第51話 これからのハッピーエンド
もう誰かと誰かをくっつけさせようとしたりしない。
オレはそう心に決めた。
その筈なのに、だ……
「おっとクリス、危ないぞ」
「なんだよ支えられなくたって転んだりなんか……ごほん、助かりましたジェラルド様」
「ロビン、砂糖入れなくても飲める?」
「うん、大丈夫だよルイ」
ど う し て こ う な っ た ?
何と言うか……全体的に距離感が近い。
全体的にイチャイチャしている。
全体的に、互いを見つめる瞳が熱い。
かくいうオレ自身も実はテーブルの下でラファエルと手を繋いでいるから人のことは言えないが……。
今日は久々に皆でお茶会を開いたのだ。
そしたらもうこの有様だった。
いつの間にそんなに仲良くなっていたんだ、お前ら。
「ジェラルド、人前ではあまり……」
「どうしてだ?」
「あんたが近くにいると気が緩むからだよ……!」
ジェラルドとクリスがこそこそ話をしているが、丸聞こえだぞ。
それにしても至近距離で会話を交わす二人の表情と来たら……
同じベッドで何度か朝を迎えているであろうことがありありと読み取れる。
何だ、オレの後押しがそんなに効いたのか? 展開早くないか!?
クリスの奴、ついこの前までジェラルドの好意が不可解だとか言っていたのに。
「ロビン、珈琲って飲んだことある?」
「ううん。それってどんなの?」
「真っ黒の飲み物でね……」
ロビンとルイに関しては、この間図書室で楽しそうに会話しているのを盗み聞いてしまった。
いや、故意に盗み聞きした訳ではない。ただルイが見たこともないような朗らかな笑顔をしていたので、驚いて思わず聞き耳を立ててしまったのだ。
そしたら、なんとルイは小説を書いているらしいのだ。
そんな裏設定ゲームでも出てこなかったぞ!?
いや……裏設定ではなくて、彼らが生きた人間だからかもしれない。
ゲームの中ではそんな設定がなかったからそんなことはしていなかった。
だが、この世界のルイは自分で小説を書くことに興味を持って書いてみたのかもしれない。生きた人間なのだから、新しい趣味を持つことぐらいあるだろう。
ロビンとルイの二人も、ゲームには無かった独自の関係をこれから築いていくのだろう。なにせ彼らは生きているのだから。
ともかく。
これでオレの身に理不尽な死は、少なくとも彼らの中に誰かに殺されるようなことはないだろうとオレは心の底から安心できたのだった。
それは彼らがカップルになったからではなく……
「お兄様、幸せそうな顔してる」
「うん、そうか?」
この世界にオレの居場所があるのだと、信じることが出来たからだ。
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