第16話 インシュバートグランドホテルとミーナと石の正体
インシュバートグランドホテルの中に入った三人はあまりの広さに唖然とした。
ロビーとは思えない広さだ。天井には大きなシャンデリアがあり中心には噴水がある。まさに宮殿のような建物だ。
「わぁ…すごいね…ロゼッタ…」
「うん…」
サーニャとロゼッタは驚くあまり言葉を失いかけていた。
マーガレットも同じく。
「だめだ!」
サーニャはふと声が聞こえたカウンターを見ると何かもめてる様子だった。
「あっあれって…」
フロントともめているのはさっき本屋で見かけた少女だった。
何でもめているのかはよく聞き取れなかったがマーガレットにとんとんと肩をつつき事情を話した。
「ん?どうしたサーニャ…」
「あの子…さっき本屋で見た子なんだけど…」
「ああ、そうなのか…ってなんか困ってる様子だな…」
「うん…」
ロゼッタは二人の会話が気になった。
「ん?あの子がどうしたの?」
「あ?サーニャが本屋で見た女の子なんだってよ…」
「ふーん…」
ロゼッタはそう言うと受付の方へ歩いた。
マーガレットはおっおい!と言うがロゼッタには聞こえていなかった。仕方なくサーニャとマーガレットはロゼッタを追いかける事になってしまった。
「だからだめだと…あっお客様。宿泊ですか?」
フロントはロゼッタを見ると少女にしていた態度と真逆になり接客モードになった。
「うんそうだよー。あっちょっと待ってね。ねえ、聞きたいんだけど君どうしたの?」
ロゼッタは少女と目線の高さを合わせるようにしゃがみ質問をした。
「うぅ…泊まる場所がなくて…でもお金もないの…」
少女は半泣きになりながら話した。ロゼッタはそっかーと言いながら少女の頭を撫でスッと立ち上がった。
「よし、ねえ受付のおじさん。四人一部屋のってある?」
マーガレットと受付の人は思わずはぁ!?と言ってしまう。サーニャはやれやれ…と言い少女はえ?っと言いきょとんとしてしまった。
「ねえ?ある?」
「あ…はい…ありますけど…」
ロゼッタに部屋の案内図を見せると四人部屋は5万ペルからと書かれていた。
「うん、大丈夫だよー」
ロゼッタはそう言うとカウンターに5万ペルを置いた。
「…かしこまりました…ご案内いたします…」
受付の人はロゼッタに負け四人を部屋へ案内した。
エレベーターで6階まで上がり一番奥の部屋へ案内された。
広い部屋で四人で泊まるには少し広い。窓からはインシュバート街が一望できる。
サーニャとマーガレットはわあぁーっと言いながら外の景色を見た。
「すげぇなここ!ソファもふかふかだし!」
マーガレットは荷物を床に置きソファにボフっと座ると力が抜けたようにくつろいでいた。
サーニャも隣に座るとゆっくりと沈み込んでいくソファにわあぁーと言う言葉が止まらなかった。
だが一人だけ楽しめていないのがいた。少女だ。ロゼッタはそれを感じ取っていたのか少女の肩に手を置き大丈夫だよと小声で言った。
「あっそういえばロゼッタ、これ渡しとくわ。何か分かったら教えてくれ…ふあぁ…私は疲れたから寝るわ…」
マーガレットはロゼッタに石を渡した。小さな割れ目がありそこから青い宝石らしきものが見える石だ。んー?と思いながらロゼッタはマーガレットに聞こうと思ったがマーガレットとサーニャはすやすやと寝てしまっていた。
「二人の邪魔したらまずいし隣の部屋に行こっか」
ロゼッタは少女にそう言うと少女はコクっと頷いた。
隣の部屋はベッドルームだった。扉を閉めロゼッタはベッドの上に座り少女に隣に座るように促すと少女はぺたんと隣に座った。
「そういえば、名前言うの忘れてたね。私は…」
「ロゼッタさん…ですよね…?」
「うんそうだよ、さっきの聞こえてたもんね。貴女は?」
「ミーナ…です…」
「そっか、ミーナちゃんか。ミーナちゃんはなんで旅を?」
ロゼッタはふと疑問に思ったわけでもないが聞いてみることにした。
するとミーナは小さく震え始め話し始めた。
「私のいた町…無くなっちゃったんです…知らない人が来て町を壊して…私はなんとか逃げれたんだけど…お父さんと…ぐずっ…お兄ちゃんが…」
ミーナは話していくにつれぐずっぐずっと言う声が聞こえ始める。
ロゼッタは泣いているミーナを見て聞いちゃいけない事を聞いてしまったと思い黙り込んでしまった。
「そっか…ごめんね…お姉さん聞いちゃいけない事聞いちゃったね…」
ロゼッタはミーナを抱き寄せ頭をポンポンと撫でた。
「…うっ…うぐっ…うわあああああん…!」
ミーナは我慢の限界が来たのか大声で泣き始めた。ロゼッタは黙って頭を撫でるしか出来なかった。
数時間後サーニャが目を覚まし外を見ると夕日が沈みかけていた。
「寝ちゃってた…あれ?ロゼッタどこ行ったんだろ…」
サーニャは少し開いている扉を見つけるとその扉を開けた。そこにはロゼッタがミーナを膝枕していた。
