第11話 アレゲニー町とマーガレット
箒が折れ暗い夜道を歩く事になったサーニャとロゼッタ。
「星、綺麗だね。」
ロゼッタは空を見上げて言った。
「うん…そうだね」
箒で一気に目的地に行くのもいいがたまにはのんびりと歩いて行くのもいいなと思った。
「ねえ、ロゼッタ。さっきの事なんだけど教えてくれないの?」
「さっきの?…あー矢の事?あれは落ち着いたら話すよ」
「そう…」
サーニャはロゼッタに質問したが答えてくれない。
ずっと頭の中に残ったままだ。
歩いていると東の空が明るくなってきた。太陽が昇ってきていた。
するとロゼッタは近くにあった大きな切り株の上に座る。
「はぁ…疲れた…休憩しよ…」
「うん…」
二人は箒が折れてから2時間以上歩きっぱなしで限界だった。
草原の上だが少し上り下りがあり体力を少しずつ奪っていた。
ロゼッタは地図を広げ魔導書の反応を確認する。
「はあ…魔導書の反応…ないか…」
はあーっと大きなため息をつくと切り株の上に寝そべった。
「もー!なんで出ないのよー!」
ロゼッタは叫び出した。
サーニャはそれを見ても動じないぐらいロゼッタの扱いに慣れ始めていた。
「…ん?ねぇ、ロゼッタ。あそこにあるのって建物?」
霧が晴れ始めると周りの風景が見え始めた。
サーニャは建物の見える方角を指差す。
「え?」
ロゼッタはそう言うと起き上がりサーニャの指差す方角を見た。
「うーん…確かに建物っぽいのあるけど…ちょっと待ってね…」
ロゼッタは地図を見た。地図には何も書かれていない。
「あれ?やっぱり何も書いてない…私もあんなところに町があった記憶ないし…行ってみる?」
ロゼッタは半信半疑だがサーニャに聞いてみた。
「うん…休めるところあればそこで休めばいいしね…」
二人は建物の方へ歩き始めた。
そして歩き始めて30分後。
二人は門の前に立っていた。
「へぇー…こんなところに町があったんだ…」
ロゼッタは門を見て言った。
門は開いており、二人は町の中へ歩いた。
町の様子は少し変わっておりスチームパンクの雰囲気そのままだ。建物の壁に排気口だろうか鉄パイプが張り巡らせていた。
そして町は少し油臭い。
歩き始めていると町の広場にたどり着いた。
噴水があるが水が出ていない。町の案内板がありそこにはアレゲニー町と書かれていた。
「アレゲニー町…ていうんだ…ここ…」
ロゼッタは案内板を見ながら言った。
するとサーニャの指輪が反応した。
この町に魔導書があるという事だ。
「ロゼッタ、魔導書あるみたいだけど…さっき地図には何も出てこなかったよね?」
「うん…ていう事はさっきまで誰かが持ってたって事か…」
ロゼッタはそう言うと地図を広げ魔導書の位置を確認した。
近くに赤く印が付いている場所がある。
二人はそこに向かって歩いてみる事にした。
その場所は意外と近く歩いて10分もなかった。
「ねぇ…サーニャ…本当にここなのかな…?」
「うーん…どうだろう…」
二人は目の前の建物を見て唖然とした。
町工場だ。明らかに魔導書がありそうな感じはない。
だが地図はここを示していた。
すると近くにいた大柄の男に声をかけられた。
「おい、お嬢さん達こんなところで何してんだい?」
「いやー…こういった本落ちてなかったですかねー…」
サーニャはそう言いロゼッタは大柄の男に魔導書を見せた。
大柄の男は少し考えた後あっという顔をした。
「あっあいつそういえば…待ってな…今呼ぶから」
「ありがとうございます」
サーニャは軽く頭を下げた。
「おーい!マーガレットぉ!客人だぁ!」
大柄の男は大きな声で呼んだ。
「んだようるっせぇなぁ!?てめぇみてぇに耳悪くねぇからでけぇ声で…ってこいつら誰?」
(...え?)
サーニャは聞いた名前と真逆の女性が出てきてさらに唖然とした。
つなぎ姿で油まみれ、金色の髪の毛は長めだが束ねてある。
そして口と目つきが悪い。
「だから客人だって、朝これと似たようなの拾わなかったか?」
大柄の男は魔導書を指差す。
マーガレットはあーこれかという反応をした。
「ちょっと待ってな…」
マーガレットはそう言うと裏の方へ行った。
「ところでよ、お嬢さん達旅人だろ?宿とかあるのか?」
「まだ決まってないですけど…いいところあります?」
ロゼッタは大柄の男にそう言うと大柄の男は首を横に振った。
「やめとけ、この町の宿屋はどこも最悪さ…あっそうだ。」
するとマーガレットが裏から魔導書を持ち出てきた。
「これか?」
「はい、ありがとうございます」
マーガレットはサーニャに魔導書を渡した。
「そうだマーガレット、こいつら旅人で宿探してるんだってよ。だからお前の家に泊めてやれ。」
「はあぁ!?」
マーガレットは大柄の男の言葉に驚いた。
「なんでうちなんだよ!どっか宿教えてやればいいだろうが!」
「なんでってお前…ここの宿の酷さ分かるだろ?」
「そりゃあ…分かるけどよ…」
サーニャは思った。ここの町の宿はそんなに酷いのか?町人が言うほどだからよっぽどなんだろうと。
「だからって…てなんだよ…」
サーニャとロゼッタはマーガレットの事をジーッと見た。
「…っわかったよ!親父!今日はもうあがるからな!」
これでサーニャとロゼッタの宿が決まった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます