第9話 決意

「ね…ねえ…ロゼッタ…?」




サーニャはもう一度呼んでみるが反応はない。


仕方なく肩をつついてみる事にした。




「ねえ、ロゼッタ?」つんつん




「ぴゃあっ!」




ロゼッタは普段上げないような声を上げ後ろを振り返る。




「…なんだーサーニャか…いるんなら呼んでよ…」




「呼んだけど?」




「あっ…そうなの?あははは…はぁ…びっくりしたぁ…ご飯?」




「うん、出来てるよ。」




「わかったー」




ロゼッタはかけていた眼鏡を机に置き立ち上がる。




「んー」ボキボキッ




軽くストレッチをするとロゼッタの体から音がした。長時間座っていただろうから仕方ないだろう。




「ロゼッタって目悪かったっけ?」




「悪くないよー雰囲気さっ!」ドヤッ




「そっ…そう…」




二人は夕食を済ませる。




「ねーサーニャーどうなった?」




「え?何が?」




「魔法ー。どこまでいったかなーって思って。」




「これぐらい。」




サーニャは杖を手に取り羽に向ける。


羽はふわっと浮き上がる。




「おー!はやいね!さっすがー!」




「え?はやいの?」




「うん!私の時はもっと掛かったよ…多分そのネックレスのおかげかな?ちょっと見せて。」




「うん、待って。」




サーニャはロゼッタにネックレスを渡した。




「あーやっぱりかー」




ロゼッタはネックレスを眺めながら言った。




「サーニャ、もっかい羽浮かせてみて?」




「う…うん…」




サーニャは杖を手に取り羽に向ける。


だが羽はピクリとも動かない。




「…あれ?」




サーニャは何度もやるが結果は変わらず。サーニャに焦りが出始める。




「ロゼッタ…?」




「うん。さっきまで出来たのはこのネックレスのおかげだね。これ魔力強化の魔法がかけられてるね。だから出来たのかも。」




「え…?」




サーニャはそれを知り唖然とする。




「はい、返すね。」




「う…うん…」




サーニャはネックレスを首に通すが元気がない。




「そんな落ち込まないでって。サーニャは出来るようになるから。私がそうしてあげるから。」




ロゼッタはサーニャの頭をわしゃわしゃと撫でた。


サーニャは少し元気を取り戻す。


すると突然ガシャンと窓ガラスが割れ二人の間をかすめ、飛んできて壁に刺さるものがあった。


矢だ。二人は壁に刺さる矢を見て空気が張りつめる。普通の矢と違う。サーニャは興味本位で矢を抜こうとすると




「触らないで!」




ロゼッタが突然叫び出した。サーニャは声に驚き触ろうとする手を下ろす。


誰が飛ばしたのか分からないがロゼッタは誰だか察しがついていた。




「ね…ねえ…ロゼッタ…?」




「……」




返事がない。




壁に刺さった矢は砂のように崩れ落ち消えた。




「サーニャ、一応聞くけどこの先どんな事があっても私についてきてくれる?」




ロゼッタは真剣な顔でサーニャに言う。


サーニャはこれはただ事じゃない、ロゼッタがこんなに真剣に言うって事はとても危険な事が起こりつつあるんだと感じた。




「うん、だって私それ覚悟でロゼッタについてきてるもん!」




ロゼッタはその一言ではっとした気持ちになったが覚悟を決めたサーニャを見てニヤッと笑う。




「…はは、そうだよね。その覚悟で来てるの忘れてたよ。よし!それじゃあ色々教えるからね!」




「うん!」




二人は決心した。たとえ何があろうと、どんな不幸なことが起きようと屈しない。そう心に決めた。

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