第2話 新しい世界と魔導書の理由
なんだろう…とても暖かい光…
誰だろう…そこにいるの…
ねえ…あなた誰…?ねえ…
「…っは!」
「…またあの夢か」
サーニャはゆっくりと起きた。カーテンの隙間から外を見てみると空はまだ暗く時刻はおそらく深夜二時くらいだろう。
ガタッ
「!?」
サーニャは物音に気づいた。
机の方を見るとロゼッタが机の上にある古びた本をそろーりと手に取ろうとしていた。
読みたいから取るような感じではなく盗むかのように。
「何してるんですか」
「!?」
ロゼッタは寝ているものだと思っていたサーニャの声で驚き本を落としてしまう。
「あっ…あー…おはよー…」
「何言ってるんですかまだ夜中ですよ。しかも本を盗もうとするなんて…」
「あっ…えっーと…バレた?」
「バレバレですけど…気になったから聞きますけどその本とロゼッタさんってなんか関係あるんですか?タオル取りに行った後服乾いてたし」
「あーそれもバレてたか…まあバレるか…」
ロゼッタは隠しても無駄だと確信した。
「そうだよ関係あるよ。私は魔法使いだしこの本は魔道書だし。でもこの村でそれ言ったら殺されちゃうから隠してた。」
家に入る時とは打って変わって真剣な顔で話す。
「昼間の雨も私がやったし…まあその後のことは考えてなくて雨宿りさせてもらったけど…」
サーニャはさっきとはあまりにも違うロゼッタに困惑した。
「でもよく私の事魔法使いだと疑ったね」
ロゼッタはどこか嬉しそうに言った。
「いや〜私こんなんだから魔法使いだと思われないんだよね〜みんなのイメージと真逆だから〜」
サーニャもそのイメージは強く持っていたが流石にあんな事が起これば少しは疑うのも無理はない。
「だからさー…そうだ!」
「ねえ!私と一緒に旅しようよ!」
ロゼッタはサーニャをキラキラした目で満面の笑みで言った。
「えっ…」
「だってサーニャ魔法使いになりたいんでしょ?店番してる時も退屈そうにしてたし読んでる本も魔法使いの事が書かれてる本が大半だし!」
「まあ…そうですけど…」
「私サーニャに魔法教えてあげるし!」
ロゼッタはドヤ顔で話した。だがサーニャは悩んだ。魔法使いになりたいけどこの店はどうする、
魔法使いになれるのか、この先の期待より不安の方が強かった。
「…ごめんなさい…少し考えさせてください…」
「いいよ、何時間でも何日でも考えていいよ。」
ロゼッタは何かを察したかのようにサーニャの頭をポンポンと撫でソファの上に戻って寝た。
サーニャもベッドに戻り寝ようとしたがずっとさっきの事が頭によぎって眠れなかった。
翌日
昨日の嵐のような雨は嘘のように晴れていた。
そして夜中に悩んでいたのが嘘のようにぐっすり寝れて疲れがあまりない。
サーニャは外を見て昨日の事はやっぱり夢かと思いソファを見ると寝相悪く寝ているロゼッタがいた。
「はあ…やっぱり本当だったんだ…」
夢かと思った事が現実だと知り何もしていないが一気に疲れが襲いかかる。
朝の身支度を済ませ日々の日課である店番をした。
客もいつも通り来るわけもなくただ座っているが今日は暇つぶしで何度も読む本を読む気になれない。
夜中の話がずっと残っていた。
(はあ…私が魔法使いか…でもこの店どうしよう…ずっとここにいたらつまらない人生で終わるのかな…)
嫌々やってる店ではあるがいざ魔法使いになろうと言われると話は別だ。
そんな事を考えていたら時間は早く進み夕方になっていた。店じまいをしようとしたその時ふと小さい時の自分を思い出した。
幼少期のサーニャは魔法使いの伝説などが描かれている絵本を仕事で遠くの村から戻ってきた父にプレゼントしてもらい絵本を大変気に入った。
父に魔法使いになると言うと父は笑顔で「お前ならなれるさ」と言いサーニャの頭を撫でてくれた。
その数年後父は村の少し離れた森で魔法使いを助けたのがばれてしまい裁判にかけられた。それ以来魔法使いになるという考えはサーニャの心の奥底に眠ってしまった。
「私…なんで悩んでるんだろう…このタイミング逃したら一生ないじゃん!」
サーニャはロゼッタのところへ走った。
ロゼッタは寝ていた。
サーニャはロゼッタをたたき起こす。
ロゼッタは起き眠い目をこすりつつ寝ぼけながら言った。
「うえぇ〜どうしたのサーニャ〜?ふわあぁ…」
「ロゼッタ!私を魔法使いにして!」
サーニャの言葉を聞いて少しポカーンとした後ロゼッタは寝起きの顔をパンパンと二回叩き眠気を覚ました。
「いいよ!お姉さんがやってやろうじゃん!」
ロゼッタは嬉しそうに自分の服を魔法で変えた。
やっぱり魔法使いらしくない格好だった。
「出発は夜中ね!準備しといてね!」
真夜中
サーニャは持っていくものが少なかったので準備をすぐ済ませた。
サーニャは今まで住んでいた家に別れを告げロゼッタと森の中へ進む。
「よし、ここでいいや」
森を抜けると開けた草原に出た。
「サーニャ、はい」
ロゼッタはサーニャに手を差し伸べ掴むよう言う。
サーニャはロゼッタの手を掴んだ。
「しっかり掴まっててね」
ロゼッタがそう言うと小声で魔法を唱え二人は浮き始めた。
飛んでいる自分の姿に戸惑いつつ綺麗な星空と満月に見惚れていたサーニャにロゼッタは少し照れながら言った。
「あまり私が言う感じじゃないけどさ〜…」
「…ようこそっ、新しい世界へ!」
「ねえロゼッタ」
「ん?」
「私達どこに向かってるの?」
「家だよ〜」
「家?ロゼッタの?」
「うん、もう少しで着くよ」
浮遊していた体が少しずつ落ち始めているのがわかる。ロゼッタの指差す方を見ると小さな小屋がある。
二人は小屋の前で着地した。
「ここが私の家!さあっお入り〜!」
扉を思いっきり開けた拍子に風で舞い上がった大量の埃が襲いかかってくる。
「ゲホッゲホッゲホッ…なにこれ…」
扉が開くのと同時に魔法でほわっと明かりがつき部屋の全貌が見えた。
部屋は本や服、魔法道具がが乱雑に置かれており何がどこにあるのか分からない状態だ。
ロゼッタのだらしなさがはっきりと現れる光景だ。
「いや〜魔道書これ探してたら結構な年数帰れなくてね〜元から埃っぽいけどさ」
サーニャはそれを聞いて出発の時消えかけていた不安が増した。
ロゼッタは自分のベッドで寝た。そしてサーニャも寝る場所が無かったので仕方なく一緒に寝る事にした。
なんだろう…またあの光だ…
そこにいるのは誰…?ねえ…?
