第39話 私の趣味

「んー!んー!」




私は誰かに担がれ運ばれている。


暴れても一切話を聞いてくれない。口を布で塞がれているから話せないが。




カシャカシャ




ギイィ…




「グレッタ姉さーん、連れてきたよー」




聞き覚えのある声が聞こえた。




「おおー!ありがとうね!そこの椅子に座らせといて!あっ逃げないように足とか縛っといて!」




「りょーかい」




ドスッ




椅子に座らせられた後足首と手首を縛られた。


凄くきつく縛られたからか痛い。




カシャッ…ジジー…




「…よーし、外していいよー」




口と目を塞いでた布が外された。




「やっぱりお前らか…ジャックとグレッタっ!」




「そーだよー」




「それじゃ、あたしは戻るわー」




「あっジャックありがとうねー」




ジャックは部屋を出て行った。




「お前…何の目的だよ…」




「目的ぃー?そりゃあひとつしかないさ。でももう一人来てからねー…っち遅いな…」




ゴンゴンゴンゴン!




「グレッター!開けてくれー!開け方忘れたー!」




「あのバカゾンビは…気が向いたら知能を入れてやるか…待ってー今開けるー」




カシャカシャ




ギイィ…




「ありがとう!グレッタ!連れてきたよ!」




「っ!アンジュ!」




モーガンの後ろには泥だらけのアンジュが引きずられていた。




バシッ




グレッタはモーガンの顔を思いっきり叩いた。


モーガンは泣きそうな顔をしていた。




「こらー素材を引きずっちゃダメって前にも言ったじゃーん…しかも首が切れてるのに髪を引っ張るなんて…」




「ごめんな…ぐずっ…さい…グレッタを喜ばせたかったけど…ひっぐ…また怒らせちゃった…うわぁーん…」




モーガンは大泣きした。


グレッタはモーガンに抱きつき頭を撫でた。




「よーしよし…そうかそうかーごめんねーでも次からは引きずっちゃだめだよーわかったー?」




「うん…分かった…」




「それじゃあ、それをそっちに置いてくれるかな?」




「うん!分かった!」




モーガンは満面の笑みでアンジュの死体を担ぎニーダの隣に置いた。




「よくできましたーさあ、ジャックのとこに戻っていいよー」




「わかった!」




モーガンは研究室を出て行った。




バンッ!




ガンッ!




グレッタはモーガンが開けっ放しにした扉を勢いよく閉め殴った。




「ったくあの能無しゾンビ…早い段階で処分しとけば…でもあいつは今まで作った中で戦闘能力は一番高いしあんないい素材のガキを探すのに苦労したから処分するにはもったいないけどやっぱ知能を入れとけば…」




グレッタはぶつぶつと独り言を言いながら研究室の中をぐるぐる歩き回る。


ニーダはグレッタを睨み付ける事しか出来なかった。




「…ああごめんごめん!忘れてた!」




「一体何の目的で私らをこんなところに連れてきたんだよ!」




「んーただの私の趣味だよ…裏切り者さん達」




「達って…アンジュは関係ないだろ!」




「あー…はいはいわかったわかった…」




グレッタはニーダの前に立ちニーダの顔を思いっきり叩く。


ニーダは睨み付けながら黙り込む。




「言いたい事はそれだけ?そうかーならもういいねー」




グレッタはそう言うと近くの棚にある小箱から注射器を取り出した。注射器の針をニーダの首にピトッと当てる。




「いつもならそのままやるんだけどあんたは綺麗なままやりたいからこうするね」




プスッ…




グレッタはニーダの首に注射器を刺した。


ニーダの視界は少しずつぼやけ始め意識が遠くなっていった。










「…ん…ここ…どこ…だ…」




ニーダは目を覚ましゆっくりと起き上がる。




「いった……」




いつのまにか作業台の上で寝かせられていたみたいだ。


さっき打たれた注射のせいか体が思うように動かない。


両腕に違和感と痛みを感じ右腕を見てみると縫い目があった。


縫い目から先の色が微かに違う。


そして右手中指にアンジュがつけていた指輪があった。


左腕も確認すると右腕と同じようになっていた。




「どうなってんだ…?これ…?」




ニーダは理解ができなかった。




「あーあまり動かないで」




隣の作業台で作業をしてたグレッタが気づき声をかけてくる。




「グレッタ…これは…?」




「んー?だから言ったじゃん、私の趣味だって。あとこれで最後だから我慢してねー」




グレッタはそう言い胸ポケットからコルク栓された試験管を取り出す。中にはムカデがガサガサ暴れていた。




「んーリラックスしてねー」




ポンとコルク栓を抜き手のひらにムカデを乗せた。


そしてムカデをニーダの耳元まで近づける。


逃げようにも体が思うように動かないせいで抵抗出来ない。


ムカデはスルッとニーダの耳の中に入り込む。



「いやだ…いやだぁ…」



ガサガサと耳の中から聞こえニーダは恐怖でムカデが入ってきた左耳を引っ掻いたり穴に指を入れたりするが出てこない。




…バキッ




ガサガサという音が聞こえなくなると突然頭の中から何かが割れたような音が聞こえた。




…バキッ…パキバキパキバキバキッ!




「あああああああああああああああああ!いたい!いたいいいいいいいいいいい!やめてええええええええええええええ!やだああああああああああああ!グレッタああああああああああ助けてええええええええええ!」




突然頭に凄まじい痛みを感じニーダは頭を抑えながら作業台の上で悶え研究室中に苦痛な叫び声が響き渡る。


ドサッと作業台から落ち頭の痛みは少し治りニーダは少ない力でグレッタの足を掴み助けを求める。




「お願い…ひぐ…もう嫌だ…嫌なの…助けて…頭の中が割れるように痛いの…」




ニーダは涙を流しグレッタに何度も願うがグレッタは笑顔で見ているだけだった。




「やーだ」




グレッタはそう言うとニーダから距離を置いた。




…バキッパキバキパキ!




「ああああああああああああああああああああああああああああああいやだあああああああああああああああああ!もうやだ!やだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだ!もういやなのおおおおお!ああああああああああ!」




再び凄まじい痛みが現れニーダは叫び声を上げ悶え苦しむ。


それが数分間続きニーダの徐々に意識が無くなり始める。




「……………」




そして数分後ニーダは声が出なくなり呼吸停止、口からよだれが垂れ、放心状態になっていた。




「もしかして…死んじゃった?」




グレッタが心配そうにニーダの事を揺する。


するとニーダの指がピクッと動き何かを探すかのように手を動かす。そしてゆっくりと起き上がろうとする


ニーダを見てグレッタはニッコリと笑った。




「よし、完成だね」

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