第38話 北へ移動

その後博士とアンジュの遺体を穴に埋め終えサーニャ達は助手に別れを告げる時が来た。


「ごめんね…私達が来たせいでこんなことになっちゃって…」


ロゼッタは助手に謝る。


「そんなことないですよ、私が持っていても意味ないですし…」


助手は悲しげに言った。


「それじゃ…助手さんも元気でね…」


「はい、ロゼッタさん達も元気で…」


サーニャ達は車に乗り込みニーダを助手席に座らせた。

マーガレットは車を走らせ北を目指した。

そして一時間ほど走っていると辺りは暗くなりサーニャとロゼッタ、ミーナは疲れて寝ていた。


「…お前は寝ないのか?」


マーガレットはニーダに話しかける。


「眠くない…」


「…そう」


それから小一時間無言が続いた。

マーガレットは路肩に車を停め車を降りる。

そして車に寄りかかりタバコを吸い始める。


「隣いていいか?」


ニーダは車から降りマーガレットに言う。


「ん?いいけどタバコの臭いつくぞ」


「別に気にしない」


「そう…」


ニーダはマーガレットの隣に立った。


「…なんで私を殺さない?」


「何でって…それじゃあ聞くけど今すぐに私を殺したいか?」


「いや…別に…そういう気持ちはない…」


「だからだ」


「…なんか…お前ともう少し早い段階で会いたかった…」


「そうか」


マーガレットは突然ぺたんと崩れ落ちるように地面に座り右腕で顔を隠す。


「おい、大丈夫か?」


ニーダは不安になり思わず声をかける。


「…ああ…疲れた…少しこうしてれば…大丈夫だと思う…」


半日運転とニーダとの戦闘によりマーガレットの疲れはピークに達していた。

どんどん意識が遠くなりあくびが出る。



「……ん…さっむ…あっ…やっべ…寝ちまった…」


マーガレットは寒さで目を覚ました。

懐中時計を見ると23時を指しており三時間ほど寝ていたようだ。


「…あれ?ニーダ?」


辺りを見渡すがニーダの姿は無かった。

車の中を見ると助手席に一枚の紙切れが置いてあった。

マーガレットは運転席に座り紙切れを手に取ると書いてある文章を読んだ。


「…っち…あの馬鹿…」


その内容はマーガレットに別れを告げるものだった。

マーガレットは紙切れをくしゃっとポケットに入れる。


「ふざけやがって…」


小声でそう言うと車のエンジンを掛け北へ車を走らせた。


それから五時間後

サーニャが目を覚ますと助手席に座っていたニーダがいない事に気がついた。


「おはよぉ…あれ?ニーダは?」


「…一人で旅するって行って夜中に降りてったよ」


「そっか…」


サーニャがそう言うとマーガレットは路肩に車を止めた。


「こっから先また山道だから助手席に座っとけ」


「わかった」


サーニャは助手席に移動した。そしてマーガレットは再び車を走らせた。


それからまた二時間後

ロゼッタとミーナが目を覚ました。


「おはよぉ…真っ暗だね…まだ夜?」


「トンネルの中だしな。もう少しで抜けるさ」


トンネルを抜けると雪が降り辺り一面雪景色だった。

そして少し離れたところに街並みが見える。


「あの街が北部で一番大きな街、「ファゴリア」だ」





場所は変わりとある病院内

病室のベッドに座り青空を眺めている女性がいた。

コンコンとノックがなり病室のドアが開いた。

そこには女性がいた。


「あら、またあなたね」


「調子はどう?」


「何も変わってないわ…それで今日は何の用事で?」


女性は用件を話した。すると用件を聞いた女性はクスッと笑う。


「そう…なら今まで通りでいいわ。あなたも無理しないでね」


「わかった」


女性はそう言い病室を出た。


ベッドに座る女性はそう言い渡されたモノクロ写真を置いた。

それは暗い部屋に目と口が布で塞がれ椅子に座っている少女で下に赤い文字で「Experiment target 059 」と殴り書きされていた。

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