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 警察沙汰にしなくて済むねという彼女の言葉が僕の頭に響いていた。これで警察に助けを求めることが難しくなってしまった。それでもなお警察に助けを求める機会を疑っていた。また彼女が現れないかと警戒心を更に敏感にした。

 今日は会社の出張で家から見ると会社の方向と出張先の方向がちょうど真反対に当たるのでたとえ彼女がどこかで待ち伏せして追いかけてきてもそこには僕が現れなくて困惑するだろう。今日は気兼ねなく仕事が出来るというわけだ。久しぶりの自由さを感じて心が弾んでいた。いつも使っていない駅に到着した時にその弾んでいる雰囲気を打破することが起こった。そう、彼女に声を掛けられたのだ。いつも使っていない駅なので行き方もいつもと異なり道すら違うのである。ということは家の目の前から着いてきたか、会社にわざわざ聞いて行く場所からの逆算で来たかの二通りしか考えられない。可能性は高いが、家から着いてきたということを信じることは出来なかった。幾分かの勇気を持ってして彼女に僕は尋ねた。

「何故、君がここにいるんだい。ここはいつも僕が使うことがない駅でプライベートですら使ったことがないぞ。」

「それはよく知ってるよ。だって毎日あなたを見守っているのだもの。今日、何故ここにいるかはあなたがここに来たからよ。ただそれだけ。」

僕は彼女の言葉に対して返すべき言葉が見当たらなかった。どちらかといえば言葉を返せるほど彼女の言ったことを素早く理解できなかったということであろう。あなたがここに来たから、というと言うことは会社に電話して得た情報ではないということである。つまり家から着いてきたないしはその周辺からということになる。僕は彼女に家を教えたという記憶がないために困惑しているのである。つまり家を特定されてしまったのだ。休日をゆっくりと過ごすために必要最低限しか家を教えることはないので会社以外で僕の家を知っている唯一の人物が彼女ということになる。彼女が家を知ると言うことは例え上手く警察の方に事を持って行ったとしても再びストーカーを開始される恐れもあるし、会社を変えたとしても特定するのが容易であるのだ。これを根本から解決する方法は急に家を変えるという手しかない。引っ越しも視野に入れて考えなくてはならない。

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