ソード・オラトリア ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか外伝

はいダンまち外伝です。

こちらは本編主人公ベル・クラネルの憧れる冒険者。

レベル5という上級にして第一級冒険者【剣姫】アイズ・ヴァレンシュタインと、同じファミリアに所属するレベル3冒険者【千の妖精(サウザンド・エルフ)】レフィーヤ・ウィリディスを主軸に置いた話です。


実のところ、はっきり言ってあまり評価の芳しくない作品でもあります。

が、それは主にアニメでの話と言う事を今回は語らせていただきます。


前回紹介したダンまち本編と並行して、ベルのいない裏ではどんなことがあったのか。

あるいはベルがこんなことをしている時ヒロインのアイズや、その後輩のレフィーヤは何をしていたのかという作品ですが原作や漫画版ではそれ以上の事が描かれています。


本編では冒険者の華々しさと、主人公の成長、神々の俗な部分と下界の子供たちの感性の乖離を中心に描かれています。

それに対して外伝では冒険者の泥臭さ、アイズ程の上級冒険者でも行き詰まりや苦難に見舞われる、偉業一つ成し遂げる事の大変さ、冒険者の儚さ等厳しい現実を描いています。


が、アニメでは冒険者の泥臭さや儚さがすべてカットされています。

例えばアイズがとあるクエストを受けた時、同行した他のファミリアでは死者が多数出ていますがそれらが丸々カット。

苦労はしたけどなんやかんやで報酬一杯もらえて美味しいクエストだったと言わんばかりの描き方をされていました。

その途中でレフィーヤをはじめとする3人組がアイズを追いかけるシーンでは足と仲間を失った冒険者が一級ファミリアであるレフィーヤ達を罵倒する場面。

それに対してアイズの仲間であるレベル5冒険者の【凶狼】ベートが「仲間の命も、自分の身体も全て賭けて冒険者やってるんだろうが」と言い返すシーン。

これらすべてがアニメでは描かれなかったのです。


結果的に本編では絞って描いていた「焦点」が、外伝ではズレてしまっていたという感想を抱きました。

またこれらのカットに合わせて、本編ではうまい事改変していたのに対して外伝は改悪とも言うべき描き方をされてしまっています。

そのしわ寄せはもう一人の外伝主人公とも呼ぶべき、レフィーヤにのしかかってしまっていました。

この改変は1話から行われており、なおかつそれが大々的だったこと。

そして本来ならば「人形」と揶揄されるアイズが、実はこんなに表情豊かなんだとしている外伝の魅力をいまいち出し切れず、本編そのままのアイズを外伝で動かしたと見受けられます。


この辺りを知りたいという人は漫画版を一読することをお勧めします。

漫画版ではアイズという一人の冒険者の苦悩と、可愛らしさ、そして胸の内に抱える黒い炎と、冒険者と言う職業についてが鮮明に、なおかつわかりやすく描かれています。


さて、もう一つアニメでの改悪とも言うべきポイントがあります。

これはネタバレになってしまうのでしばらく行を開けさせていただきます。





























アイズは階層主とも呼ばれる、我々で言う所のボスをほぼ単独撃破してレベルを一つ上げます。

その描き方が気に食わない。

原作並びに漫画版では如何に苦労して、身の毛もよだつほどの苦労苦節を乗り越えて、まさしく偉業として称賛されるべきともいえる迫力のある戦闘が繰り広げられていました。

しかし、アニメ版ではその辺りの苦難がバッサリカットされていたため割とあっさりボスを倒してしまったようにも見えるのです。

そのため「え、これで偉業扱いなの?」と言った雰囲気が漂う事になってしまいました。

合わせて同じシーンではアイズが自力で「これはまずいから避けよう」と思っていた攻撃を、同行していた仲間に避けろと言われて初めてマズイと思うような描き方をされていたのもマイナスです。


そして何より最終話。

話のクライマックスであり、一番盛り上がらなければいけない場面。

その描写が、明らかに漫画版よりも劣っている。

死力を尽くして、すべてをゆだねて倒れていく仲間たち。

その先にある敵を打倒すべく、そして背後で倒れた仲間たちの命を預かり前へ進む。

その迫力と描写力が、アニメでは生かされていなかった。

これが残念でならないというのが個人的な感想です。


以上を踏まえて、総評に移りたいと思います。


アニメとして見るならばちぐはぐ。

しかし駄作と呼ぶほどではない。

けれど荒が目立ち、ここはもっとがっつり描いても良かったんじゃないかなと思う。

時間配分を間違えてしまい、焦点を当てるべき場所を間違えてしまった作品。

結果的に全体のバランスが崩れてしまい、わずかな荒が大きな穴になってしまった。


それらを加味して評価は2点。

足りない、圧倒的に足りない、なのに間違えてしまった。

そんな作品だと評価します。


総評:☆☆

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