第57話 魔導書

その後もサーニャとロゼッタ対ニーダとの戦いは続き中々決着が決まらなかった。

ニーダの体力をなんとか半分まで減らす事は出来たが二人の体力は限界に近づいていた。


(あともう少しいければ…倒せるのに…)


「…ねぇ…サーニャ…私…いい事思い付いたんだけど…一か八かでやってみない…?


「うん…わかった…やってみよう…」


サーニャはロゼッタの提案にのり、ニーダに向かって走った。


「サーニャ!伏せて!」


ニーダは姿を消してすぐロゼッタは叫びサーニャは伏せた。


「っ!?」


ニーダが姿を現したと同時にロゼッタは強力な攻撃魔法を発動しニーダに当てた。ニーダは吹き飛ばされ地面に倒れた。

ロゼッタの放った魔法がとても強力だったからかニーダは動けなかった。

そしてサーニャとロゼッタはニーダの元へ歩み寄りニーダの手を握った。


「サーニャ、力を貸して」


「うん」


サーニャとロゼッタも手を繋ぎ二人は目を閉じた。

ロゼッタはぶつぶつと魔法を唱えるとサーニャはある単語が脳裏に思い浮かびロゼッタと一緒に言った。


「「ヴェルッチェ・カーヴォ」」


するとニーダから光が現れ耳からニーダの頭を洗脳していた虫が出てきて地面にぽたっと落ちると炎がつき苦しみながら燃え尽きた。


「…ん?ここは…」


ニーダは周りをキョロキョロと眺め状況が理解できていなかった。


「ニーダさん!元のニーダさんに戻ったんですね!」


「あ…ああ…?なんか…洗脳されてたみたいだな…」


「よかった…」


サーニャとロゼッタがニーダが元に戻った事に安堵しているとそれを見ていたグレッタが膝から崩れ落ちた。


「そんな…私の作品は…全てだめだった…てことなのか…?」


それを見たニーダは立ち上がりグレッタの前に立つとグレッタの顔を蹴飛ばした。


「ああ、そういうことだよ。それより、サーニャとロゼッタ。お前ら魔導書を取りに来たんだろ?そこの扉開ければある」 


「うん」


サーニャとロゼッタは立ち上がり扉を開けた。

そこにはサーニャ達が持っていなかった魔導書10冊が置いてあった。サーニャとロゼッタは魔導書をバックの中にしまう。


「あった!ニーダありがとう!…で…この人はどうするの?」


ロゼッタはグレッタを見て言った。


「こいつはただの人間だ。しかも指名手配付き。だからどっかの警官に突き出しとけばどうにかしてくれるさ」


ニーダはそう言いグレッタの髪を掴んだ。


「そうなんだ…なら、早くここから出よう?」


「そうだね」


サーニャ達はヴィランズコーストの拠点を出た。

その後、グレッタはニーダによって近くの村の警官に突き出され数多くの人を殺害、実験、動物虐待の罪で指名手配されていたため即逮捕された。

ニーダはその村で普通の人として生活する事を選びサーニャ達と別れた。

ヴィランズコーストのメンバーだったアンジュ、キラーが死亡しそれ以外は消息不明。これによってヴィランズコーストは事実上解散され、魔導書を巡るサーニャ達とヴィランズコーストの戦いは幕を閉じた。




それから一年後、ロゼッタの身体は日に日に弱っていき車椅子で生活しなければならない状態にまで衰弱した。

サーニャとロゼッタはロゼッタの家で二人で生活するようになりマーガレットはアレゲニー町に戻りミラの店を引き継ぎ、ミーナは生まれ育った町の復興に尽力し始めた。


「ロゼッターご飯出来たけど食べれる?」


「うん、食べれるー」


今日もいつも通りサーニャがロゼッタに夕食を準備した。ロゼッタは車椅子に乗りテーブルの前まで移動して夕食を食べる。


「ねぇ、ロゼッタ。魔導書ってまだ使ってないの?」


「あー…うん、使ってないよ?なんで?」


「あの後から一切ロゼッタ魔導書を読んだりしてないからどうしたのかなぁ…って思っただけ。魔導書使えばロゼッタだって元気になれるでしょ?」


「うん……ねぇ、サーニャ。ご飯食べ終わったら星見に行かない?」


「いいよ、行こう!」


サーニャとロゼッタは夕食を済ませて上着を着て外に出た。ロゼッタの家は森の中にあるため星がよく見える。特に今日は雲一つなくとてもいい眺めだった。


「綺麗だね…」


「うん…」


サーニャとロゼッタは星の美しさに感動していた。


「ねぇ、ロゼッタ。私ねロゼッタみたいな魔法使いになる!そして、色んな人を救うんだ!」


サーニャは自分の夢を語った。

ロゼッタはそれを聞いて嬉しそうに笑った。


「サーニャならなれるよ」




………ずっとこれが続けばいいのにな





「うん?ロゼッタ何か言った?」


「うんん…何でもない」


ロゼッタは小さな声で言った事を言っていないと誤魔化した。

その後、サーニャが眠りについてる間にロゼッタは車椅子を動かし書斎へ向かった。

ランプに灯りを灯し机の前で魔導書を開く。


「ゲホッ…ゲホッ…」


ロゼッタは咳をし口元を抑える。手のひらには血がいつもより多くついておりそれを見て苦笑いした。


「はは…もう…近いんだね…」


ロゼッタは最後の力を振り絞り願い事をした。


「サーニャの…夢が叶いますように…」


すると魔導書は光を放ち砂のように消えていき、ロゼッタはランプの灯りを消しあくびをしながら自分のベッドへ向かった。



Magical Reve 第一章 魔導書 完

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