第28話 マーガレットの宝物

サーニャ達はヴィレンツェの言っていた雑貨屋の裏にある倉庫にたどり着く。




「ここか…」




マーガレットはそう言うと倉庫のシャッターを開ける。




「ヴィレンツェの言ってた宝物って何かわかるの?」




ロゼッタがマーガレットに質問した。




「分かるよ、だってそれは私のだしな」




「え?」




サーニャはマーガレットの言った事がよくわからなかった。だかマーガレットはお構いなしに倉庫に入り電気を点ける。


そこには布に覆われた物があった。


サーニャ達はよくわからないがマーガレットはどこか嬉しそうだった。


バッと布を取るとそこには一台の車があった。




「おー…マーガレット、こんなの持ってたんだー」




「おう、でも入手ルートは秘密な」




ロゼッタが聞くとマーガレットはそう言った。それを聞きサーニャとミーナは小声で話した。




(ミーナ…あれって盗んだのかな…)




(多分そうだと思います…隠しておくぐらいですから…)




マーガレットは車に乗り込みエンジンを掛ける。


だがキュルキュルというだけで掛かる気配がない。




「…っあれ?こいよー…」




何度試しても変わらなかった。


マーガレットは車から降りボンネットを開けエンジンを見る。




「うーん…何ヶ月も掛けてなかったから落ちたかな…ロゼッタ、少し協力してくれ」




「いいよー、で何すればいいの?」




「仮でいいからエンジン動くよう出来るか?」




「うーん…出来なくはないと思うけど…それでいいの?車の事とか全然わかんないし…」




「いいよ、とりあえず掛かればいいから」




「う、うん…わかった…やってみる…」




マーガレットは再び車に乗り込む。ロゼッタは不安げに車に動くよう唱える。サーニャとミーナは見ているしかなかった。


マーガレットはアクセルを踏みながらエンジンを掛ける。キュルキュルとエンジンの掛かりそうな音が倉庫に響く。


何回か繰り返してみると不安定だがエンジンが掛かり始める。




「ロゼッターいいよー」




ロゼッタは魔法を掛けるのをやめ、マーガレットは何度か空吹かしをして安定するか試している。


エンジン音は最初と比べると安定していてマーガレットは小声でよしっと言った。




「掛かったー!…っいってぇ…」




マーガレットは嬉しさのあまり両腕を上げるが両手が屋根にあたりゴンという鈍い音が鳴る。




「ねぇマーガレット、なんならエンジン直す魔法かけてってやっても…」




サーニャがマーガレットに聞いた。




「本音言うとそうなんだけど…魔法使うのに体力使うんだろ?結構魔力使いそうだからやめといたんだよ。この車ただでさえ古いし」




マーガレットが車をポンと叩きながら言った。




「古いっていつのなんですか?」




「うーん、確実に言えるのはここにいるやつら全員生まれてない頃のって事は言えるな。ロゼッタが何歳か知らないけど私の爺ちゃんが若い頃に乗ってたようなやつだから」




「「へー…」」




サーニャとミーナは車を見て意外だと思った。




「よし、みんな乗れ」




マーガレットの呼びかけにサーニャ達は車に乗り込んだ。車を外に出しシャッターを閉める。


マーガレットが運転をしアレゲニー町を出る。




サーニャ達の新たな魔導書を探す旅が始まった。








サーニャ達がアレゲニー町を出て二日後の夜。


ヴィレンツェの店に前に二人の男達が立っていた。




「おーい、ヴィレンツェ流石にそろそろ返して貰わないとまずいぞー」




男はドアをノックしながら言った。だが何も反応がない。




「また居留守使ってんのかあいつ…おいお前、またあん時みたくならないように銃出しとけ」




もう一人の男が銃を構える。


ドアをノックした男がドアノブに手をかける。




「開いてる…」




ギイィ…とドアを開けるとドブネズミが外へ出ていく。




「お前は外で見張ってろ」




「わかった」




二人はライトをつけ慎重に店の中へ入る。店の中は人気がない。




「うっ…なんだこの臭い…」




どこからか何かが腐敗したような臭いが立ち込め男達は思わず鼻を覆う。


店の中を見渡すと一人の男があるものを見て驚愕する。




「お…おい…!これ見ろよ…!」




「なんだよ…っておいどういうことだよこれ!」




そこにはカウンター裏で血だらけで無残な姿になったヴィレンツェがいた。


ハエが集っていて足元を見るとドブネズミにかじられた跡のようなものがある。




「わけわかんねぇ…とりあえず…ボスに報告するしかないな…早く外に出よう、長居してたら気が狂う」




「…そうだな」




二人は外に出ようとドアノブに手をかけるがドアが開かない。




「…は?なんでだ?」




「なぁ…気になったんだけど…俺ら入った後ドア閉めたっけ…?」




「いや…閉めてない…でも閉まる音聞こえたか…?」




「何も…」




カチリキリリリ…コツ…コツ…コツ…




男が何か言おうとした時後ろからぜんまいが回るような音と足音が聞こえた。




「おい…お前ふざけんなよ…」




「はあ?何もしてないっ…」




ドサッ…




突然銃を持った男が倒れた。


もう一人の男は突然の出来事に理解できなかった。




「なんだよおい…」




男は倒れた男の首を触ったりするが呼吸と脈が止まっていた。




「死んでる…どういう…」




男は理解できずにいると自分の首筋に何かで刺されたような痛みを感じた。


触ってみると針のようなものが刺さっていた。


するとどんどん意識が遠くなり力が抜け男も倒れてしまった。




暗闇からコツコツと男達の死体に西洋人形を持ったロリータ服の少女が近づき男達を触る。




「これでいいの?ママ?」




「うん、よく出来ました。帰ってきていいよ」




「わかった」




少女は誰かと話した後暗闇へ消えていった。


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