第7話 結婚式

その後ロゼッタはどこに行ったか分からずエリスはメイド姿に戻り姫の隣にいた。サーニャは何をするのかさっぱり分からなかった。


城の前の広場で結婚式が始まる。

姫は婚約相手の男を見て嫌そうな顔をしていた。サーニャにもそれはわかった。

見た目は悪くないが裏がありそうな顔をしていた。この男が盗賊だと言われなくてもわかる。


指輪を姫の指にはめようとした突如ロゼッタの声が聞こえた。


「ちょーっとまったー!」


ロゼッタはエリシアと共に三人の男を連れてきた。

エリシアは言った。


「この男は盗賊だ!直ちに結婚式は中止だ!」


男は突然の事に驚いた。同時にもうだめかという顔もしている。


「…っちくしょう!バレたんなら仕方ねぇ!」


男は言い訳する事なく姫を人質に取った。

そして姫の首にナイフを突きつける。


「俺たちを逃がさないと姫の命はないぞ!」


あたりは騒然としていたがロゼッタはいつも通り笑っていてエリシアとエリスは表情一つ変えなかった。


「いーよやってみなよー」


ロゼッタはとんでもない事を言った。町人からは怒号が飛び交った。


「いいんだな!?どうなってもしらねぇぞ!」


男はそう言い姫の首にナイフを刺した。

町中の空気は凍りついた。


「へへっ…ん?」


男は姫を見た。人を刺した感覚はあったがそれとは違う感覚もした。

血も出てない。姫はどんどんやつれていってるようにみえる。姫は屍のような姿に変わった。

姫だったものはエリスが姫に似せた屍だった。


「いやー闇魔法って怖いねーあの屍刺すと呪われるんだよー」


ロゼッタは笑顔で男に言い放つ。


「うわあああああああ!」


男は屍を放り投げ崩れ落ちるように倒れた。


男は後ろでスタンバイしていた警備に取り押さえられる。

エリスは警備に小声で何か言って四人の男を城の外れに連れていった。


「…おおおおおお!!!」


町人は歓声を上げた。


その後町はいつもの賑やかな雰囲気に戻り結婚式は終わった。


結婚式の片付けを手伝っていたら夜になっていた。二人は姫の部屋に来るよう言われ向かう。扉をノックすると「どうぞ」という声がした。

部屋の扉を開けると姫とエリスがいた。


「ありがとうねロゼッタさん、サーニャさん。あなた方のお陰でこの町は救われたわ。」


「えへへー」


ロゼッタは嬉しそうにしている。


「これをあげるわ、エリス」


「はい」


エリスは魔道書をサーニャに渡し少し姿勢を低くした。


「これからも頑張ってください。」


エリスはサーニャの耳元で囁いた。


「はい!」


サーニャは大きい声で返事をした。

ロゼッタはそれを見て嬉しそうだった。


「明日出発するのかしら?」


「そうだねーもっと堪能したいけどねー」


「そうですか…また来るのを楽しみにしていますわ!」


サーニャとロゼッタは宿を探しに向かおうとすると姫が言い放った。


「ちょっと!今日の宿はここですわよ?」


「え?」


「準備もしてありますわ!さあ!」


二人は城に泊まる事になった。

城のメイドが準備してくれた豪華な食事を食べ姫とロゼッタは疲れてすぐ寝てしまった。

サーニャはエリスに呼ばれ二人で星空を見ながら話した。


「エリスさんとロゼッタはどういう…」


「私達の関係ですか?ただの魔法使いの仲間です。少しめんどくさいですが…何も特別な事はありません。」


エリスはタバコを吸いながら言った。


「あの…そのタバコって…」


「これは魔力供給の為です。一部の魔法使いは色々な物で魔力供給出来ます。私はタバコなだけでロゼッタは甘い物ですね。この事は姫様に内緒でお願いしますね。」


エリスからはタバコの臭いはしなかった。おそらく姫の為に魔法で消しているのだろう。

そしてロゼッタがこの町のワッフルを気に入っていた意味が分かった。


するとエリスは魔法でタバコを消した。魔法で銀色のネックレスを出し、それをサーニャの首にかけた。


「このネックレスはあなたを幸福に導いてくれます。大事にしててください。」


「はい…」

サーニャは照れてエリスの顔を見る事が出来なかった。



出発の日

日の出の時間だったため姫はまだ寝ていた。

二人はエリスにさよならとだけ言い箒に跨り飛び立つ。

飛び立った後姫が起きエリスの元へ駆け寄った。


「もう行っちゃったの…?」


「はい」


「そうか…でもよかったねロゼッタが元気そうで」


「…はい」


エリスのその一言はどこか嬉しそうだった。

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