第26話 マーガレットの腕前

サーニャ達はヴィレンツェについていき部屋の中へ入った。


部屋はとても殺風景でコンクリートむき出し。正面に鉄製の頑丈で重そうな扉、右側の扉は普通の木の扉。


ヴィレンツェは鉄製の扉をゆっくりと開ける。ギイィッと重い音が部屋に響く。鉄製の扉は普通の扉と比べるととても分厚く防音性に優れていそうだ。


扉が開きヴィレンツェにさあさあっと促されサーニャ達は真っ暗な部屋に入る。


コツコツとサーニャ達の足音が響き渡る。


ヴィレンツェは全員入ったのを確認すると扉を閉めロックをかける。扉を閉める時の音はとても重い音が響き渡る。


部屋は一気に真っ暗になりミーナは驚きのあまり近くにいたロゼッタに抱きつく。


ガシャンと音がした後ウィィンと何か機械が動き始め部屋の明かりがカチカチとつき始める。


部屋全体が明るくなると、とても広い空間が広がっていた。床に一定の間隔で黒い線が引かれており一本ごとに白い文字の数字が1、2、3と書かれている。




「うわあぁー!懐かしいなここ!何も変わってないじゃん!」




マーガレットは部屋を見て目を輝かせていた。




「ねぇ…マーガレット…ここって何…?」




サーニャは初めて見る空間だったためさっぱりわからなかった。




「ここはうちら二人だけの射撃場だよー!あっマーガレットの持ってくるからマーガレットも準備しててー!」




マーガレットに聞いたはずがヴィレンツェが質問に答えた。


ヴィレンツェはウキウキしながら何かを取りに部屋を出た。


マーガレットは近くにあった長めのテーブルの足を床に書かれている赤い線と重なるように置く。




「おっまたせー!マーガレットのってこれでいいんだっけ?」




ヴィレンツェはテーブルの上に持ってきた銃を置いた。




「そうこれ!はぁー懐かしいー!」




マーガレットとヴィレンツェは銃を見て会話が弾みサーニャ達はそれに取り残されていた。




「楽しそうだね…」




ロゼッタはサーニャに言った。




「うん…でもロゼッタとミーナちゃんもファルスの店の時あんなんだったよ…」




サーニャがそう言うとロゼッタはうっ…と言い言い返す言葉が見つからなかった。ミーナもははっ…と照れくさそうに笑う。




「それじゃあマーガレット、最初何mにする?」




「んー…久しぶりだし10mかな」




「わかった!」




ヴィレンツェは壁にあるスイッチを押した。すると天井からパタンと的が現れた。




「はぁー…いけっかなー…」




マーガレットはそう言いながら銃に弾を6発装填する。そして片手で銃を構え的に向けると何も迷いもなく一発撃つ。撃った際の反動はあまり感じられない。


発砲音が反響してとてつもない轟音で耳に入る。


的がカラカラとマーガレットの近くまで動き、止まるとマーガレットは自慢げに的を見せた。




「ほれ、どうよ」




サーニャ達は興味津々に的を見る。的の中心に穴が開いている。狙いを定めて撃っていたように見えなかったが確実に当てていた。




「なんで当たるの!?」




サーニャはそれしか言葉が出てこなかった。




「私ら子供の頃ずっと撃ちまくってたしな」




マーガレットはそう言うとヴィレンツェの方を見た。




「そうそう、今はマシだけどうちら小さい時は護身の為にやってたからね。そうしないと何も抵抗出来ずに売りに出されたり死んでたから…そーだ!サーニャ達も一回撃ってみたら?」




ヴィレンツェがサーニャ達に言った。




「私はいいです…」




ミーナはロゼッタの後ろに隠れながら言った。銃が怖いのだろう。




「私もいいや」




ロゼッタもあまり乗り気ではなかった。




「じゃあ…私やる…」




サーニャは仕方なくやる事になった。




「おっけー!…あっごめんごめん…これ三人に渡すの忘れてた。はい、これで多少マシになると思うから」




ヴィレンツェはサーニャ達に耳栓を渡した。サーニャ達は渡された耳栓をつけ、サーニャはマーガレットの隣に立ち銃を手に取る。緊張と恐怖からか震えが止まらない。するとマーガレットがサーニャの右肩に手を置き「大丈夫だ」と言う。


サーニャは大きく深呼吸をし的を狙う。




バンッ!




銃の反動でサーニャは少しよろつくがマーガレットが受け止める。的は下が少し欠けた程度だった。




「はぁ…怖かった…」




サーニャは深くため息をついた。




「よく頑張った…ヴィレンツェ、今日はこれぐらいでいいや」




「…あっ…うんわかった」








サーニャ達は射撃場を出て元の部屋へ戻った。


マーガレットはヴィレンツェと二人で話したいとサーニャ達に言い店の外で待つように言った。


サーニャ達はそれに応え店を先に出た。




「…もう行くんだね…マーガレット…」




ヴィレンツェは少し名残惜しそうにマーガレットに言った。




「ああ、そのうち戻ってくるから…」




「うん…それで持っていくのはウェブリー Mk VI二丁とそれの弾…だけでいいの?」




「使い慣れてるしいいんだけど…」




「そっか…ついでにこれも渡しとくね」




ヴィレンツェは銃の隣に鍵を置いた。




「なんだこれ?」




「私の宝物。でも私はあまり使わなかったしね」




「そうか…今日はありがとうな…」




マーガレットはそう言うと銃をホルスターに入れるとヴィレンツェと握手をした。




「うん…旅を楽しんで…」




「じゃあ行ってくる!」




マーガレットはそう言い残し店を出た。




「…はぁ…とうとうマーガレットもこの町を出ちゃったか…」




ヴィレンツェは椅子に寄っ掛かりタバコに火をつけ吸い始める。




「なんか…どんどん先越されるなぁ…でも、昔は一匹狼みたいだったマーガレットにあんな仲間が出来るなんて…成長したんだねぇ…」




タバコを吸いながら呟くと頭の中に昔の記憶が蘇る。




「……はあ………ん?」




ヴィレンツェはため息をつくようにタバコの煙を吐くとある物に気がつく。


棚の上に見覚えのない西洋人形が置かれていた。


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