第40話 ファゴリア

常に雪が降り温泉と漁業が盛んな北の町「ファゴリア」。


サーニャ達は町外れの空き地に車を止め降りた。




「うぅ…さむ…」




サーニャは寒さでガクガクと震えだす。ロゼッタはミーナに魔法で厚着の服やコートを着せた。


マーガレットは寒さのあまり再び車の中に戻ってしまう。




「私…寒いの苦手なんだよ…くそぅ…」ガクガク




「アレゲニーは…工場とかの熱で暑かったもんね…ロゼッタ…まだ…?」




サーニャはロゼッタを見た。




「ごめんごめん、今やる。マーガレットも出てきてー」




ロゼッタはサーニャに厚着の服やコートを着せ終えると車のドアを開けマーガレットを外に出そうと引っ張る。




「さっむ!無理無理無理無理!車ん中じゃ出来ねぇのかよ!」




「いいからーはやくー」




「ふっざけんな…って引っ張るの強っ!服破ける!わかった!引っ張るのやめろ!」




数秒後




「よし、みんな準備完了だね」




マーガレットを無理矢理降ろし着替えさせ終えロゼッタは満足げな顔をした。ちなみに車に乗っていても着替えは出来ます。


そしてサーニャ達は町の中心部を目指し歩いた。




「ロゼッタ…後で覚えとけよ…」




マーガレットはタバコを吸いながらロゼッタを睨んだ。




「ごめんって…温泉行こう?寒いし…」




「そうだな…出来れば宿付きがいいな…」




数十分歩き町の中心部に着くと大きな温泉があり湯気が立ち込める。


そして近くの宿に入り部屋を取り終えサーニャ達は風呂場へ移動した。






「わあぁー!広ーい!」




サーニャは初めて見る大浴場に思わず声を上げた。時間帯もあってか人はおらずほぼ貸し切り状態だった。


サーニャ達は身体を洗い始める。




「そういえば気になってだんだけど…マーガレットの髪って綺麗だよね」




サーニャはマーガレットの長い髪を見て言った。




「そうか?あんま気にした事ないけどなぁ…」




マーガレットはシャンプーしていた自分の髪をサラサラと触る。




「触っていい?」




「いいけど」




サーニャはマーガレットの髪を触った。キシキシとした感じはなく綺麗だった。




「それと…」




サーニャはマーガレットの髪を触り終えるとマーガレットのある場所をジーッと見た。




「ん?……おい、どこ見てんだ」




「いや…おっきいなぁ…て…」




「何おっさんみてぇな事言ってんだよ…でかくてもいい事無いぞ…動きにくいし…」




「はぁ…マーガレットそんな事言うの…?」




サーニャは自分の胸を触りため息をついた。マーガレットは気がつきやばいと思った。




「い…いや!サーニャはまだでかくなるかも知んないし!大丈夫だって!そうだ!露天風呂行こう!な?」




「だね…」




サーニャとマーガレットは身体を洗い終え露天風呂へ向かった。 




ガラッ




ガラスの扉を開け外に出る。




「わあぁー!」




綺麗な景色と露天風呂がありサーニャは感動した。


するとサーニャは露天風呂に入ってる人を見て気がついた。




「あれ、エリスさん!?」




「あら、久しぶりね」




そこにはサリソウ町の時にお世話になったメイド「エリス」がいた。




「サーニャ、こいつ知り合いか?」




マーガレットは何のことかさっぱり分からずサーニャに質問をした。




「あ、マーガレットは知らないよね。この人は…」




「サーニャの知り合いよ。寒いからさっさと入りなさい。風邪ひくわよ」




「あっ…はい」




サーニャとマーガレットは露天風呂に浸かった。




「「あったかーい…」」




二人は思わず声が溢れる。




「エリスさんは何しにここに?」




サーニャは気になってた事をエリスに聞いた。




「休暇よ休暇。姫様に「明日から一週間休みなさい。その間は新人さんに頑張ってもらうわ」って言われてね。まあ、久しぶりの休みだし嬉しいんだけど少し不安ね…」




「不安?」




「だって…新人の子凄くドジだから…」




「あー…はは…」




「けど、良い経験になるかも知れないしね…」




そう言うとエリスは少し笑顔になった。




ガラッ




「あー!エリスだー!何でいるの!?」




ロゼッタとミーナがガラスの扉を開け外に出てきた。ロゼッタはエリスに気がつき目をキラキラさせながら近寄る。




「ちっ…!今上がるところよ…」




「えー!いーじゃーん!一緒に入ろうよー!




エリスは露天風呂から上がりガラスの扉の前に立つがロゼッタがエリスの腕を掴み離そうとしなかった。




「…サーニャ、私らも上がろう」




マーガレットはサーニャに小声で言った。




「え?でも…」




「いいから…ロゼッタとミーナはゆっくり浸かっててくれ」




マーガレットはサーニャの腕を引っ張るようにして露天風呂を出た。


そして脱衣所で身体を拭き着替える。




「あなたなら分かってくれるって思ってたわ」




「久しぶりだよ。アイコンタクトなんてしてくるやつ」




エリスとマーガレットの会話を何気なく聞いていたサーニャは理解できなかった。




「少し聞きたい事があるから部屋に来て」




エリスはそう言うと濡れた髪を魔法でサッと乾かし脱衣所を出た。


マーガレットはそれを見てすげーっと思った。




「あれ…便利だな…」




「だよね…」






サーニャとマーガレットはエリスの泊まる部屋の前に立ちドアをノックする。




ガチャ




「待ってたわ… マーガレットさん、ポケットに入ってる紙を借りていいかしら?」




「ああ…」




マーガレットはニーダからの手紙をエリス渡す。




「ありがとう。あと、マーガレットさんはドアの前でロゼッタとかが来たらドアをノックしてほしいの」




「ああ、わかった」




マーガレットは理由が分からないがサーニャの知り合いという事もあり嫌とは言えなかった。






サーニャは部屋に入るとテーブルの近くの椅子に座る。


エリスは紅茶を入れたティーカップをサーニャに渡す。


サーニャは近くのテーブルに置いた。




「ありがとう…聞きたい事はロゼッタの隣にいた子の事なんだけど…」




「ミーナちゃんの事ですか?」




「そう、その子の過去とかって聞いてたりする?」




「はい…少しだけですけど…」




サーニャはエリスにミーナの過去を知ってる範囲で話した。


話を聞いたエリスは深く考えはじめる。




「…うーん…」




「どうしたんですか?」




「話を聞いて気になったんだけど…何でその子だけ生き残れたのか分からないわ…」




「え?」


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る