第20話 ヴィランズコースト教会
とある山奥にある廃墟。
建物の中を二人の女が歩いていた。
「んー!疲れたー!でも何もなかったねあの町」
「そうだな」
「あの男の子良い実験材料になると思ったんだけどなぁーねーニーダ」
「大丈夫だ、撃っておいたから」
「ニーダ」はボーガンを上に向けた。それを見たアンジュはニヤリと笑う。
「ならばよーし!ふんふんふーん」
「アンジュ」は上機嫌に鼻歌を歌いながら大きな扉を開けた。
「たっだいまー!みなさーん!」
部屋にはボロボロの長テーブルと明かりがうっすらついているシャンデリアがある。そこにはトランプをシャッフルする者、本を読む者、長テーブルに足を置き寝ている者などがいた。
「おっかえりー!」
長テーブルの端っこの方でハンバーガーを食べている女「モーガン」が手を振った。
「あらーまたそんなの食べてるのー?モーガンちゃーん?」
「うん!美味しんだぞ!この肉!」
ニーダはチッと舌打ちをした。
「よくそんな生臭いの食えるな、モーガン」
「だって美味しいんだもん…わかってよぉニーダ…」
「それで、何か情報はあったかい?アンジュ」
トランプをシャッフルし終えると「ジャック」がトランプをヒュッとアンジュへ投げ飛ばした。アンジュは投げ飛ばされたトランプをパシッと指で取る。
「あったはあったわよ、ジャック」
「へー?どんなの」
ジャックはニヤリと笑う。
「まあー魔導書は無かったけど町一つ消えたかなーそれとあの魔法使いに仲間ができたみたい」
「キャハハハハ!また裏切られちゃうんじゃないの?ローズの時みたいに!ねぇローズ?」
「…」
モーガンは本を読んでいる「ローズ」を見た。ローズは本に夢中なのか静かだった。
それと向かい側にいる「キラー」を見てモーガンはあれ?と思った。
「…ねぇジャック…ローズとキラーまた何かあったの?」
「ん?いつものあれでしょ…あれ…」
モーガンはジャックに耳打ちした。長テーブルに足を置き寝ているキラーとローズはパートナーだがあまり会話はなくやり方もローズは静かに、キラーは派手にと真逆だ。それのせいでよくキラーがむつけることが多い。
基本ヴィランズコースト教会は二人一組で行動するのが前提だ。
「アンジュとニーダ」、「モーガンとジャック」、「ローズとキラー」といった組み合わせだが例外もある。
「そういえばあいつはまた下の牢獄にいるの?」
「ん?ミラか?ああ、あいつ今日も朝からずっとあそこにいるよ…」
アンジュはある女の事をジャックに聞いた。
「ミラ」はパートナーを持たない者だ。いや、みんなが毛嫌いするせいでパートナーが存在しない。
ミラは牢獄の前にしゃがみ込み牢獄の中にいる腐りかけの死体を眺めていた。
「ねぇ?あなたは楽しい?私は楽しいよ?この世界も、このお家も」
ミラは死体に朝からずっと同じ事を繰り返し言い続けていた。
アンジュははぁっ…とため息しか出なかった。
するとアンジュ達が入ってきた扉が開き女性が立っていた。
「戻ったわよ」
「あっ、お帰りメアリ」
「メアリ」にもパートナーである娘「アリス」がいるが隣にいなかった。
「クスッ…やっぱり人間って面白いわね」
「それはいいから結果はどうなの?それとアリスいないけど」
アンジュはメアリに聞いた。
メアリはまたクスッと笑い薄気味悪い表情を浮かべた。
「ええ、一人の小さな魔法使いと会ってね。その子ロゼッタの仲間みたいなのよ。今アリスがその子の事を調べてくれてるからタイミング良ければ消えるはずよ」
「おっ…おお…そうか…やっぱメアリが言うとなんだかぞくっとするな…」
ジャックはニヤリと笑いながら言った。
「それよりあれは進んでいるのかしら?」
メアリはそう言うと近くにあった椅子に座り花瓶をコンコンと指で弾いた。
「あー片方は進んでいるみたいだけど…見に行くか?」