「…っは!」
サーニャはいつも見る夢で目を覚ました。
「…ゲホッゲホッゲホッ」
サーニャは数分考える。
無数に物が散乱し埃だらけの景色を見て。
「…あああああああああああっ!」
「!?」
サーニャは思わず叫んだ。
その声でロゼッタは驚き飛び起きる。
物が散乱しているのを見るとイラッとくるのがサーニャの性格でありロゼッタの部屋の光景はイラつきを一気に通り越した。
「何!?どうしたのサーニャ!?」
「何じゃないでしょ!よくこんな部屋で生きていけるね!ゴキブリかなんか!?」
「おぅ…サーニャって意外と酷いこと言う…」
「いいから掃除!ほら起きる!」
「サーニャママだぁー」
「うっさい!」
ロゼッタを起こし部屋の掃除を進めた。
半分はロゼッタの魔法で済みすぐ終わった。
床がうっすらとしか見えないぐらいにいっぱいだった本や魔法道具は片付けられ埃っぽさは無くなっていた。
掃除を終えた後二人は掃除で埃まみれになった身体を風呂場で流し着ていた服を魔法で洗濯した。
支度を済ませて朝食を摂ることにした。
「すっきりした部屋で食べるのい〜ね〜♪」
「これが普通なんだけど…なんで魔法使えるのに掃除とかそのままにしてたの?」
「もー!みんなそう言うー!魔法だって体力使うんだよ!
「そうなんだ…ところでなんで魔道書集めてるの?」
「え?かっこいいじゃん」ドャァ
「あー…」
サーニャは呆れた。
「嘘だって、本当は12冊全て集めるととてもすごい魔法が手に入るっていう噂があってね…」
「それも嘘…?」
「本当!」
「じゃあ次に行く場所は?」
「んー?北の方の町に行くよー魔道書の反応あるみたいだし」
ロゼッタは古びた地図を広げた。
そして地図に描かれている大きな円を指差す。
「ほら、このおっきな輪っかのどこかにあるの。」
「へー」
「早めに取りに行かないと面倒な事になるんだけどね〜」
「面倒な事?」
「うん、魔道書これってね誰かの手に渡って数時間経つと目印が消えてどこにあるのか分からなくなるんだ〜でも手に取った人が売ったりどこかに置いたり捨てたりするとまた目印が復活するの」
「じゃあ運悪く他の魔法使いに渡れば…」
「うん…」
「あ…」
サーニャは揃えた人が普通の魔法使いならいいがもしその人が悪人だとしたらどうなるかなんとなく察しがついた。
サーニャは地図を見て気付く。
「ねえ…地図の円少しずつ動いてない?」
「え?」
ロゼッタは古びた地図を見る。
地図に描かれている円は少しずつ北の方へ進んでいる。
二人の間に緊張が走る。
数秒進んだ後円は止まった。
「はあー…よかったー…」
二人は安堵した。
「食べ終わったら行こうか!」
ロゼッタは言った。
サーニャは頷いた。
朝食を済ませ、北へ向かう準備も済ませ二人は外へ出た。
サーニャはバッグの中に着替えなどを入れそれを地面に置きロゼッタは必要な道具とサーニャのバッグを魔法で小さなポーチに全て入れた。
ロゼッタはポーチをポケットに入れ跨っても痛くないように細工されてる箒の上に跨った。
サーニャもその後跨る。
「なんか魔法使いみたい…」
「そりゃあそうじゃん魔法使いだもん。でもしっかり掴まってないと落とされるよー」
サーニャはロゼッタに強く抱き着き振り落とされないようにした。
「よし、それじゃあしゅっぱーつ!」
箒はふわっと浮いた後スピードを上げた。
強く抱きついても振り落とされそうなスピードが出ていた為より強く抱きつく。
怖くて目を瞑っていた。
少しゆっくりになったのに気付き目を開くと森の上を飛んでいた。
「もうそろそろ着くよー!」
振り落とされる恐怖に耐えていてあっという間な気もするが飛び始めてから1時間近く経っていた。
一つ目の町に到着しようとしていた。
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