第5話 かみしゃまの子がここにくるの?
ディノワール家は代々この国の宮廷魔術師を勤めており、貴族の一員だ。
ラファエルはとある男爵家の末っ子で、ディノワール家の一員になって将来は宮廷魔術師になれるならばと喜んで養子に出されたらしい。
爵位としては最低位の男爵家からわざわざ貰ってきたのだから、ラファエルの魔力の素質は相当なものなのだろう。やっぱり、何もかもがオレとは違う。
何が言いたいかというと、ラファエルも貴族出身ではあるということを言いたかったのだ。
それがどうして……
「にーちゃ……っ」
オレの服の裾をぎゅっと掴んでオレの後ろをついて回ってくるのだろうか?
「お兄様、だろ。ちゃんと呼びなさい」
「んにーちゃま」
後ろを向いてラファエルを優しく窘めるのだが、舌足らずな彼には「お兄様」はまだ難しいらしい。
ラファエルは片手でオレの服の裾を掴み、もう片方の手の親指を口に咥えている。これが貴族の子息が見せるべき姿だろうか。
まあまだ3歳だからな、仕方ない。
彼のご機嫌取りをすると決めたのだから、オレが彼を甘やかせなければ。
別にめちゃくちゃ可愛いからそのままにしておこうなんて思っていない。
ラファエルはちゃんと男児用の服を着て、長い黒髪をメイドさんに一纏めに結ってもらっている。だがあまりにも顔立ちが整っているので、油断するとラファエルが美少女に見えてしまうのだ。
ラファエルが来てからというものオレの部屋は二人部屋になってしまった。
ラファエルが四六時中引っ付いてくるのを息苦しく思って部屋の外に出たのだが、彼も付いて来てしまったのだ。
五歳児と三歳児の二人だけで歩き回ってていいのだろうかとも思うが、まあ王城の中なのだからお付きのメイドがいなくたって大丈夫だろう。
それにしてもラファエルがこんなにマルセルに引っ付いてくるなんて、ゲーム中ではそんな描写は無かったぞ。幼少の頃限定なのだろうか。ラファエルが大きくなってしまったらこうしてオレを頼ってこなくなるのか……ほんの少しだけ残念だ。
城の中を二人でとてとてと歩き、オレ達は中庭に辿り着いた。
天まで届かんばかりに高く
オレ達のようなチビどもにはいくら見上げてもてっぺんが見えない。
「ほらラファエル、あれが
指さして教えると、ラファエルも樹のてっぺんを見上げようとし、後ろにひっくり返りそうになった。それを慌てて支えてやる。
「みやどりしゃま?」
「ああ。この間
ラファエルに
「そしてその子がこの世に生まれたら、王城にお呼びするんだ。それが例え平民の子でも、魂は神様の子供だからね。神様の子供には王城の中で一生幸せに過ごしてもらう。人間の世は良い所なんだよって知ってもらう為にね」
「かみしゃまの子がここにくるの?」
「うん、そうだ」
賢い弟の頭を撫でて肯定する。
そう、そしてこの後に王城に来るこの神様の子供、平民御子が問題なのだ。
何故ならこの平民御子こそが――――『みこおう』の主人公だからだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます