で君を誘き出すことだけ」


俺「誘き出す、だけ?」


堀北「そう。その後、不良をけしかけたのは不良のボス」


俺「てことはそのボスが犯人?」


堀北「いいえ。ボスは誰かに頼まれたらしいわ」


俺「ボスなのに、誰かに頼まれて協力したのか」


堀北「ええ。でも、ボスは名前無しなのよ。だから名前持ちから頼まれれば断れない」


俺「ってことは、名前持ちの誰かが俺を?」


堀北「そうよ」

名前持ちに恨まれるって……俺が何をしたって言いうんだ?


堀北「もう分かったでしょ、今回の黒幕が誰か」

黒幕……今の話で出てきたのは

女子生徒Dと不良5人、不良のボス……そして


主人公級の名前持ち……四季島太一


俺「四季島が……?」


堀北「そう。四季島くんが今回の黒幕で真犯人。君を殺そうとした張本人」

コロって⁉え?嫌がらせじゃなくて、命を狙われてたの⁉


俺「なんで、俺を……」


南城「ごめんね。私のせい、なの」


俺「南城さん?」


南城「私が君と一緒にいるから……四季島くんは君を消そうとしたの」


俺「俺を消して、何の得があるんだ?」


南城「多分、私の好意が君から自分に向くって思ったんじゃないかな」

は?それって……


堀北「まぁ、有り体に言えば嫉妬、ね」


南城「私のせいで、君は死にかけて……ほんとに、ごめんね」


堀北「私からも謝罪させて。ごめんなさい。危険な目に遭わせたわ」


二人が俺に頭を下げて謝ってくれる

でも、俺は違和感があった

これは南城さんと堀北さんが悪いのか?

仕掛けたのは四季島だろ

南城さんと堀北さんは俺が死にかけてた所を助けてくれた恩人だ

確かに、二人が俺に関わらなければそんな目に遭わなかっただろう

でも、それはあくまで結果論だ

悪い事をしてないこの二人が俺に謝るのは

なんか

間違ってる気がする


俺「あの、さ。二人とも」


南城「なに……?」


堀北「……?」


俺「……助けてくれてありがとう。二人のおかげで今俺は生きていられる」


南城「え?」


俺「二人が助けてくれなければ今頃、俺は死んでた」


堀北「死ぬような目に遭ったのは、私たちが」


俺「それは、違う!と思う……悪いのは、四季島の野郎だろ?」


南城「それは」


俺「二人は俺の命の恩人だから……だからありがと」


堀北「許してくれるの?」


俺「許すも何も俺は二人を責めてないから」


南城「……ぐすっ……よかった……よかったよぉ」


俺「堀北さん、話してくれてありがとね」


堀北「私は、責任を果たしただけよ」


俺「そっか……さて、それじゃこの話はもうお仕舞いでいいかな?」


堀北「君がそれでいいなら」


俺「それよりも、俺は来週からどうやってBやDと話そうかの方が大事かな」


南城「何か、手伝える事あれば言って!絶対手伝うから!」


俺「ありがと、何かあればよろしくね」


南城「うん……!」


堀北「もちろん私も手伝うわ」


俺「ありがと。さて、それじゃ俺は帰るよ。また来週!」


堀北「ええ、また来週」


南城「またね」








一人帰路に着く

家に帰ったらBとDの奴に連絡いれてみるかな

きっと話せばわかってくれるさ

なんだかんだ付き合いは長いからな、あいつらとは

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