第52話 拠点

サーニャ達は日記に浮かび上がった地図を頼りに移動し目印の近くにたどり着いた。

日は完全に落ち辺りは真っ暗だ。

サーニャ達はローズの指定した場所へ歩いて移動し真っ暗な森の中を移動しているとロゼッタはピタッと足を止める。


「静かに…今からサーニャ達に魔法をかけるからどこか木の影で隠れてて」


サーニャ達はこくりと頷く。ロゼッタはサーニャ達に気配消す魔法と透明になる魔法をかけた。そしてサーニャにはさらに攻撃、防御の魔法もかけた。

サーニャ達はすっと木の裏などに隠れロゼッタはローズが来るのを待つ。

するとパタパタと紫の光を放った黒い蝶がロゼッタの前に止まるとバサバサと蝶が大量に現れ空に飛び立つとそこにローズが立っていた。


「来たのね、ロゼッタ」


「うん。その前に質問するけどなんで場所を教えるなんて書いたの?」


ロゼッタはローズに紙切れを見せる。


「私はもうじき死ぬからよ」


「死ぬ?」


「ええ、私がヴィランズコーストに入った理由はあなたのため。魔導書がヴィランズコーストの手に渡っていたのを話で聞いて私はヴィランズコーストに入って盗み出そうとした。でも、それはバレてしまって私は寿命が縮む呪いをかけられたわ…そう長くない…」


