第19話 ある協会
「はぁ…はぁ…はぁ…」
サーニャとミーナは走ってホテルへ向かった。
魔法使いの店からホテルまでは距離があり大通りの人混みを掻き分けながら走るためミーナはサーニャの事を見失ってしまった。
「はあ…はあ…あれ…サーニャさん…?」
ミーナは周りを見渡しサーニャを探すが見つからない。見渡しているとカフェのテラス席で座っている女性に目がいった。意識して見たわけではないが何か引き寄せられる感覚だ。
女性はミーナに気づいたのか笑顔で手を振った。
ミーナも手を振ろうとする。
「ミーナちゃん、どうしたの?行くよ。」
パシッと左手をサーニャに掴まれた。サーニャはミーナの腕をぐいっと引っ張りホテルへと走った。
女性はその光景を見てクスッと笑った。
「お代わりいかがですか?」
「ええ、いただくわ。」
近くにいたウェイトレスが女性のコーヒーカップにコーヒーを注いだ。
「ありがとう。ねぇ、人間って面白いわね。貴方もそう思わない?」
「は、はぁ…」
女性はコーヒーを一口飲むとウェイトレスに質問した。ウェイトレスは答える言葉が思い浮かばなかった。
「クスッ…大丈夫よ。ただの独り言よ。」
「そ…そうでしたか…しっ失礼します!」
ウェイトレスは内心変わった人だなと思いながら店の中へ戻った。
女性はもう一杯コーヒーを飲む。コーヒーカップを置きはぁっとため息をつく。
「やっぱりこの街に来てたのね…あの子達…狙いが当たったわ…」
場所は戻りホテルの中
サーニャとミーナは部屋の扉を開け部屋に入ると涙を流しながら灰のようになっているロゼッタとやれやれと少し落ち込んでるマーガレットがいた。
「ねぇ…マーガレット…もしかして…」
「ああ…魔導書が二冊しかないんだ…思い当たる場所とか探したんだけど…無いんだよ…」
サーニャは膝からガクッと崩れ落ちミーナは呆然と立ってることしかできなかった。
ファルスの占いは当たっていた。
「あいつらに取られてなければいいんだけど…」
ロゼッタは涙ながらに話した。マーガレットはその言葉に疑問を持った。
「あいつらってなんだよ…」
ロゼッタは涙を拭い顔をパンパンと叩いた。だが勢いよく叩いたのかいったぁ…と言いながら顔を抑えた。
「みんな、一旦テーブルの周りに集まって」
ロゼッタはみんなを集合させ近くのソファに座った。
三人もソファに座る。普段はあまり見せない真剣な顔をしており三人はただ事ではないと思った。
「サーニャ。前、私のうちであった事覚えてる?」
「うん、矢の事でしょ?」
「そう、それで落ち着いたら話すって言ったでしょ?
「うん…」
「それを今説明するね」
ロゼッタはふぅーっと一度深呼吸をした。
「あの矢なんだけど、触ると神経が少しずつ蝕まれていって死ぬかこの世のものじゃなくなる性質があるの。前私が一人で魔導書探してる時に襲われた事があって隣にいた村人が巻き込まれたわ…あまり思い出したくないけど…」
「おい…それって…ヴィランズコースト教会の事か…?」
ロゼッタが説明をしているとマーガレットが思い出しヴィランズコースト教会と言った。ロゼッタはこくりと頷く。
「そう、マーガレットが分かるって言うのなら話が早いわ」
「いや、名前を聞いた事あるだけでどれぐらいやばいのか知らないけど…」
マーガレットは名前だけ知っていてサーニャとミーナはヴィランズコースト教会の事を知らなかった。
するとロゼッタは説明を続けた。
「ヴィランズコースト教会って言うのは私と同じく魔導書を探しているんだけどその為に暴行、誘拐、殺人、酷ければ町一つを破壊する事だってあるの」
ミーナはロゼッタの「町一つを破壊する事だってある」という言葉に故郷の事を思い出し恐怖で手が震え始めた。サーニャはそれに気づきミーナの手をぎゅっと握る。
「ミーナちゃん…こんな話してごめんね…きついんならやめるけど…」
ロゼッタもミーナの顔色があまり良くない事に気づきミーナに続けるか質問した。ミーナは震えながら大丈夫です続けてくださいと言った。
「わかった。そのヴィランズコースト教会の人数は分からないしどこにいるのかもわからない。突然現れて用が済んだら消えるというのが多いからね。とにかく、そいつらに魔導書がいっていなければいいけど…」
話を聞いた三人は魔導書がヴィランズコースト教会の手に渡ったらどんな事になるのか予想できた。
「…さっ!魔導書があいつらに取られる前に見つけ出すか!」
ロゼッタはそう言うと魔導書の在り処が分かる地図をテーブルの上に広げた。
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