第46話 ホームレスの少女
マーガレットの日記
1日目
この日記は、旅先のファゴリア町を気晴らしに探索して立ち寄った書店で何故か日記帳を貰ったからせっかくだしつけてみようと思った。
多分私の性格だと三日でめんどくさくなって書くのやめるだろうな。
あの事件から二日か三日経ちミーナの背中の傷はロゼッタの回復魔法で埋まり何とか一命は取り留めたが意識は戻っていない。
私達は、ミーナの意識が戻るまでファゴリア町で過ごす事にした。
ミーナの様子はサーニャと私、交代で見るようにしている。その方が疲れを溜めない為にもいいだろうとサーニャと話し合って決めた。
だが、あの事件後大聖堂は何事もなく元の姿に戻っており誰もあの事件を気にしていなかった。まるで何も無かったかのように。
そして、あの日以来ロゼッタの様子も変わってしまった。常にへらへらとしてたあの笑顔がない。私達のいる部屋とは別の部屋で篭りっきりだ。気分転換にと食事に誘っても「いらない」と言い何も食べていない。
やっぱりあの魔法使い「ローズ」の事で精神的ダメージを受けているのだろう。今はあのへらへらとした笑顔が少し恋しい…
マーガレットは日記をつけ終えファゴリア町を散策しに宿を出た。
いつものようにタバコを吸いながらただぶらぶらするだけだがそれももう飽きてきていた。
(なんもする事ねぇと暇だな…この町、道が入り組んでて地図見てもわかんねぇし…おっ、こんなとこに酒屋あったんだ)
マーガレットは路地にひっそりとある酒屋を見つけ店の中へ入った。雰囲気は小洒落てなく昔からある酒屋のようだ。
(入ったはいいけど昼間っからはなぁ…)
「おーい!そこの姉ちゃん!」
「おっ…なんだよ…って酒くっさ!お前かなり飲んだだろ!」
「へっ…朝から飲んでんだよ!そんな事よりブラックジャックやらねぇかー?」
マーガレットは突然べろべろに酔っぱらった酒臭い中年男に絡まれブラックジャックの誘いを受けた。
酒屋の奥ではブラックジャックが行われていた。
マーガレットはする事がない為やる事にした。
マーガレットの他に酔っ払い中年男が二人、その辺にいた客と対決する事になった。
「嬢ちゃんだからって手加減しねぇぞー」
「うっせー」
マーガレットと他のプレイヤーは50ペルベットした。
マーガレットの手札 「3 10」
客1「4 10」
客2 「5 8」
客3 「8 10」
マーガレットはもちろんヒットしカードを追加した。
マーガレットの手札 「3 10 8」
(よし…)
他の客はヒットしたが二人バスト、一人は合計18の為スタンドしディーラーは合計19となりマーガレットの勝ちとなった。
「よっしゃ!」
その後マーガレットは夜までやり続け50ペルが5万ペルになった。
「うっし、私はもうあがるわ」
「おい、嬢ちゃん」
マーガレットは席を立ち店を出ようとすると店のマスターに呼び止められた。
「ん?私、不正とかしてねぇぞ?ずっと見てたから分かるだろ?」
「いや、そういう事じゃねぇ。久々にあんな勝っていくの見たからせっかくだしサービスしてやるよ!」
マスターはそう言いカウンターにビール瓶を置いた。
「いや、いいよ…今日は飲みたい気分じゃねぇし。これは私の奢りな」
マーガレットはそう言いカウンターにビール一杯分のコインを置きビール瓶を手に取ると他の客のテーブルに置き店を出た。
ファゴリア町の夜は非常に寒い為マーガレットはさっさと宿へ帰ろうと歩いていると路地裏から争うような声が聞こえマーガレットはチラッと様子を伺う。
「やめてください!お願いします!返して!」
「はっ!こんなに金持ってたのか…クソアマが!」
それは少女が男に襲われてる光景だった。
マーガレットは無視しようと思ったが男を見て驚いた。その男は酒屋でブラックジャックを誘ってきた中年男だった。
マーガレット怒りが込み上がり男の元へ歩いた。
「へー…酒飲む金は女から奪った金なのか?あ?」
「何だ?うっせ…ってさっき酒屋にいた姉ちゃん!?」
「ああ、そうだよ。お前が帰った後も勝ちまくってねー5万ペル持ってんだわ。欲しいんなら奪いに来てみな?」
中年男はマーガレットの挑発に苛立ちマーガレットに殴りかかろうとした。だがマーガレットは男の拳を片手で交わすと腹を思いっきり殴り悶えてるところを顔めがけ回し蹴りをした。
男は倒れマーガレットは男が落とした少女の財布を拾い少女に渡した。
「大丈夫か?ってお前服ボロボロだな…寒くないの?」
「私…凄く貧乏で服買うお金無いんです…」
「家は?」
「無いです…先週追い出されました…」
「うーん…困ったな…」(ホームレスってやつか…)
ぐー…
少女は空腹で腹が鳴ってしまいマーガレットは仕方なくどこかのレストランに連れて行く事にした。
だが少女は衰弱しているのか歩いてもすぐ転んでしまう。
「はー…ほら…手繋げ」
「…ごめんなさい」
「いいから行くぞ」
マーガレットは少女に手を差し伸べ手を繋ぐよう促し少女と手を繋ぎながらレストランを探した。
(痩せてるな…こいつ何日食ってないんだ…?)
少し歩くとレストランを見つけマーガレットと少女は小さなレストランへと入った。
客は誰もおらず貸し切り状態だ。
マーガレットはコーヒーだけ注文し少女に好きな物を選ばせた。
料理を出されると少女は無我夢中で食べ進める。
マーガレットはタバコを吸いながら少女の事を眺めた。
(なんか…小さい頃の私を思い出すなぁ…)
少女は出された料理を食べ終えると満足気に笑った。
「お前、名前は?」
「タ…タニーシャです…」
「ふーん…」
マーガレットはタバコを灰皿に捨てコーヒーを一口飲む。
「他にご注文はありますか?」
店主がマーガレットのコーヒーカップにコーヒーを入れに来た。
「なあ、ここの店って店主一人でやってるのか?」
「はい、そうですが…」
「まあ、出来るんならの話だけど…この子を雇ってもらえないか?」
マーガレットの言葉に店主とタニーシャは驚いた。
「いや…出来なくはないですが…」
マーガレットは店主にタニーシャの事を説明した。
「そうなんですか…それは可哀想に…ならうちに一つ空き部屋ありますしそれで良ければ」
「タニーシャはどうなんだ?」
「はい!よろしくお願いします!」
タニーシャは大きい声で店主に一礼した。
マーガレットはそれを見て安心してニッコリと笑った。
「よし、じゃあ私は帰るかな。タニーシャ、これは私からのプレゼントだ」
マーガレットは会計を済ませ終えるとタニーシャにブラックジャックで得た5万ペルを渡した。
「え!?いいですよ…」
「いいから…それじゃ店主さん、タニーシャをよろしく頼むな」
「分かりました」
マーガレットは店を出てタバコを吸い出し雲一つない綺麗な星空を眺めながら宿へ向かった。
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