「そんな…」


「だから、ロゼッタの仲間達に危害を加える気力は無いわ。出てきてもいいわよ」


ローズの一言によりサーニャ達は木陰から姿を現しロゼッタの後ろに立った。


「みんな、準備いいみたいね。ついてきて」


ローズはくるっと向きを変え森の中を歩いた。


「あなた達に聞きたいのだけれど、あなた達は魔導書何冊持ってる?」


ローズはサーニャ達に聞いた。


「二冊」


ロゼッタが答える。


「なら完全に揃うわね」


ローズはボソッと言った。

歩き進める広大な草原が広がる場所にたどり着いた。

ローズはぶつぶつと魔法を唱える。するとすぅーっと巨大な廃墟が現れボロボロになった石像なども現れた。


「普段は誰にも見られないように魔法で消してるの」


ローズはそう言いながら歩き進める。建物に近づくにつれサーニャは緊張して震えが止まらなくなる。

ローズが大きな扉を開けると鼻を覆いたくなるほどの埃と血生臭い悪臭が漂う。

サーニャ達全員が廃墟に入ると扉が勢いよく閉まり辺りは薄暗くなる。


「お帰りなさい、裏切り者さん」


ロビーに突然謎の声が聞こえだしサーニャ達は警戒する。するとローズは自分の体の異変に気づく。


「…ロゼッタ…私をおいて走って…」


「え?でも…」


「いいから!!」


ローズはロゼッタに怒鳴る。すると暗闇から犬の唸り声が聞こえた。


「ここは私がどうにかするからあなた達は先に行って!早く!」


サーニャとミーナ、マーガレットはロゼッタの手を掴み走り出し、廃墟の中を進んだ。


「さあ…来なさいよ…モーガン…」


ローズは魔法陣を出し構える。


「残念ーあんたの相手はモーガンじゃないよ?」


コツコツと暗闇からジャックが現れモーガンの隣に立った。


「…っ!」


ローズは後ろに気配を感じ後ろを振り返るも遅かった。




サーニャ達は広い廃墟の中を歩き進めていく。


「…っ…長えな…しかし…」


マーガレットは銃を構えながら先頭を歩く。

曲がり角を曲がり歩き進めるとミーナがピタッと足を止めた。その拍子に一番後ろにいたロゼッタがミーナにぶつかる。


「ミーナちゃん?どうしたの?」


「なんか右足に違和感を感じて…誰かに掴まれてるような…」


ミーナは違和感を感じた右足を見るが何もなかった。

すると右足を誰かにぐっと勢いよく引っ張られたかのようにミーナは倒れずるずると引きずられた。


「何これ!?やだ!助けてぇ!ロゼッタさんっ!いやあああああああっ…!」


ロゼッタとサーニャがミーナの両手に掴みかかろうとするが届かずミーナは近くの部屋へ連れて行かれドアが閉まった。

マーガレットは閉まったドアを蹴飛ばしたりするが開かない。


「くそっ!開けよごるぁ!」


マーガレットは銃で壊そうと撃ち、ロゼッタが魔法で開けようとするがドアはびくともせず傷一つ付かなかった。


「なんで…魔法も効かないってどうすれば…?」


ロゼッタは途方に暮れながら言った。

するとサーニャは微かに不気味な音が聞こえる事に気がついた。


「…っロゼッタ!マーガレット!静かにして!」


「何だよサーニャ!ミーナを助けるのが先だろ!」


「いいから静かにして!」


サーニャは大声で言うとマーガレットとロゼッタはピタッと動きを止めた。

するとどこからかビチャ…ビチャ…と水のような音と虫が動き回るような不気味な音が聞こえマーガレットとロゼッタは辺りを見渡した。


「何だこの音…」


「…分かんない」


すると床に亀裂が入りそこから大量の虫が現れサーニャ達の身体に登ってきた。

サーニャ達は虫を手ではらうがキリがなかった。


「ふふ…この子達…あなた達の事が気に入ったみたいね…」


突然虫がサーニャ達の身体から降りだし一箇所に集まると人の形を作り出すと姿を変え女性が現れた。


「なんだお前…」


マーガレットが女性に問いただした。


「「メアリ」よ。ずっとあなた達の事を監視してたんだけど…まあ分かるわけないか…くすっ」


メアリは笑った。


「えーっと…あなたがマーガレットね?そしてその隣にいる小さな魔法使いさんがサーニャ。あなた達には用ないわ。ロゼッタ、あなたに用があるの」


「私に?」


「ええ、でも…二人は邪魔だから消えてもらいましょう」


するとメアリは片手をサーニャとマーガレットに向けくすりと笑った。手から勢いよく無数の虫が現れサーニャとマーガレットの顔などを飛び回る。

ロゼッタはとっさにメアリに攻撃をするが当たった場所は虫がぐちゅぐちゅと集まり傷口が塞がった。

メアリはばっとロゼッタに飛びかかり首元に針を刺した。

ロゼッタはガクッと意識がなくなり倒れた。


「ふふ…あっという間だったわね…戻ってきなさい、子供達」


メアリは片手をくいっと動かすとサーニャとマーガレットを攻撃していた無数の虫はメアリの体の中へ戻っていった。


「てめぇ…ロゼッタに何をした!?」


マーガレットはメアリに怒鳴った。


「秘密。けど、知りたかったら地下室へ行ってみなさい。いい事を知れるから」


メアリはそう言い残し倒れたロゼッタを連れて姿を消した。


「っち…なんだよあいつ…サーニャ、怪我はないか?」


「うん…大丈夫…ミーナちゃんを助けないと」


「だな…」


サーニャとマーガレットはミーナが閉じ込められた部屋のドアの前に立ちドアを開けた。サーニャとマーガレットは部屋に入り見渡すがミーナの姿はなかった。


「どういう事だよ…」


「もしかして…連れ去られた…とか?」


すると廊下からコツ…と足音が聞こえドアの方を見るとそこには西洋人形を抱き抱え、人形と同じような服装をした少女が立っていた。

マーガレットは不審に思い銃を向けるが微動だにしない。


「ミーナはどこにやった」


「……」


「答えろぉ!」


少女は一切表情を変えず、マーガレットとサーニャを冷たい目で見ていた。


「あなた達を地下室に案内する。ママにそうしなさいって言われた」


「ママ…って…さっきのメアリとかいうやつか?」


マーガレットは少女に聞くが一切聞く耳を持たず少女はくるっと後ろを向き歩き出した。


「…サーニャ…どうする?あいつなんか気味悪いんだけど…」


「とりあえずついてってみよう…」


サーニャとマーガレットは少女の後ろをついて歩いた。

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