第48話 魔法の特訓

深夜の雨降る日。とある町で保安官は巡回をしていた。すると路地からグチャ…という音が聞こえ保安官は警戒しながら路地に入る。保安官がライトを照らすと屈みながら何かをしている人物がいた。




「何をしている」




保安官は声をかけ人物の隣にある物を目を凝らして見た。それはバラバラになった死体と血だらけの魔女帽子だった。




「っ!動くな!!」




保安官は謎の人物に銃を向ける。だが謎の人物は立ち上がり持っていた死体の腕をポイっと捨て保安官の元へと近づく。




「動くなって言ってるんだ!」




「……」




保安官は大声で言うが謎の人物は一向に聞こうとしなかった。




(…っ…聞かなかったお前が悪いんだからな!)




保安官は仕方なく三発発砲した。だが銃弾は謎の人物の前で止まりカランカランと地面に落ちた。そして謎の人物は姿を消した。




(何だったんだ…今の…)




保安官は何が起こったのか理解が出来ずさっさと巡回を終わらせ戻ろうと歩き出した。だが体が動かず銃を持った右腕が何者かに力強く掴まれこめかみに銃を当てた。




バンバンバン…!と銃は保安官のこめかみめがけ発砲し全て貫通した。保安官は倒れるが右腕だけ宙を浮いたまま留まり、ズバッと右腕が肘から切れ保安官の死体はバシャッと地面に倒れた。


謎の人物は保安官の右腕を持った状態で姿を現し夜道を歩いた。




バリッ…!グシャ…!




謎の人物は口を大きく開け保安官の右腕にかぶりつき食べる。




「これじゃだめだ…」




謎の人物はそう言い残し保安官の右腕を近くにあったゴミ箱に投げ捨て姿を消した。










場所は変わり朝のラスペリア町


マーガレットはする事がない為新聞を読み始める。




「へぇ…また魔法使いと…今度は保安官もか…」




新聞に書いてある事はいつもと変わらず魔法使いか市民が何者かによって殺害されるというものだ。サーニャ達は昨晩話し合い今日からロゼッタとサーニャは魔法の特訓、ミーナは町人の悩みなどを解決する係になった。




「はい!それじゃ、まずは魔法攻撃の扱い方から!」




町の近くの広大な空き地でロゼッタの声が響き渡る。




「サーニャはいつのまにか魔法攻撃が出せるようになったみたいだけどコントロールが出来ていない!じゃあサーニャ、一回あの岩目掛けて打ってみて」




「わかった…」




サーニャは杖を岩に向け集中する。




バァーン!




魔法攻撃は出たものの岩とは違う所に飛び森の木に当たった。




「うーん…もっと集中して狙ってみな?あと力み過ぎ。そのせいで必要以上に火力が高くて魔力消耗しちゃってる」




「はぁ…はぁ…わかった…」




サーニャは再び集中した。




パンッ!




今度は小さめの魔法攻撃を出し岩に当てる事が出来た。




「よし!」




「いいじゃん!やってみて大体どんなふうにやればいいか分かった?」




「うん、何となくは…」




「じゃあ何個か的を出しておくからそれめがけて打ってみて。何枚か硬いの混ぜとくからその時は調整してね」




「わかった!」




ロゼッタは数十メートル先に的を五枚並べた。サーニャはそれめがけ何回も練習した。的は全て破壊すると自動で元に戻り何度も出来るようになっていた。何回かは的から外れたり、火力が足りず壊れなかったり、コントロール出来ずサーニャの後ろにいたロゼッタに当たりそうになる場面もあったが少しずつ上達しだした。


そして時間はあっという間に経ち夕方になっていた。




「はい!今日の特訓は終了!お疲れ!」




「はぁー!疲れたー!」




サーニャは疲れて地面に横になった。




「やっぱサーニャって覚えるの早いよね!」




「はぁ…そう…?」




「うん!じゃあ宿に戻ろっか!」




「うん」




サーニャとロゼッタは宿へ戻り眠りについた。




それから一週間が経ちサーニャはロゼッタが認めるレベルにまで成長し魔法をコントロール出来る様になっていた。


マーガレットは町を散策していると町の入口でマジシャンの格好をした奇妙な女性に出会うが何故か女性からは嫌な気配を感じた。




「お前、この町に何しにきた…」




「んー?ただの旅人ですよ。そんな怪しまないで下さいよ、マーガレットさん?」




マーガレットはホルスターから銃を取り出し女性に向ける。




「何で私の名前を知ってる…?」




「おっと、これは失礼…ついうっかり名前を言ってしまいましたね…なら私も自己紹介をしますか。私はジャックと申します。はい、これであなたと私は知り合いになりました。なのでそんな物騒な物しまってくださいよ」




ジャックは冷静に自己紹介をした。だがマーガレットはさらにジャックを警戒した。




「しまわねぇよ…いいから何しに来たか言えよ…」




「…じゃあ教えてあげましょう。あなた達が持ってる魔導書です。あっ、嘘ついてもだめですよ?あなた達が持っているのは知っていますから」




「…っ…渡さねぇって言ったら?」




するとジャックはため息をついた。




「…はぁ…そうですか…まあ、いいでしょう。そう上手くいくとは思っていませんでしたから…」




ジャックは指をパチンと鳴らした。




ガシャアアアン!




「きゃあああああああああああああ!」




突然近くの家から何かが割れる音と人の悲鳴が響き渡る。家から血だらけになった住人が飛び出し慌てながらマーガレットに助けを求める。




「お願いします…!助けて…きゃあああああ…!」




グジャ!バギ…!グシャ…!




助けを求めた住人は家から凄まじい速さで飛び出してきた人物に取り押さえられ首筋を噛まれながら叫び続けた。町中はそれを見てパニックになった。




「ってめぇ!!」




「おっとマーガレットさん、彼女は銃を撃っても効きませんよ?」




「うるせぇ!」




マーガレットは銃を向け住人を食べている人物に5発発砲した。彼女は撃たれて動きを止めるが全く効いている様子はなくマーガレットを見てニコッと笑う。




「だから言ったじゃないですか…全く…モーガン、この町にいる人達はご飯だからいっぱい食べなさい。ただし、あの方達は食べないようにね?」




「わかったぁ!いっぱい食う!」




ジャックはモーガンの事を見ながら話した。モーガンはニコッと無邪気に笑い、獲物を見つけた野良犬のように走り住人に飛びつき食事を始めた。




「さあ、マーガレットさんこれ以上被害を増やさない為にも魔導書を渡してもらえますかね?」




ジャックはニッコリと笑いながらマーガレットに手を伸ばした。


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