第13話 ある村の壊滅と謎の二人

ある遠く離れた町にて


その町は荒れ果ていたるところに町人の死体が転がっていた。




「ねーやっぱここにあんの嘘なんじゃないの?」




「知らない、私に聞くな」




「ちぇー…」




謎の女は近くにある死体を蹴飛ばした。




「ひぃ…」




崩れかけた壁に身を潜めその現場を目撃した町の子供が思わず声を上げ腰を抜かしてしまった。


その拍子にガラガラッと瓦礫が動き音がなってしまう。




「あれー?まだ誰かいたのー?」




女は音のした方を見ると崩れかけた壁を魔法で跡形もなく消した。子供を見つけると笑顔で近寄った。


子供は腰が抜け恐怖のあまり震えが止まらず動けずにいた。




「ねーこれの場所分かる?」




女は子供に本を見せた。




「し…知らないよ!来ないでよ!町めちゃめちゃにしたくせに!お父さん殺したくせに!」




子供は涙を浮かべながら女に訴えた。




「そっかーごめんねーじゃあ君は助けてあげるから。ほら、手つなご?」




女は子供に手を差し伸べた。


子供はその手をパンッと叩き繋ぐ意思はない事を表した。


女は叩かれた手を抑え手をじっと見た。




「ふざけんじゃねぇよ!お前に助けられたっていい事ないよ!」




子供は女を睨みつけた。近くにある瓦礫を手に取り、立ち上がり女に立ち向かおうとした。


女は叩かれた手を抑えたまま子供の事を見てニヤリと笑った。




「あはははははははははは!君面白いね!君のそういうの好きだよ!でもね?」




女は子供に近づき、顔を近づけた。




「そんなので何ができるの?」




女は子供に近づき耳元で囁いた。




「…っ!うわあああああああ!」




子供は女に攻撃を仕掛けたがヒュンと女は後ろに下がり避けられてしまった。




「あーあー残念、当たらなかったねー。ねえ、殺っていいよ」




女は隣にいる女にそう言うと子供から距離を置き姿を消した。




「おっ…おい!待て!逃げんの…っ!」




チャキッ




隣にいた女は子供の腹部にボーガンを向け無表情で子供を見た。


その距離は三歩歩いたらボーガンが体に当たってしまうほどの距離だ。




「……」




バズン!




女は無表情のままボーガンを撃った。


ボーガンの矢は子供の腹部に深く突き刺さり貫通する一歩手前まで刺さっていた。




「あなたはいい実験材料になる予定だったのに…残念だわ…」




そう言い残すと女もすうっと姿を消した。


子供はドサッと地面に倒れる。


ポツポツと雨が降り始め辺りは薄暗くなった。


子供は残り少ない力を振り絞り腹部を触り傷口を撫でる。




「はは…やっぱ痛いなぁ…これで…お父さんに会えるのかな…あいつ無事か…っ!」




ドグンと体に衝撃が走った。


腹部の傷とは比べ物にならない程の痛みが少しずつ押し寄せてくる。




「う…ううう…うああああああああ!」




あまりの痛さに歯ぎしりをし、口から少量だが血が出続ける。


何かに体を蝕まれる感覚だ。


痛い。苦しい。息ができない。


少し痛みが引き力を振り絞り起き上がった。


手を見ると震えていた。




「ゴハァ…!…なん…だよ…こ…れ…」




吐血した。血に混じり何かが動いているのが見えた。


何かの幼虫だ。




「うわぁああああああああ!!」




子供は吐血したものを見て驚いた。


だがもう一度見た時には幼虫はいなかった。




「…あれ…なんだったんだ…さっき…」




子供は不思議に思ったがそれと同時に自分の意識が遠のく感覚がし始め体の力が一気に抜け倒れ込んだ。


そして少しずつ目の前が真っ暗になった。




その後子供はピクリとも動かなくなった。

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