第3話 地獄の昼休み
今日もこの時間がやってきてしまった……
授業中は席が離れていて会話する時間は殆どないが、今は違う
本来は休息のための時間であるが、今の俺にとっては拷問と言える時間……
そう、昼休みである
今日も、あの二人は俺のとこへやってきた……
初日はやんわり断ったつもりなんだよ?
「あ、俺は弁当だから。学食へは行かないよ?」と
そうしたら二人はわざわざ学食へ行きパンと飲み物を買って戻ってきたのだ!
なぜそこまでする!?
今まで通り四季島と学食で食べてろよ!
そして二人は昨日から弁当を持参して俺の机の周りに集まるようになった
BとDは初日に席を譲らされて、二人で食べるようになったよ……
俺はBとDと昨日のアニメについて話したかったのにな
南城「あ、それ美味しそー」
堀北「ふふ、何と交換する?」
南城「ん~~~~、じゃあタコさんウインナーとどう?」
堀北「まぁ、いいでしょう。はい、あーーん」
南城「あーーん!ん!美味しーー!じゃ、こっちのどーぞ」
堀北「はむ。…うん、いい塩加減ね」
二人してあーんって食わせ合ってるんだけど……もちろん俺はしてないよ?
たまに俺の弁当の中身が狙われるが、言われる前に掻っ込むように食べてなかった事にしてる
一口頂戴って言われたら最後、断る事はできない……
自分の弁当を死守するために味わうという行為を犠牲にした!
そそくさと弁当を食べ終わって片付ける
しかし、俺は席を離れるわけにはいかない……
今席を離れたら、二人が俺の席を陣取るために争いを起こす
昨日の昼休み、俺は飯を食べ終わってトイレに逃げ込んだんだ
数分して様子を見に戻ってきたら、二人は俺のいない隙に俺の席に座ろうと争っていたんだよ!?
信じられるか?
美少女2人が俺の席を椅子取りゲームみたいに奪い合っているんだぞ?
呆然とその光景を眺めてたらさ
俺を見つけたクラスメイト達が俺を睨んで視線で
『何とかしろや!お前のせいだろ!』
って言ってくるんだよ
目は口程に物を言うって本当だね!?
いや、そもそも俺にそんな力はないよ!
あったらこんな状況になってないよ!チクショー
幾ら首を横に振ってもクラスメイト達は俺を睨むし、どうしろっていうんだよ
俺「あ、あの~…お二人さん?」
南城&堀北「!?」
俺「えーっと、何してるのかな?」
南城「べ、別に何もしてないよ!?」
堀北「ええ、ちょっと食後の運動を、ね?」
俺「そ、そっかぁ」
そんな言い訳あるか!
と思うけど、何も言わない
ここで何か言ってもよい結果は訪れない
まさに藪蛇だ
二人はすぐに大人しくなってくれたから、これでクラスメイト達から非難される事もないだろう
もの凄く視線が刺さってる気がするんだけど、きっとこれは気のせい
気のせいだから、気にしたら負けだぞ
なんて事があったのが昨日だ
だから俺は仲良く昼食を食べる二人を眺めながらこの針の
食べ物を食べても味がしない感覚ってのは慣れないなぁ……
そんなこんなで半ば放心状態で昼休みは乗り切った!
帰りに胃薬買いに行こうかな……
そして、授業が終わり待ちに待った放課後である!!
俺はどうにか二人を撒いて屋上へ向かわないとならない!
南城「一緒に帰ろー」
俺「ごめん、今日は用事があるから」
堀北「なら待ってますよ」
俺「いや、何時に終わるかわかんないから」
南城「私たちが手伝ってあげる!そしたら一緒に帰れるでしょ?」
俺「いや、二人には頼めないことだから!ごめん!」
カバンを置いたまま、教室からダッシュで逃げる!!
南城「なんで逃げるの⁉待ってよ~!」
南城さんが凄い勢いで追いかけてくる!?
堀北さんは出遅れたか、追って来てない
よし、南城さんから逃げ切れば俺の勝ちだ!
今まで出したことのない程の全力疾走!
いくつか階段を上り下りして、なんとか南城さんの追跡を撒いた
よし、これで見つからないように屋上へ行けば
俺の人生は終わらないですむ!
どうやら完全に撒いたみたいで、南城さんとも堀北さんとも合わずに屋上へ行く事ができた
屋上のドアを開けると、一人の女子が立っているのが見えた
俺「君が手紙をくれた、Dさん?」
D「はい。よかった。来てくれたんですね」
俺「あ、ああ。もちろん。ラブレターをもらうなんて初めてだから驚いたけどさ」
D「私も初めてです…………好きでもない人に書いたのは」
スッと表情が冷たくなるDさん
俺「え?」
今、なんて言ったんだ?
