第22話

 どう、壊そうかを考えて、武器などを思い浮かべたが、どうもしっくりこない。野菜炒めを食べきって、スマホで盗聴器の位置と音を確認した。位置も動いていないし、音もない。つまり、折原さんは寝ているのだろう。ここで、あることに気づいた。しっくりこなかったのは、「武器」ではなく、「壊す」という発想ではないのだろうか。防犯カメラが作動しなければよいのであって、それも店側がそう騒いでいれば、トキは信じ込むだろう。ということは、店側がカメラを使えないようにすればよいのだ。回線を盗んで、映像を乗っ取るのが早いだろう。もう夜の9時だが、腰は全く重くなかった。僕は駅にまた向かった。

 電車に揺られ、というかコンビニに行くためだけに自分は電車に乗った。この事実に笑いそうになりながら、コンビニに着いた。適当にタピオカミルクティーを買って、駐車場で飲む。この擬態をしつつパソコンを起こす。パインがそこまで大手ではないからか、費用が乏しいからなのかそのあたりの整備は全くと言ってよいほど、進んでおらず、回線には一瞬で入れた。防犯カメラの映像も同じくだった。あとは、ボタン一つで、乗っ取りに変えられる。それにここの、回線を家からでもいじれるように頑張ったから、あとは家で、11時までの営業が終わり次第、回線を乗っ取りにすればよいだろう。店が開くのは6時だから、トキがどれだけ早起きかは知らないが、先に店員が気付いて大騒ぎするだろう。ここまでうまく言っていたので、タピオカ美味しいな、なんていう、感想を抱いて電車に乗った。

 家に帰って、10時前。何かし忘れていることはないか、と考えた。明後日が実行の日なのだから、準備は明日しかない。当日、折原さんはレンタカーを借りた後、車でコンビニに行くはずだ。そこで、折原さんがフセキ怪人が撮影用に用意した睡眠薬入り商品を買う。それに気づかず、曼殊浜に行った折原さんは睡眠薬、自動車がらみで死ぬ。自分の立てたシナリオの後半の驚きの甘さに驚き、僕は考えた。自動車、死ぬ、危ない、危険、こんなワードを思い浮かべるが、何も浮かばない。疲れたし、11時まではまだ時間があるから、ネットニュースでも見る。あまり興味をそそる記事がないが、とりあえず、ニュースを読む。長寿の秘訣とは?というありきたりな記事に間違って飛んでしまった。秘訣は自分のことは自分でやる、と書いてあった。ああ、そうかい、と思いつつ、ページを去ろうとする。去った後、危ねぇ、と頭の中で響いた。よくわからず、幻聴まで聞こえてきたか、とさっさとあしらおうとしたが、それはやけにリアルな音声だった。それは、駐車場の管理人と思しき、おじいさんの声だった。あの危ない駐車場を使えないか。そう思い、地図を調べているころ、11時になった。回線を乗っ取る設定に切り替えると、僕はアウトドアだった一日に疲れたのか眠ってしまった。


 起きた。8月4日だ。なんだったろうか。危ねぇ。と幻聴が聞こえ、駐車場の管理人の声だった。その前に、今何時だ。7:32。とりあえず、何をするのだったか。たしか、昨日は回線を切り替えて、寝落ちしたのだった。ということは、トキがフレンチトーストを買いに、パインに行ったかどうかを確認する手はずになっているのだった。どうやって、確認しよう。眠い頭はあまり動いてくれないが、回線を乗っ取ったままだった、パソコンが僕に教えてくれた。この乗っ取った回線で流れて来る防犯カメラの映像を見ればよいのだ。

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