第14話 別れと新たな街 インシュバート街

場所は戻りアレゲニー町


二人が来てから数日が経ちロゼッタとサーニャは町を出ることを決めた。




「あのー…マーガレットさん、なんでマーガレットさんも出掛ける準備してるんですか…?」




マーガレットは大きなバッグに荷物を詰めていた。




「あ?…あーそういえば言ってなかったな…私もさ旅に出るんだけど今日がその日でな…ついでだし二人について行こうかなって思ってさ」




「そうなんですか…」




「いいよ!一緒に行こうよ!」




ロゼッタは何も迷いもなく即答した。




「よし、準備完了っと。お前ら忘れ物ないな?」




「「うん」」




「よし、じゃあ行くか」




三人は家を出て町を歩いた。


そしてマーガレットの元・職場に着き大柄の男に挨拶をした。




「おやじ、今までありがとうな」




「おう、これからも頑張れよ」




大柄の男はマーガレットの頭をわしゃわしゃと撫でた。


マーガレットはやめろよ…と言っているがどこか悲しげだった。


その後三人は路面電車に五分ほど乗りサーニャとロゼッタが町に入った方向と逆の方の入り口に向かい町を出た。




「あ、霧が晴れてる」




マーガレットは空を見てボソッと言った。




「あっ本当だー」




ロゼッタも空を見て言った。




「ここで霧が晴れる事なんて滅多にないから今日は何かあるかもな」




マーガレットは上機嫌に言い先頭を歩いた。






そして歩いて二時間後




隣街インシュバート街に着いた。




「はあー疲れたー…」




ロゼッタは街の中にある喫茶店のテラス席のイスに座った。




「ああ、そうだな…流石に疲れたな…ここで一旦休憩するか」




「そうですね…」




マーガレットとサーニャもイスに座りはあーとため息をついた。




「何かご注文はごさいますか?」




女性のウェイトレスが来てサーニャにメニュー帳を渡し注文を聞いた。




「私はレモンティーで」




「えーとじゃあ…うちはアイスコーヒーで。あとあればでいいけど新聞も。ロゼッタお前は?」




マーガレットはロゼッタにメニュー帳渡す。


ロゼッタはだらーんとした様子でメニュー帳をパラパラとめくりあるページで止める。




「スーパージャンボパフェー」




ウェイトレスにそう言った。だるそうに。


ウェイトレスは何も動じずにかしこまりましたとだけ言いその場を後にした。




「ねー、マーガレットって新聞読むんだねー意外ー」




ロゼッタは丸テーブルに顎を置きながら言った。




「ああ、うちの町だと情報が新聞でしか入らないからな。なんか習慣付いてる。」




「へー…なるほどー」




サーニャは先に出された水を一口飲み街並みを見渡した。


インシュバート街はアレゲニー町の隣なのもあってか街並みが少し似ている。違うといえば霧に覆われていないのと街並みが綺麗なところだ。油臭ささがない。


「マーガレットさん、少し気になったんだけどこことアレゲニー町って何か似てる雰囲気するんだけど。」




サーニャは気になり聞いてみる事にした。




「あ?あーそりゃあそうだろ。なんかおやじの話だと昔、こことアレゲニー町は一つの街だったらしいんだよ。だけど役人の間で工業を優先にするか街の美化を優先するかでもめたらしくてな。それで分断されたままなんだとよ。それが数百年続いて両方元に戻る気は無いとさ。まーうちとしてはその方が楽だけどよ、この街肌に合わねぇ。あとさん付けやめろ、マーガレットでいい。」




マーガレットは話しながらタバコを吸おうと思ったが灰皿がない。ましてやこの街でタバコを吸っている人を見ない。マーガレットはそうだった…と言いポケットにタバコを戻した。確かにマーガレットには合わない街だ。




「お待たせいたしました。アイスコーヒーとレモンティーです。あと新聞も。スーパージャンボパフェはもう少しお待ちください。」




ウェイトレスが頼んだ商品を持ってきた。




「はーい」




ロゼッタは一言そう言った。


マーガレットはアイスコーヒーを一口飲むとここのコーヒーうまいとボソッと言い新聞を広げた。




「お待たせいたしました。スーパージャンボパフェです。」




ウェイトレスがスーパージャンボパフェを持ってきたが普通のパフェより大きい。


テーブルの上に置くとゴトッと重い音がした。ロゼッタはパフェを見て目を輝かせうわぁーと言っていた。




ロゼッタのパフェを見てうわぁ…唖然したマーガレットは新聞を見直す時にちらっとある看板が目がいった。本屋だ。




「なあ、サーニャ。魔導書…だっけか、あれって本屋とかに置いてあるもんなのか?」




マーガレットは思いつきで聞いてみた。




「んー…たまーにあるみたいだけど…ロゼッタ、地図貸して」




「んー?んっ」




ロゼッタは口いっぱいに頬張るパフェを食べながらバックの中を漁り魔導書を示す地図を出した。


サーニャは地図を開き位置を確認する。確かに魔導書の反応はある。だが正確な位置がわからない。




「多分ありそうだから食べ終わったら本屋行ってみようよ。マーガレットはいい?」




「いいぞ」




「ロゼッタは?」




「んー?んぐっはあー…本屋?いいよー」




ロゼッタは口いっぱいに頬張るパフェを飲み込み返答した。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る