第50話 悪夢

大雨の降るある日


「ん…ん…?」


ロゼッタは雨音で目が覚めた。


(薄暗いし見た事ない天井…消毒液の臭いが微かにする…ここは...病院?)


(サーニャ…マーガレット…ミーナ…大丈夫かな…?)


ロゼッタはサーニャ達の事を不安に思いながら病室を見る。ベッドの隣の棚に置いてあった手鏡を手に取り顔を見て驚いた。


「…っ!私じゃない…!?」


鏡に写っていたのは白い髪の知らない女性だった。ロゼッタは不思議に思い顔を触る。感触がある。ロゼッタは不思議に思いながらも「早くサーニャ達に会わないと」と思い棚に手鏡を置き病室を出ようと立ち上がろうとした。


ガダン!


ロゼッタはベッドから立ち上がろうとするが脚に力が入らず転んでしまった。再び立ち上がる事が出来ず仕方なくずるずると脚を引きずりドアの近くの手すりに捕まり立ち上がろうと考えた。

ドアの近くの手すりに捕まり力を入れ立ち上がりドアを開けた。ドアを開けるのにも普段以上に力が必要だった。

病室を出て廊下に出ると薄暗く冷たい空気が漂っておりロゼッタは冷たい手すりをつたいながら必死に歩く。


(肌寒い…ここって本当に病院なの…?)


ロゼッタは少し歩いただけだがはぁはぁと息が上がっていた。

すると廊下の角から看護師が現れロゼッタは助けを求めようとした。


「すみませーん!」


看護師はロゼッタの声に気づきロゼッタを見るがその表情がまるで悪魔を見たかのような顔をし、誰かを呼びに走っていってしまった。


「え…?なんで…」


そして看護師は男性医師と他の看護師を連れて戻ってきた。だがその顔は患者を相手にするような顔ではなかった。ロゼッタは何かがおかしいと思い逃げようとするが病室に戻るまでの体力はなかった。


「〇〇さん!逃げないで!」


男性医師がロゼッタの腕を力強く握りロゼッタを逃がさないようにすると他の看護師達もロゼッタを止めに入った。


「やだああああ!やめてぇ!離して!お願い!」


ロゼッタは必死に声を上げ暴れるが変わらず男性医師はロゼッタの腕に注射器を刺し薬を注入した。ロゼッタはガクッと力が抜け暴れるのをやめると少しずつ強い眠気に襲われた。



ロゼッタは眠りから覚め体を起こした。


「いっつ…」


あの注射の影響からか気分が悪く酷い頭痛がしロゼッタは頭を抑える。


(何か手掛かりになりそうなものってあったりするかな…?)


ロゼッタはふと思い近くにある引き出しを開け何かないか探した。すると引き出しの中に一冊の日記と魔導書が入っていた。


「なんで…?どうしてこんなところに魔導書が…?」


ロゼッタは驚きを隠せなかった。魔導書を手に取りペラペラと見る。


「本物だ…これを持ち出せればいいんだけど…」


魔導書を閉じベッドに置くと棚にあった日記を手に取り開こうとしたが突然凄まじい頭痛に襲われロゼッタは気を失った。




「…はっ!」


「っ!?ロゼッタ!大丈夫!?」


ロゼッタは意識が戻り目を覚ますとサーニャが心配そうな顔で見ていた。ロゼッタは自分の頭を触るとびっしょりと汗をかいていた。


「おっ、ロゼッタ!目覚ましたか!」


その後マーガレットとミーナも合流するとロゼッタはベッドの中にあるものがある事に気がついた。取り出してみるとそれは夢の中で開こうと思った日記だった。


「これってロゼッタのか?」


「違う、夢の中で見つけたんだけど…なんでこんなところに…」


「とりあえず、持ち主の名前とか書いてあるかも知れないし開いてみるか。ミーナ、この日記魔力とか感じないだろ?」


「はい、大丈夫です」


サーニャとマーガレット、ミーナはロゼッタの近くに寄り日記を眺めた。ロゼッタが日記を開き中を見るとサーニャ達は驚きを隠せなかった。


「っ!?何これ!?」


日記の中にはサーニャ、ロゼッタ、マーガレット、ミーナの行動が全て細かく書かれていた。時刻、日程など全て一致し、まるでこの日記の持ち主に監視されているかのようで、ロゼッタは気持ち悪さを感じ始める。


「うわぁ…なんだよこれ…気持ちわりぃ…ストーカーみてぇだな…」


マーガレットは気持ち悪い物を見るかのように言った。

そしてペラペラとページをめくっていくとあるページに目が入った。


「ヴィランズコースト メンバー一覧?」


そこには顔写真の下に名前、性別、能力、種族、役割などが書かれていたがアンジュの顔写真にはばつ印がつけられ、ニーダのところは黒く塗り潰されていた。


「っ…!?ロゼッタ!!ちょっと貸せ!」


「うん…どうしたの?」


マーガレットは何かに気づきロゼッタから日記を勢いよく取った。マーガレットの表情は変わり信じたくないものを見たかのような顔をし震えていた。


「そんな…嘘だろ…」


マーガレットは日記をパサッと落とし近くの椅子に座った。サーニャは心配になり声をかける。


「マーガレット、どうしたの?」


「その…ミラって書いてるやつ…私が探していた師匠だ…」


「「「!?」」」


サーニャとミーナ、ロゼッタはそれを聞き驚いた。

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