ジャックはメアリにそう言うと他のメンバーにも質問した。
メアリとニーダ、アンジュ、モーガンは行くと回答した。
ローズは相変わらず本に夢中でキラーは「めんどくせぇ」と小声で言い断った。
五人は部屋を出て階段を降り地下室へ向かった。
迷路のような廊下を抜け扉の前で立ち止まる。ジャックが扉をノックするとカシャカシャと仕掛けが動き鍵が上から下へと解除されていく。最後の鍵が解除されるとジャックは扉を開き部屋に入る。
そこには巨大な円柱の水槽があり二つあり片方は空でもう片方には鉄製の柱に人が鎖で縛られていた。目は瞑っている。
「あーあー勝手に入っちゃダメだよー全くもー出来たら呼ぶのにー」
奥の暗闇から声が聞こえコツコツと足音が部屋に響く。
「そりゃああんな簡単な仕掛けでロックだなんていつでも見に来ていいですよーって言ってるようなもんじゃんよー「グレッタ」姉さんは」
グレッタは暗闇から姿を現しニヤニヤしていた。ニヤニヤした表情からギザギザの歯が見え着ている白衣は血だらけで丸い眼鏡をかけている。
「あはっばれたかー」
グレッタは頭をボリボリ掻いた。
「この娘ねーまだ試してないんだけどそれなりにはいけると思うんだよねー」
グレッタは円柱の水槽をコンコンと指でノックした。
水槽の中の女性は音に反応したのか目をゆっくり開く。すると自分の置かれている状況が理解できないからか怯えるかのように暴れ始めるが鎖のせいで自由に動けない。
「んぐっ!んんー!んんんー!」
グレッタはその光景を見て笑顔になり興奮し始める。
「あははっ!いいよいいよ!それじゃあいっくよー!」
グレッタは近くにあるレバーに手をかけるとガシャンと一気に下へ下ろした。
ゴオォォという音が部屋中に響き水槽の水の色が下から少しずつゆっくりと濁り始め紫色に変わっていく。
女性はパニックになり閉じていた口が開いてしまう。
「んん!んん!ごがあがあがぁっ!」
水槽の中の色が変わるのは思った以上に早く水の色は完全に紫色に変わっていた。
グレッタは準備完了っとボソッと言うと隣のレバーをガシャンと下へ下ろした。
すると水槽の周りにバチバチッと強烈な電撃が走り中の女性は感電している。部屋中に電気の炸裂音と女性の悲鳴が響き渡る。グレッタは数分経つと満足気に下ろした全てのレバーを上げた。
部屋は一気に静まり返る。水槽の中の水は少しずつ抜け女性はぐったりしていた。
「いひひっよーし出来たかなー…ニーダ、この娘降ろすの手伝ってー」
グレッタは上機嫌に水槽を開けニーダを呼び手伝うよう促した。
ニーダははぁっとため息をつき鎖を外しグレッタと一緒に女性を抱え近くの血痕が大量にある手術台の上に寝かせた。
グレッタはワクワクさせながら女性の心臓の音などを調べ始める。
「ねぇ…やっぱ私こいつ無理かも…」
「あぁ…私もだ…」
アンジュとニーダが小声でコソコソ話しているとグレッタは突然大声を出し始めた。
「やったあああああああああああああ!あとは最後の仕上げっと…あっ…ここからの作業は秘密だから出てって!」
グレッタはそう言うと五人を扉の向こうへ行くようにシッシッとジェスチャーをした。
「あっニーダに渡すものあるんだった!これとこれ!はい!早く出てって!」
ニーダは遅れて扉の外へ出ると扉はバンと閉まり鍵がカシャカシャと閉まった。外にはニーダしか居らずはぁ…とため息をつくしか出来なかった。グレッタから渡されたものはいつも頼んでいる毒針付きの矢とは別に紙一枚と別の矢だった。
紙には「効果はわからないけどすごい!」とだけ書かれておりニーダはイラつきながら扉をノックするが鍵は開かない。
「…っぁあくそがっ!」
ニーダは我慢ができず扉を蹴飛ばした。
「だからあいつ嫌いなんだよ…ったく…」
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