第6話 姫とメイド

姫と思われる人はきょとんとした目でこちらを見ている。動けない。逃げても大騒動になるし逃げなくても警備を呼ばれて終わり…何をしても無駄だ…と思った。


「あなた、盗賊?」


サーニャは首を横に振る。こうするしかなかった。


「じゃあ、あなたは誰?」


姫をずっと見ていると姫ははっとした顔をした。


「もしかしてあの本欲しいの?」


あの本?魔道書の事か?

サーニャは魔道書の事だと信じ頷いた。

姫はなるほど!という顔をした。姫は手をパンパンと叩いた。

姫の後ろに本を持ったメイドが突然現れた。

魔道書だ。メイドが持っている本が魔道書だとはっきりわかる。


「あなた、ちょっと来て」


姫はサーニャの事を手招きした。

サーニャは姫の前に立つ。


「この魔道書はあげるわ、ただし条件があるの」


「条件…?」


「そう、この結婚式を台無しにしてほしいの。」


サーニャは驚いた。メイドはこの事を知っているのか一切表情を変えない。


「夜中に聞いちゃったの。あの男、結婚に便乗して城にある財宝とかを盗むらしいのよ…そんな奴らのせいで町が終わるなんて嫌だわ!」


サーニャは話を聞いて考えた。魔道書は欲しいが自分一人で決断できる話ではない。手に入るが国を巻き込むからだ。


「いいよ、やってやろうじゃん」

サーニャの後ろから馴染みのある声が聞こえた。

ロゼッタがニコニコ何か企んでいるような顔で立っていた。


「そう、ならよろしく頼むわ。ロゼッタさん。」


「はいよー」


一言残すと姫は後ろにくるっと向き二人の前から去った。


「頑張ってるね、メイドさん」


「うるさい、あんたに言われたくない」


メイドは振り向きがてらロゼッタに小声で言い放つ。


「…メイドと知り合いなの?」


サーニャはロゼッタを見る。


「うーん古き良きパートナーかな?」


「そう……じゃなくて!いつからいたの!?」


「メイド出てきた後かな?条件話す前かな?」


「…はぁ…でもやるんでしょ?考えとかあるの?」


ロゼッタはチッチッチと人差し指を立てて振った。


「やるよー、ねーエリスー」


「エリス…?」


「はぁ…わかったわ…」


サーニャの後ろから声が聞こえ振り返る。さっきのメイドだ。だが服装はメイド服ではなく暗い感じだった。


「これがあるとあなたが来るのは分かっていたけど、来るとやっぱりいらつくわ…」


「これから何するか分かるよね♪」


「はぁ…なんとなくわかるわ……まあ、あの男には少し苛ついてたからいい機会だわ」


エリスは顔には出さないが色々あったらしい。

この後どうなってしまうのだろうか…

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る