第49話 手品師

「っち…」




マーガレットは舌打ちをした。


魔導書を渡せばこの町の被害は収まる、だが魔導書は渡せない。




「さあ、マーガレットさん…早く決めてください?」




ジャックがジリジリと距離を詰めてくる。




ボガーン!




「ギャインッ!」




犬のような鳴き声をあげ人を襲っていたモーガンが魔法で吹き飛ばされ家の壁にぶつかった。




「マーガレット!大丈夫!?」




そこにいたのはサーニャとロゼッタだった。


ミーナは住民達の避難誘導をしていた。




「ああ、大丈夫だ」




するとジャックはため息をつきポケットから赤い玉を出した。




「はーやれやれ…やはり渡す気はないと…仕方ないですね…」




ジャックは赤い玉をポロポロと地面に落とすとボンッと赤い煙が出て姿を消した。




「こうするしかないですね」




ロゼッタは背後からジャックの声が聞こえ後ろを振り返るとジャックが立っており攻撃をしようとしたがジャックの殴りかかるスピードの方が早くロゼッタの頭に当たった。


ジャックはその後ナイフを取り出しふらつくロゼッタに切りつけてきたりしてくるがロゼッタはバリアを張り何とか防ぐことが出来たが少しずつ体と頭のテンポがズレ始め回避する直前にバランスを崩し倒れそうになる。そしてジャックはロゼッタの隙を見つけ思いっきり回し蹴りをし攻撃を受けたロゼッタは地面に倒れた。




「はぁ…はぁ…」(なんなの…体が重い…)




ロゼッタは必死にふらつきながらも立ち上がろうとするが体が重く中々思うように動かせなかった。


それを見たジャックは不思議そうな顔をしていた。




「あれ?おかしいですね?さっきのはただの蹴りですし、私は魔・法・な・ん・て・使えないんですけどねぇ?」




「ゴハァ…」(嘘…何でこんな時に…)




ロゼッタは吐血をした。前にも起きた魔法の負荷の症状がまた現れた。


サーニャとマーガレットはまずいと思いロゼッタを守ろうと動くが、モーガンがマーガレットを睨みつけ今にも飛びつこうとしていた。ジャックがロゼッタの髪を鷲掴みにした。




「はぁ…はぁ…何する気…?」




「さあ?何しましょうかね?でも、もうじき死にそうですしこれぐらいでいいでしょう」




ジャックは鷲掴みにしたロゼッタの髪を離しロゼッタは地面に倒れる。


サーニャはロゼッタの元へ走り抱き寄せる。




「…っロゼッタ!ロゼッタ!しっかりして!ロゼッタァ!」




サーニャは必死に呼びかけるがロゼッタは反応がなく受け答えができなかった。ポタポタと涙が流れ始め涙がロゼッタの顔に落ちる。




(サーニャ…ごめん…私…もうだめなんだ…)




「あ…りが…と…サー…ニャ…」




ロゼッタはそういうとうっすら笑みを浮かべ、瞳をゆっくりと閉じた。




「ロゼッタ…嘘でしょ…?ロゼッタ…!ねぇ!ねぇってばぁ…!」




サーニャは呼びかけるがロゼッタは一切動かなかった。マーガレットは突然の事に理解が出来なかった。




「あのーもう終わりました?早く魔導書をくれませんか?」




ジャックはロゼッタの事なんかどうでもいいようにサーニャに言い放った。


するとサーニャはゆっくりと立ち上がりジャックの事を睨みつけた。




「…許さないっ!あんたの事絶対許さないっ!魔導書なんて渡さない!あんたなんかに絶対渡さないっ!」




「そうですか…っち…なら仕方ないですね…私ってね手品師なんで物を移動させたり出来るんですよ。ほら」




ジャックはポケットからマーガレットの銃を取り出した。マーガレットはそれを見て驚き自分のホルスターを確認した。やはり一丁無くなっていた。




「そして、増やすこともできます」




ジャックは胸ポケットから同じ銃を取り出しサーニャとマーガレットに向けた。




「じゃあ、始めますか」




ジャックはそう言うと向けた銃を発砲した。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る