第32話 隕石

ロゼッタが倒れてから二日後の朝

ロゼッタは普段どおりの元気な姿に戻り退院した。

サーニャ達は村を出て魔導書の反応があったさらに北を目指し移動を開始した。


山を超えた後の道はところどころガタガタで長く乗っていると酔うほどだ。


「はぁー…」


サーニャは重い溜息をつく。


「ごめんマーガレット…止めて…」


「おっおう…ちょっと待て」


サーニャはマーガレットにそういうとマーガレットはすぐに車を止めた。

サーニャは慌てて車を降り近くの更地で深呼吸をする。

ロゼッタは心配になり近くに駆け寄る。


「サーニャ大丈夫?ゆっくり深呼吸して」


「うん…だいじょっ…ぶっ…」


サーニャの断末魔を聞きマーガレットは思わずサーニャから目をそらす。

ロゼッタはサーニャの背中を擦る。


「…っておいミーナ、あれなんだ?」


「あれって空のですか?」


マーガレットとミーナは空を見る。

空には光を出しながら落ちているものがあった。


「隕石…ですかね…?」


「まじ?ってなんかでかくね?」


「はい…しかも落ちそうな…」


隕石は森の中へ落ちていき数秒経つととてつもない轟音と衝撃波が来た。


「うわああああああああああああぁっ!」


マーガレットとミーナは頭を伏せ身を守る。サーニャはロゼッタが張ってくれた結界のおかげで免れた。

辺りに生えていた草は倒れて車は飛んできた小石などで傷だらけになった。

パラパラと砂の落ちる音が聞こえる。


「うわぁ…何だったんだ…ミーナ大丈夫か?」


「はい…っサーニャさん達は!?」


「大丈夫だよー…」


「ありがとうロゼッタ…でも隕石って…」


サーニャとロゼッタは車に乗り込む。

四人は呆然とするしかなかった。

ロゼッタはふと何かを思い出し地図を広げる。


「ねぇ、みんな…魔導書の位置隕石が落ちた方向なんだけど…」


「…行くしかねぇな…サーニャとミーナは?」


「うん…行こう…」


「はい」


「よし、でもさっきので車ダメージかなりきてると思うから動かなくなったら歩きだからな」


マーガレットはそう言うとアクセルを踏み込む。

車は問題なく動き隕石の落ちた場所へ向かった。


運転して数十分後隕石の落ちた場所へたどり着いた。

地面は大きく抉れており隕石が埋まっている。


「うわぁ…すげぇな…」


「これが…隕石…」


サーニャとマーガレットは穴を眺める。ミーナは目を輝かせロゼッタも少し興味ありげに見る。


「うほおおおおおお!ここでしたか!」


「博士待ってください…!」


「遅れを取ってはなりませんぞ助手!早くついてくるのです!」


後ろから声が聞こえ振り返ると白衣姿の男性と重たそうな鞄を持った女性が走ってきた。

男性はマーガレットとサーニャにぶつかっても謝りもせず真っ先に隕石に向かう。


「…っいってぇ…おいじじい!」


「ごめんなさい!博士はいつもああなので…本当にごめんなさい!」


マーガレットは博士に文句を言おうとしたが助手に深々と頭を下げられ申し訳なくなり言えなくなった。


「何をしている助手!早く来るんだ!」


「はっ…はい!」


助手は博士のもとへ再び走り出す。


「なんかやばい博士だね…」


「ああ…助手も大変だな…あんなじじいの相手して…」


サーニャとマーガレットはひそひそと話した。

博士はやることが済んだのかマーガレット達のところへ歩いた。


「お姉さん方もこれを見に来たのかね?」


「そりゃあそうだろ…なんでおっさんは隕石なんて削って持ち出してんだよ」


「隕石なんてって…これは科学的にすごいことなんですぞ!…で…であって…」


マーガレットの一言に火がついたのか博士は語り続けた。マーガレットはめんどくさくなりタバコを吸い始める。


「すみません…博士は一度こうなると止まらないんです…」


