第51話 師匠と母親の遺品

マーガレットは頭を掻きはぁ…とため息をつき話し始めた。


「この機会だし話すか…私がこの旅に付き合った本当の理由は、ミラを探す為だったんだ。そいつは、私が家を抜け出してホームレスだった事…」




幼少期の頃の私は両親が離婚して、父親のもとへ預けられたんだけど父親がギャンブルで破産して自殺した。

その時の私は人間不信になっていて行き場がなくてホームレスになってた。金を盗むか飯を盗むしか生きる術を知らなかった。

そしてとうとう何も食えず体も動けずただ死を待っていた時、誰かに声をかけられた。


「おーい、大丈夫?」


それが「ミラ」だった。私はその時「こいつから金盗めば生きられっかな…」って思った。私の故郷「アレゲニー」ではホームレスは見捨てろっていうのが普通なんだけど、ミラは私の事をおんぶして自分の家に運んだ。

そして温かい飯を食わせてくれた。何ヶ月ぶりのまともな飯。その時はなんか泣いちゃったね。


その後はミラの家で生活するようになった。護身として銃の扱い方を教えてもらったり色々な事を教えてもらった。とても楽しかった。私が唯一信用出来る相手だった。だけど、そんなのもあの日を境に途絶えた。


「おーい!ミラ!…って?ミラ?」


私はその頃ミラとは別に住んでいて仕事場はミラの家の一階にあるミラが営む武器屋で働いていた。だけど武器屋に入ったら誰もいなかった。

人気もない。ミラなら出かける時置き手紙を置いていくがそれもない。何かおかしいと感じた。半日待ったが帰ってこないから私とヴィレンツェは心配になって町中を探した。だが三日探したが見つからなかった…



「だから私はお前たちの旅に付き合ったんだ…ミラが見つかると思って…」


マーガレットは話終えるとはぁ…っと溜息をついた。

サーニャは返す言葉が見つからなかった。


「くそ…絶対何かの間違いだ…ミラはそんなやつじゃねぇ…」


ロゼッタは日記を1ページめくった。そこには一枚の紙切れが挟まれていた。


「「ヴィランズコーストの拠点の場所を教える。その代わり一人で来て。 ローズ」…まさかこれって!」


ロゼッタは紙切れを手に取り裏を見た。裏には「yes no」と書かれていた。サーニャ、ミーナ、マーガレットは紙切れを一緒に見た。


「ねぇ、みんな。「yes」に丸をつけたらヴィランズコーストの場所を教えて貰えるみたいだけど…どうする?」


ロゼッタはサーニャ達に尋ねた。


「私は行く」


マーガレットは真っ先に答えた。


「たとえそれが罠だろうと行く。ミラを助けるために」


「サーニャとミーナちゃんは?」


ロゼッタはサーニャとミーナに尋ねた。


「うん、行く。ヴィランズコーストが魔導書を持っている可能性だってあるし、早く終わらせないと世界がどうなるか分からないもん」


「私も同じです」


サーニャとミーナはそう言った。

ロゼッタはこくりと頷き「yes」に丸をした。

すると紙切れは燃え上がって消えると日記に地図が浮かび上がった。


「ここか…ロゼッタ、いけるか?」


「うん、大丈夫。今からでもいいよ」


「分かった…でも、無理はするなよ」


ロゼッタはベッドから立ち上がりを出る支度をした。サーニャ達も準備をし町長に別れを告げた。

ロゼッタ達はマーガレットの車に乗り込み、サーニャは町を名残惜しく思いながら眺めていると一人の少女がサーニャを呼びながら走ってきた。


「サーニャお姉ちゃん!待って!これあげる!」


少女が持っていたのは髪飾りだった。


「これ、お母さんの髪飾りなんだ…お母さんは私と旅をしたいって言ってたんだけど…悪い人達のせいで死んじゃったから…」


少女は言葉をつまらせながら言った。ヴィランズコーストの事件により亡くなってしまった母親の隣で泣いていた少女だという事をサーニャは知っていた。

サーニャは髪飾りを受け取り、少女の髪につけた。


「ありがとうね」


サーニャは少女の頭を撫でた。少女は大泣きし、サーニャは少女を抱きしめた。


「うわああああ…嫌だ…サーニャ…行かないで…!」


「大丈夫、またいつかこの町に遊びに来るから」


「…本当?」


「うん…その時は手紙書く…はい!泣き止んで!君は笑ってる顔が似合うよ!」


サーニャは少女を抱きしめるのをやめ肩をぽんと叩いた。

少女はぐずぐずと鼻水をすすりニコッと笑った。


「よし!それじゃ元気でね!」


サーニャは少女にそう言いマーガレットの車に乗り込んだ。マーガレットは車を発進させサーニャはミラーから少女が笑顔で手を振っている姿を眺めた。


ラスペリア町にいた間、サーニャ達は町の為に雨を降らせ、井戸を掘り、道具を直してあげたりと色々な事をした。サーニャは町で唯一の子供であったあの少女の遊び相手にもなってあげていた。

だが少女が母親の遺体の隣で泣いている姿を見て胸が張り裂けそうな思いだった。

サーニャはそれを思い出し少し涙ぐんだ。

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