第5話
二人ともタイプの違う好青年だ。前田が、この土曜、家の近くの小学校が賑やかだった、と言っていた。たしか、前田の住むアパートは4駅先のところだったはずだ。何かと思ってのぞいてみると、運動会が秋から時期が変わっていたという。梅雨の時期なのにね、という言葉に、晴れていてよかったねとよく知らない小学生たちに言うようなことを言った。いつもなら、研究室にでるが、今はちょうど忙しくないし、やることもある、大学の図書館でパソコンを見よう。その前に食堂で昼ご飯を食べよう。サイトに動きがあるかもしれない。いや、昨日の今日だから流石にないか。そう思いながら400円のカレーライスを食べた。僕の大学は割と歴史もあり、図書館も大きい。そんな図書館の厳粛な雰囲気を、期待していなかったからか、素っ頓狂な声で壊すところだった。1件、依頼が届いていた。
「友達の大雅くんがお誕生日のばんごはんはサバのみそにが良いのに、お母さんが毎年ハンバーグにするらしいです。言っても聞いてくれないそうです。大雅くんのお母さんに今日のばんごはんはサバのみそにという運命なんだわと思わせてあげてください。ちなみに大雅くんの誕生日は6月27日です。」と書いてあった。日時は今日の14:24だった。その後ろに書いてある情報を見ると、依頼者・相手ともに小学4年生であることが分かった。ひらがなが多かった文章にも合点が行くし、昼の2時に届いたのもうなずける。サイトに一応と思ってふりがなを振っていて良かったと思う。運命を演出します、のサイトは「運命 つくる 依頼」とか「運命 演出 してもらう」とかで検索しないと出てこないし、何より小4がネットで検索しているというのに驚きだ。
だが、再び図書館で大きな声を出しそうになった。住所の欄がこの近くなのだ。それに、所属している団体が聞き覚えのある小学校だと思って調べると、前田が運動会があったと言っていた小学校ではないか。声こそ出さなかったものの横の席の女子にちらっと見られた。とりあえず、どうするか考えよう。前田にも協力してもらうかもしれないから、連絡をと思いLINEする。また運命を演出しますのサイトに戻ると、もう1件届いていた。どうやらLINEを開いていた時に来ていたらしい。時刻は15:13だ。
「僕は男子バスケ部で彼女の未奈は女子バレー部です。今年は受験生になって、恋愛ばかりもしていられないのですが、それでも遊びたいのです。ですが、なかなか未奈と休みが合いません。まず、男バスと女バレは同じ体育館を使うので、基本的に練習の日時がずれます。今日は僕はオフですが、未奈は案の定部活です。さらに、今年から女バレの顧問が変わってオフが少なくなりました。それで、お願いなのですが、去年は未奈の誕生日に男バスの試合があって遊びに行けませんでした。今年こそはと思っていたら、その顧問が夏の大会に向けて練習試合を組もうとしているそうです。未奈曰く弱小校らしく、練習にすらならないそうです。今年の誕生日こそは二人で遊んで、高校受験へ良いスタートを切りたいです。未奈の誕生日は7月1日です。依頼は女バレの顧問に練習試合をやめる、もしくは、その日は午前だけの練習にするなどさせる運命を感じさせてほしい、ということです。お願いします。」読み終わった。この後にいくつか情報が書き込んであった。とりあえず、一つ。誕生日被りしてる。中学生も見たのか、このサイト。学生以外の利用もあると良いのだけれど。前田と前田の家で会う時間が迫ってきているので、向かうことにする。どうせもう一度大学に戻ってくるから、地下鉄で行こう。確か4駅先だったはず。前田には今から行くと連絡を入れた。
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