「まあ…仕方ないんじゃないんですか…うちにも似たようなのいますし…」


助手がサーニャに話しかける。サーニャはどこにでもいるんだなと思った。


「あっそういえばあなた達って旅人ですか?」


「そうです。私達魔導書探してるんですけど分かりますかね?」


サーニャは助手に地図を見せる。印は地図の端にあり方角しかわからない状態だった。


「うーん…あっ!そういえば研究所に変わった本が突然出てきたんですけどもしかしてそれだったりして…」


「本当ですか!?もしよかったらでいいんですけど見せてもらうことって出来ます?」


「大丈夫ですよ!博士ー!研究所にある変わった本を見たいそうです!」


「…で…って変わった本?別にいいがなんでその本があるって君たち知っているんだ?」


博士は疑問に思い助手に聞いた。助手は博士に事情を話した。


「はーなるほどーそれなら今すぐ研究所に戻ろう!


そしてサーニャ達は博士と助手の案内のもと研究所へ向かった。

ロゼッタは地図を確認しながら歩いていると印が少しずつ近づいており研究所と思われる建物の上に印が重なった。

博士が研究所の扉を開け中に入る。サーニャ達も続けて中に入る。


「うわぁ…なんだこれ…」


中は狭く、棚やテーブルに色んな石や木などが置かれており価値のわからない人からしたらただのガラクタにしか見えない。


「なあ、ミーナ。お前ってこの石の凄さ分かるのか?」


マーガレットは棚に置いてあった石を手に取りポンポンとお手玉のように投げる。


「宝石なら分かるんですけど…ってマーガレットさん痛くないんですか?その石結構ゴツゴツしてますけど…」


マーガレットはゴツゴツとした石を右手、左手へと繰り返し投げた。


「ん?痛くない。気のせいかわかんねぇけど少し軽い気がすんだよなぁ…この石」


「こらこら!その石で遊んではいけませんぞ!この石はとても貴重な…」


博士はマーガレットから石を取り上げ石の説明を始めた。マーガレットは「はいはい…」と言い流した。


「サーニャさん達、これですかね?」


助手が隣の部屋から本を二冊持ってきた。ロゼッタは本を受け取る。


「…あっ!すみませんお客様が来たのに私お茶出すの忘れてました!今準備してきます!」


助手はそう言うと小走りで隣の部屋へ向かった。

ロゼッタは渡された本を見る。表紙の絵柄はロゼッタの持っている魔導書と同じだ。


「もしかして…」


ロゼッタは魔導書を開き中を確認する。ペラペラとめくっていくごとにロゼッタの表情は笑顔になっていく。


「どっちも本物だ…」


ロゼッタは声を震わせながら言った。


「本当…?」


「うん…」


サーニャは嬉しくなりガッツポーズをする。

マーガレットとミーナはハイタッチをする。ロゼッタはニコニコしながら二冊の魔導書をバッグの中にしまう。


「ほう!その本が魔導書でしたか!いやぁ良かったですなぁ…必死に探していたものを見つけたときの嬉しさ…よく分かりますぞ…」


博士はサーニャ達の喜んでいる姿を見てしみじみとしていた。


コンコン


外から誰かがドアをノックする音が聞こえた。


「ん?誰じゃろ…こんな場所に客人なんて…」


博士はドアを開ける。そこにはニコニコと笑顔な女性とボウガンを構えた女性が立っており矢を博士に向けて発射した。

ヒュンと矢は高速で博士の頭に刺さり貫通した。博士はドサッと倒れ、場の空気が一気に凍りつく。

コツコツと二人は研究所に入りボウガンを持った女性は博士の頭を踏みつけ刺さった矢を抜く。


「ふーん…ガラクタばっかねぇ…」


もう一人は研究所の中をつまんなさそうに眺めていた。


「…ひっ!」


ミーナは二人を見て思わず近くにいたマーガレットの裏に隠れる。

女性はミーナに気づくとニヤリと笑った。


「へぇ、生きてたんだ…」

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