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 彼女から逃げるべく引っ越しを決意した僕は会社にすら引っ越しの事を言わず、少しずつ荷物の整理をしていた。家具は持って行くのは大変だが、捨ててしまうとそれもそれでバレてしまう。家具はどうしようかと色々考えたが結局ゆっくりと新しい家に持って行くことにした。まずは必要最低限のものだけ運んで追々過ごしやすい空間作りをしよう。自分の中でいつどのタイミングで荷物を持って出て行くか迷う部分があった。日中だとどこから見張られているかすら分かっていないので深夜を決行する時間とした。日にちだが仕事への影響を低くし尚且つ彼女にバレにくいのは週末ではないかと推測できる。では週末の深夜を決行日にしよう、そう僕は決めて来る金曜日の深夜を待った。

 Xデーである金曜日は朝から彼女にあった。さすがに家の目の前とまでは行かないが、相当家から近い位置に待ち構えていた。ストーカーの執念とやらを感じさせる待ち構え方だった。でも僕の中には今日でこのストーカーとはお別れだという嬉しい気持ちがあったので彼女と会ったことに対しては何とも思っていなかったのである。仕事をしている中でも引っ越しに対して心配ではなく弾んだ気持ちだったので仕事がいつも以上に上手くできて上司からのお褒めの言葉すらいただけた。家路は心が弾んでいて身体をも弾んでいた。これからの人生が安泰だという喜びが身体全身から溢れ出ていたのである。家に帰ってからも日にちが変わるのを心の底から楽しみに過ごした。時計の時報が深夜零時を告げると僕は泥棒のような格好をして必要最低限の荷物が入った風呂敷を手にして玄関から出た。端から見たらどう見ても泥棒としかとらえられない人が出てきたらさすがに僕だと彼女は思わないという念には念をという精神で予備の準備をしたのだ。僕は泥棒になったようなつもりで引っ越す先のアパートに向かった。ほんの数十分の間の移動で息が上がってしまったが無事に到着した。と思われたが、視界に入ってきたのは彼女だった。なぜ彼女がいるのかと完璧に困惑したが彼女の方から

「何でそんな格好してるの?普段の格好の方が私は好きなんだけどなぁ。でもそれもそれで良いと思うよ。どうせ泥棒なんてしてないんだし。早く家帰ろう。こっちよりいつものところの方が会社には近いしね。」

と声をかけられた。まず何でここにいるかすら分からないのだが、彼女に言われるままに来た道を引き返していってしまった。

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