ロゼッタはサーニャが入ってきたことに気づくとしーっと小声で言った。サーニャは仕方なくロゼッタの隣に座る事にした。
「この子も寝ちゃったんだ…」
「うん…ミーナちゃん、かなり大変だったからね…」
ロゼッタはミーナの頭を優しく撫でながら言った。ミーナの表情は安心して幸せそうだ。
「かなり…?」
サーニャはその言葉だけが気になった。だがロゼッタはうんとだけ答えその先は答えなかった。
「んん…あっ…すみません!」
ミーナは目が覚めるとロゼッタの膝を枕にしていたことに気づき飛び起きた。その拍子にマーガレットから渡された石がコロッと床に落ちた。
その石を見たミーナの表情が変わった。
「これって…」
ミーナの表情が真剣になると落ちた石を拾い上げくるりと石の周りを見た。
石の割れ目から見える青い宝石に気付くとはっと声をあげた。
「こっ…これは…!サーニャさん、コップに水を入れてきてください!」
「うっ…うん!」
ミーナのただならぬ感じを察しサーニャは慌ててテーブルの上にあったグラスに水を入れ持ってきた。
「ロゼッタさん、魔方陣書けます?」
「うん、できるよー」
「それじゃあ、この机いっぱいに書いてください。」
ミーナは近くにあった小さめの丸机に魔方陣を書くように言った。ロゼッタはそれに従い机いっぱいに魔法で出したチョークで書いた。魔方陣を書き終えた後ミーナはサーニャに真ん中にグラスを置くよう言いサーニャはよくわからないままグラスを置いた。ロゼッタもあまり分かっていない様子だった。
「ねえ…ロゼッタもしかしてよく分かってない?」
「うーん…私、石に疎くてね…」
小声で話しているとミーナに静かにと促された。
ミーナはグラスの中に石をポチョンと入れた。グラスにギリギリ入る大きさだった。ミーナは隣に置いていたバッグから本を取り出し開く。よしっと言うと小声で魔法を唱えた。
すると石からパチパチッという音が鳴り始めグラスが少しずつだがカタカタと揺れ始めた。ピカッと青い光が光り三人は光の眩しさに思わず目を逸らした。グラスは大きな音を立てながら割れ丸机の上は水浸しになった。
三人は恐る恐る丸机を見ると消えかかった魔方陣の上に青い宝石だけが置いてあった。
するとガチャっとマーガレットがドアを開け部屋に入ってきた。
「ふあぁ…なんだよ今の音は…ってお前ら何やってんの…?」
「あっマーガレット!さっき渡してくれた石ミーナちゃんが解決してくれたよー」
ロゼッタがミーナの肩を優しく叩くとミーナは照れくさそうに笑った。
「おっそうか。でもこの宝石何に使うんだ?」
マーガレットが宝石を拾い上げじっと見た。石の時とは違い少しずしっとくる。マーガレットは何か不思議な感覚を感じた。さっきまで少し眠気があったが今はあまりない。仮眠程度のはずが八時間近く寝た後のようなスッキリとした感覚だ。それに少しだけだが力が湧いてくるような感覚も。
「なあ、ミーナ…だっけか…これって…」
「はい、この宝石は回復と微量の筋力アップの効果があります。しかもその宝石は人を選び選ばれた人にしか効果が出ません。」
ミーナが効果を説明した。マーガレットは自分が今起きている状態が一致している事に驚いた。
「サーニャ、ちょっと持ってみろ」
「あっ、はい。……何も感じませんけど…?」
サーニャは宝石を渡されるが何も感じない。そしてロゼッタにも渡したが同じ反応をされた。やはり自分だけだった。
「その宝石は大切に持ってて下さい。」
「おう…わかった…だけど失くしそうだな…なあミーナ、これって小さく砕いても効果は出るのか?」
「はい、効果は少し弱まりますが…でもどうして?」
「いや、このピアスに付けれるかなって思って…」
マーガレットはピアスを外しミーナに渡した。確かに何か飾りが付いていた跡がある。ミーナはわかったと言ったかのように頷きバッグから杖を取り出し宝石を小さく砕いた。砕いた宝石のかけらを選びピアスに丁度いい形に整形し魔法でピアスとくっつけた。ミーナの手つきは慣れており十分ぐらいで完成した。
マーガレットは完成したピアスを耳につけ直し近くにある小鏡で確認した。
「おぉ…すげぇ…新品みたい…ありがとうな」
ロゼッタとサーニャも思わずおぉーと声が出た。
「すごいね、ミーナちゃん!もしかして家が宝石屋だったりするの?」
サーニャは手つきを見てすぐにわかった。
「はい…そうです。」
ミーナは照れくさそうに言った。
すると二人は意気投合し会話が弾んだ。
それを見てロゼッタはクスッと笑う。
「よかった…笑顔になって」
ロゼッタは小声で言う。マーガレットはその言葉が聞こえたのかそうか…と呟き安心した
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