好きでもない?
聞き間違い、かな?
D「太一君の頼みだから書いたけど、もう二度と書きたくないわ」
俺「え?何それ?ちょ、待って、状況が飲み込めないんだけど」
D「鈍いですね。アナタ、騙されたんですよ」
騙された?何で?誰が?
訳分かんないって!
D「じゃ、私の役目はここまでなんで」
Dさんはそれだけ言って屋上から出て行った
俺「はは、まさか、こんな悪戯されるとはね……」
これは、俺がいけないのか?なぁ?
救いがあると思ったのが間違いだったのか?
俺には破滅しか残されてないのか?
もう……疲れたな……
悲しみに暮れていると
バタンっ!と大きな音を立て屋上のドアが開けられる
上がってきたのは素行不良そうな男子達
制服は気崩して、ピアスやゴツイ指輪を嵌めたやつらだ
不良1「おう、こいつじゃねーか?」
不良2「だな、さっさと片付けて帰んぞ」
不良3「めんどくせーな」
不良4「そう言うなって、これもボスの命令だ」
不良5「君は男子生徒Aで間違いないね?」
俺「え、は、はい」
な、なんだ⁉つい答えちゃったけど、これピンチなんじゃ……?
不良1「おめーに恨みはねぇけど、ちょっと俺達と遊んでもらうから」
遊ぶって、ゲームとかそういうのじゃ……ないですよね~
めっちゃ指ポキポキ鳴らしてるもんなぁ
俺「ちょ、ちょっと待ってくれ!何で俺なんだ?」
不良2「お前の質問に答える必要はない」
俺「そう言わず!そこを何とか!ね?」
不良5「そーですねぇ、強いて言えば目障りだったからでしょうか」
俺「目障り……?」
やっぱり
どうする?
逃げるには出口を塞がれてるし、闘うのは無理だ……俺弱いもん
mobが喧嘩強いとかありえないでしょ?
そういうのは
なんでmobの俺が狙われなきゃいけないのさ!!
そういったイベントとは無縁でいられるのがmobの良い所なんだから!!
なんとか抗ってみるか?
多分ケガが増えるだけだよなぁ
はぁ……もう、俺詰んだな
もしかしたらここで人生終了のお知らせかなぁ
不良の一人が背後に回って俺を拘束する
2人の不良が交代で俺の腹や顔を殴る
すげー痛い
でも抵抗する力なんて無い
俺は無力なmobだから……
きっと、名前持ちなら
そんな未来は俺には来ない
ああ
このまま
俺
死ぬんだ……
もう少しで意識が無くなる
きっともう目覚める事はないだろうな
バタンと屋上のドアが開いた
不良たち全員がドアの方を見る
不良5「な⁉」
不良3「なんでココに」
不良2「
入ってきたのは名前持ちの美少女二人組
南城さんと堀北さんだった
南城「ねぇ?君たち何してるの?」
温度の無い、絶対零度の笑顔で問いかけた
不良5「あ……いや…」
堀北「そこの彼に何してるのか聞いてるのよ」
いつもとは全く違う鋭すぎる眼光で不良たちを睨む
不良3「ちょっと遊んで」
不良4「おい!黙ってろ!オレたちは、頼まれただけだ!」
南城「へ~、誰に頼まれてこんな
堀北「白状しないと……」
不良2「ぼ、ボスがやれって」
不良1「お、おい!」
南城「ボス?名前持ちかな?」
不良4「いや、ボスはボスだ。名前持ちじゃない。俺達は命令されただけなんだ
!」
堀北「そう。でも、名前の無いアナタたちが彼を襲うのはおかしいよね?」
不良2「ボスも、誰かに頼まれたって……だから!」
南城「そっか!教えてくれてありがとね!」
南城さんの笑顔に不良たちが緊張を緩めホッとする
堀北「もう用済みね」
南城「そーだね!」
不良達「!?」
南城「私たちを敵に回した事を後悔しなよ」
堀北「お元気で。生きていられれば、ですけどね」
不良5「そんな⁉ちゃんと話しただろ!」
堀北「私達を無駄に怒らせた。そんな
無慈悲に突き付けられる存在の否定
名前持ちに逆らった
存在の抹消、だ
彼らは怒らせてはならない主役級の二人を怒らせてしまった
これで、彼らはこの
この後、彼らは段々と体が透けていき仕舞いには完全に消えてなくなる
この先の未来を失い、存在を消されるとはそういう事だ
もう誰にも止める事はできない
彼らに未来はない
このやり取りを見終わると同時に、蓄積されたダメージで俺の意識はプツンと切れた
次に目覚めたのは、保健室のベッドの中だった
どうやら一命は取り留めたようだ……
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