第36話 ニーダの過去
(暗い…真っ暗だ…それに寒い…)
ニーダは真っ暗な空間に一人で立っていた。
辺りを見渡しても何もない。
(そっか…私、死んだんだった…)
ザスッ
ニーダは足音の聞こえた後ろを見る。そこには一人の少女が立っていた。
(これ…小さい頃の私…?なんでこんなところに…)
少女はくるっと振り返り暗闇へ走り出す。
「あっ、待って!」
ニーダは幼き頃の自分を追いかけるが追いつかない。
なんとか追いつこうと走っているといきなり光が現れニーダは眩しさのあまり目を覆う。
そして光は消えニーダは覆っていた腕を避けるとそこには見慣れた街並みが広がっていた。
「ここ…私の故郷の…そして…私の家の前…」
ニーダは何が起きているか分からなかった。
そして家の前には幼き頃の自分が立っていて家の中へ入ろうとしていた。
「…っ!待って!入っちゃだめ!」
ニーダはそれを見てある事を思い出し大声で叫ぶが幼き頃の自分には一切届かなかった。
うわぁあああん…あああああああん…
幼き頃のニーダはあるものを見て大泣きした。
それは何者かによって首をロープで締めらつけられ窒息死した母親の遺体と部屋の奥で血だらけで倒れている父親の遺体だった。
ニーダも幼き頃の自分を見て涙を流した。
涙を拭うと場面は急に変わり薄暗い古びた洋館の廊下にいた。
「ここって…あの孤児院…」
そこはニーダが両親を殺された後連れてこられた孤児院だった。
ガダンッ!
ニーダは物音が聞こえた近くの部屋を見る。
そこには男に腹部を蹴られている幼き頃の自分がいた。
「ふざけんじゃねぇ!てめぇみたいなはむかってくる奴見てるといらつくんだよ!」
「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい…」
幼き頃のニーダは髪を掴まれ投げ飛ばされた。
ニーダはそれがトラウマになっており逃げ出そうと涙を浮かべながらゆっくりと後退りする。
すると右手に重みを感じた。
「これ…」
その手にはボーガンが握られていた。
(そうだ…このままだと死んじゃう…私自身が止めなきゃ…この地獄から解放してあげなきゃ…)
ニーダはボーガンを男の頭に向け矢を放つ。
矢は男の頭に命中し男は倒れた。
(よし…よかった…)
「…あなた…誰…?」
ニーダは幼き頃の自分と目が合い声をかけられてしまった。
顔はひどく腫れ上がり腕や脚には無数のアザができていた。
「…っ!」
ニーダは恐怖で体が震えボーガンを捨て走り去る。
「待って…!」
幼き頃のニーダは痛みに耐えながら立ち上がりニーダを追いかけようと部屋を出るが辺りを見渡してもニーダはいなかった。
「…あれ…?さっきの人…」
「おいお前!何してんだ!」
偶然通りかかった男がニーダを見て叫びながらこっちに向かってくる。
ニーダはまた殴られると思い床に落ちていたボーガンを拾い男に向かって矢を放つ。
矢は男の脚に刺さり男は倒れる。
「…てめぇ…くそガキがああああああ!」
男は脚に刺さった矢を抜き再びニーダに走ってくる。
ニーダはもうだめだと思い目を閉じる。
「ねぇ、おじさん。少し静かにしてくれます?」
バン
グシャ
ビシャッ
「…もう目を開けていいよ?」
ニーダは声に従いゆっくりと目を開ける。
そこには自分と同じぐらいの歳で血だらけになっている少女、その後ろには脚と頭が無くなり血だらけで倒れている男の死体があった。
「あなた、酷い怪我ね…この男にやられたの?」
「うん…」
「そう…あなたいい腕前ね、名前は?」
「ニーダ…」
「ニーダ…良い名前じゃない。私はアンジュ、この孤児院から抜け出そうと考えてるのだけどあなたはどう?ついてくる?」
「…うん!」
「…ん…アンジュ…」
「おう、ようやく目が覚めたか」
「なんだよ…いっつ!」
ニーダは夢から覚めるとマーガレットに声をかけられる。
それに驚きニーダはボーガンを取ろうとするもボーガンはなかった。
「動かないで」
無理に動こうとするニーダをロゼッタが制止する。
「あなたに聞きたい事あるけど…いい?」
ロゼッタはニーダに質問をした。
「っち…なんだよ…」
ニーダは舌打ちをした。
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