第47話 雨の降らない地域

…ここどこだろう…


あれ…?






ミーナは真っ暗な空間で目覚めゆっくりと起き上がる。




「何だろう…ここ…」




ミーナしかいない空間をひたひたと歩き進めるが真っ暗な空間が続く。




「サーニャさーん…マーガレットさーん…ロゼッタさーん…」




サーニャ達の名前を叫ぶが何も起こらない。


歩き進めて行くとポツンと立っている人物を見つけミーナは走り寄る。だがその姿を見てピタッと止まった。




「…私?」




そこに立っていたのは体が傷だらけで背中に蛾の羽が生え瞳の色が赤くなっている変わり果てたミーナだった。


変わり果てたミーナはミーナを見ると姿をスッと消した。それと同時に空間も明るくなりミーナは眩しいと思い目を覆った。








「う…うん…」




目を開くとそれは見覚えのある天井だった。




「あっ!ミーナちゃん!?大丈夫!?」




近くにいたサーニャが気付きミーナの元へ寄る。マーガレットとロゼッタもミーナの事を心配そうに眺める。




「はい…あれ?皆さんどうしたんですか?」




するとロゼッタはミーナの事を思いっきり抱きしめ涙を流した。




「うわああああああ!よかった!よかった…!」




サーニャとマーガレットはそれを見て安心した。


ロゼッタとでこの旅を続けるかどうかを話し合いをしていたがサーニャとロゼッタで口論になってしまい決まらなかったからだ。


なのでマーガレットが仕方なく提案したミーナが一週間の間に目を覚さなかったら旅をやめ、目を覚ましたら旅を続けると決めた。




その後ミーナの体が今まで通り動くようになり、サーニャ達はファゴリア町を出発した。


ロゼッタは地図を開き魔導書の手掛かりを探すが全く手掛かりがない。


マーガレットは何も考えずに車を走らせる。


二週間ほど移動し、休憩で色々な町を訪れるが一向に魔導書の反応がない。そしてマーガレットが情報収集のために読んでいる新聞の見出しには「魔法使い 何者かによって殺害される」や「町人姿を消す 原因不明 目撃者なし」という文章が日に日に増えている。サーニャ達は警戒しつつ西へと進んだ。


そこでたどり着いた町「ラスペリア」は一番影響を受けていた。




「魔法使い様!お願いです助けてください!」




町人達がロゼッタとミーナに詰め寄る。




「ちょっとまって!みんなどうしたの!?」




慌てているロゼッタとミーナを見てサーニャとマーガレットは町人達を制止させる。




「待て待て…ここは私が説明する…」




すると奥から老人が現れ町人はそれに気づくと町長様と口々に言いながら道を開けた。


そしてサーニャ達は町長の家に案内され町長から話を聞くことにした。




「みんなすごく慌ててましたけどどうかしたんですか?」




サーニャが質問すると町長はコクリとうなずいた。




「はい、この地域は非常に雨が降らない場所でして私達が生きていく為の水分や農業に使う雨を魔法使い様に降らしてもらってました。ですが…二週間ほど前に魔法使い様は何者かに殺されて遺体で見つかったのです…それから魔法使い様の出した雲は消え、この町は雨が降らなくなり、水は無くなり、農業は出来なくなってしまいました…」




「そうだったんですか…」




サーニャは話を聞き考える。ラスペリア町のある地域は気温が高く雨が降らない為砂漠化が進んでおり農業を続けるには水が必要不可欠。だがラスペリア町からオアシスまで車で二日かかり間に合わない。魔法使いの力がどうしても必要だ。




「分かりました。ロゼッタ、いける?」




サーニャはロゼッタを見る。




「いけるいける!任せて!」




するとロゼッタは外に出て魔法を唱える。


すると辺りは雲で薄暗くなり雨がザーッと降り出した。


町人は雨音を聞き家の外へ出て恵みの雨だ!と言う者、樽やバケツを出し雨水を貯める者など様々だ。




「ありがとうございます…魔法使い様…」




町長は手を合わせ拝みながら感謝をした。


そのおかげか数日町で泊めてもらえる事になった。


部屋は前魔法使いがいた部屋だったが四人で充分の広さだった。


ロゼッタとミーナは町人達に囲まれてしまい身動きが取れずサーニャとマーガレットは部屋で休む事にした。




「あいつら、絶対一時間ぐらいあのままだぞ」




「はは…」




マーガレットは部屋の窓からロゼッタとミーナの事を眺める。サーニャはそれを見て苦笑いした。




「それよりサーニャ。少し聞きたいんだけどいいか?」




「うん」




「この町にも魔法使いがいたみたいだけど殺されたって言ってたな」




「うん。二週間前にって町長が言ってたね」




「二週間…その頃から色んなところで魔法使いが殺されたりし始めてるから…」




ガタッ…




「「…!?」」




サーニャとマーガレットが話し合っている時突然近くにあった机から物音が聞こえマーガレットは銃を取り出す。




「何かいるのか…?」




「わかんない…」




サーニャは机に近寄り引き出しに手をかける。




「マーガレット…何か出てきたら真っ先に撃って」




「分かった…」




サーニャは机の引き出しを開けた。そこには一枚の封筒が置いてあった。


サーニャは封筒を取り出すとぺりぺりと勝手に封筒の封が開き中を覗くと手紙が一枚入っていた。スッと手紙を取り出し机の上に置く。




「なんだこれ…何も書いてねぇじゃん…」




マーガレットは手紙を見て言う。


するとじわっとインクで書かれた文字が浮き出始めサーニャは手紙を読み進める。






この手紙に気がついたという事は私はもう何者かに殺され、この町に新たな魔法使いが来たという事ですね。


私は、他の地域の魔法使いが殺害され始めている事を受け、色々な地域の魔法使いと情報交換をしなが犯人を特定しようとしました。


日が経つにつれ情報をくれた魔法使いも被害に遭いました。ですが、幸い一人の魔法使いが殺害される直前に手掛かりと会話の内容を残してくれました。




特徴は、少女。だけど両腕は別の人の腕が縫い付けられている。そして少女は一連の魔法使い殺人を一人でやった。


気をつけてください。彼女は突然現れ容赦なく魔法使いを殺します






「少女…って…」




サーニャとマーガレットは手紙を読み戦慄した。




「待て…それじゃあこの二週間の間に起きてる魔法使いのってその少女一人でって事か…?ははっ…無理だろ…」




マーガレットはベッドに座り日記を開く。マーガレットはあまりいい事ではないと分かっていながら日記に新聞に載っていた魔法使いの殺害された人数をメモしていた。二週間の間に魔法使いが殺害された人数は20人。一つの地域に魔法使いが五人いたとして、町から町へと移動するのに車を使い半日、丸一日とかなり時間がかかる。それも一つの地域に町が一つや二つではなく七つか八つある。そう考えるとかなり広い為一人で行うのは無理がある。




「…って事はその少女も能力があるって事…?」




「ああ…そうとしか考えられないな…」




サーニャとマーガレットはそう考える事しかできなかった。


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