第22話 懐中時計

四人は作戦通り自分達の行動をした。


サーニャとミーナは街の中を地図を確認しながら魔導書を探し、ロゼッタとマーガレットは部屋で待機しつつ魔導書の位置を確認。


ミーナも魔導書の地図を持っていた為探すのが少し楽だったが人混みの中から犯人を割り出すのは至難の業だ。




「マーガレットもよくこんな作戦思いつくね…」




「そうですね…」




サーニャとミーナは地図が示す場所の近くにいたが大通りで人混みだ。少し諦めが出始めていた。


ロゼッタとマーガレットは部屋で待機という事もあり退屈だった。


ロゼッタはこくりこくりと寝そうになっていてマーガレットはライターの蓋を時計の秒針に合わせて開けたり閉めたりを繰り返す。


ライターのカシャカシャという音が響き渡る。


ふわあぁ…とマーガレットは大きなあくびをし懐中時計をパカっと開け何気なく眺めているとあることに気づいた。




「時間ずれてる…まあそれはよくあるか……ん?いやこれ針一本多くないか?」




懐中時計の針は普通三本のはずがこの懐中時計は四本あり一本だけ全く動いていなかった。マーガレットは動いてない針を見てずれていると勘違いしていただけだった。




「ん?マーガレット懐中時計見せて」




「おう」




マーガレットはロゼッタに懐中時計を渡した。ロゼッタは懐中時計の文字盤を見てすぐに気づいた。




「あーこれあれだ!」




「あれってなんだよ」




「これはね、ある事すると時間を戻してその場所で過去に何があったか見れるの」




ロゼッタはそういうと懐中時計の横の切り込みに爪を差し込みくいっと上に開ける。すると中から小さなりゅうずが現れた。指でなんとか回せる程度の大きさだ。




「じゃあこれで犯人を割り出せるのか!?」




「そう!マーガレットよく見つけたね!早速やってみようか!」




「おう!」




二人はソファの裏に隠れる。そしてロゼッタはゆっくりとりゅうずを回した。ピクリとも動かなかった針が逆時計回りに回転する。時間は少しずつ戻っていきサーニャとミーナが部屋から戻り、ヴィランズコースト教会の話、魔導書を探すロゼッタとマーガレット、ロゼッタとマーガレットがベッドの上で寝てる時の様子、それらが逆再生で流れていった。


二人が寝ているところでロゼッタはりゅうずを止めた。




「よし、移動しようか」




「え…?大丈夫なのか…?近くに行ってバレたりしないのか?」




マーガレットは不安でしかなかった。




「ん?大丈夫だよ時間を戻すって言っても私達には何も影響ないから」




「そうか…じゃあソファの裏に隠れる意味あったのか…?」




「あれはマーガレットが真っ先に隠れちゃったから…」




「あー…わりぃわりぃ…てっきり影響あるのかと思ってな…」




「いいよ、それじゃ行こっか」




二人は寝室に入り部屋の周りを見た。




(まさかこんな形で自分の寝顔見るとは思わなかった…)




マーガレットは自分の寝顔を見て心の中で思った。


ロゼッタは再びりゅうずをゆっくり回す。


針は逆時計回りをするが景色は何も変わらない。


カチカチと懐中時計の針の動く音が響く中隣の部屋からドサッと音がした。マーガレットとロゼッタは隣の部屋を見る。ロゼッタはりゅうずを回し続けると落ちた天井の穴から女性がスタッと降りた。そのまま時間は戻りロゼッタのバックを漁り終えるところで止めた。




「こいつが犯人か…」




「そうみたいだね…」




女性は誰もが怪盗と思う格好をしており髪の色は赤みがかった茶色、目の色は赤でつり目だ。身長はマーガレットより少し低い。




「特徴は掴んだけどサーニャ達に伝える手段がないな…」




「んー大丈夫こういう時のために一応準備しといたから」




ロゼッタは近くにあるメモに万年筆で特徴を書きくるくると丸め小さな筒に入れた。そして窓を開け柵に止まっている鳩の脚に筒を取り付け飛ばした。




「へーいつのまにこんな事を…」




「この筒結構便利だよ送りたい相手の所に行ったら勝手に落ちるし」




マーガレットはへーっと声を上げる。ロゼッタはりゅうずを隣にある小さなボタンをカチッと押す。すると針は勝手に動き12時を指し止まった。すると止まっていた怪盗などがすうっと砂のように消え元どおりになった。




「よーし!特徴も分かったことだしこちらも探しにいきますか!」




「でもそれじゃあマーガレットの言った作戦と違くない?」




マーガレットはすっと座っていたベッドから立ち上がる。ロゼッタはマーガレットの言葉を不思議に思った。




「いやぁ…なんかここでじっとしてんの飽きてきてな…そろそろタバコ吸いてぇし…」




マーガレットはインシュバート街に来てからタバコを吸えておらず少しイライラした様子だった。喫煙所があれば吸っていたがインシュバート街には喫煙所が一切ない。喫煙者には住みづらい場所だ。




「あー…いいよ!私も正直退屈すぎて寝そうだったし…」




二人は顔を見あった。




「…ぷっ…くっ…」




「…んふっ…ふっ…」




自然と笑いが溢れた。




「ははは…はあ…じゃあ…いくか!」




マーガレットは落ち着く為に深呼吸をし笑いで出た涙を拭いた。




「うん!」




ロゼッタは返事をした。最初の頃のマーガレットのロゼッタに対する不信感は無くなり関係が良くなったと二人は実感した。

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