sweet dreams

夢だ。





それはとても甘い夢。


白い霧があたりを包み、その中心に我々の望んだものが、誘うような、妙に色味を帯びた目つきで横たわっている。


そして、殆どその狙いの通りになった。誘われるまま、我々は歩き出した。腕を振って、濃い霧を掻き分けながら一歩、また一歩と進んでいった。歩くたびに白い煙たちが渦巻いて、背後に回っていった。


いくらか進んだ先では、甘い夢が目下に横たわっていた。この手を伸ばせばすぐに触れる事ができるし、口を動かせば、この声を届ける事だってできる。そして、わずかな布が擦れる音だって耳にした。


身をかがめて、手を伸ばした。


瞬間、身体の丁度胃袋のあるはずの部位から、白い霧がぼんやりと伸びた。気流の流れに沿ってその場で渦巻いているように見えた。しかし、私の身体に接する部位から次第に赤く染まっていった。そして数秒後には40センチほど伸びたそれは、全体を赤く染めていた。


朝から力が抜けて、私はその場に崩れ落ちる。膝をついたところで、赤く染まった煙のような円錐はその場を維持したまま分散して、散った。そうしていたるところに浮遊していた。


甘い夢など、どこにもなかった。


何もない、まるで自己の空白を表すように。


頭を床につけて、その冷たさと身体が同化していくのを感じながら。

暗くなり行く空間を見つめていた。

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