ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか
はい、長らくお待たせしました。
1クール近く空けての更新です。
夏アニメに向けてと、春アニメの感想をここらで進めておこうと思いました。
てなわけで、まず夏に放送されるダンまち2期に向けてこちらから。
原作:大森藤ノ
イラスト:ヤスダスズヒト
(敬称略)
人間の住む下界に、娯楽を求めて舞い降りた神々がモンスターをダンジョンに封じ込め、人々(子供たち)に恩恵【ステイタス】を与えたという世界観。
ヤスダスズヒト先生と言えばデュラララや夜桜四重奏といった、人間と人外の共存が多い印象を持っている私ですが、この作品も例にもれず人と人外の共存が描かれています。
例えば獣人、エルフ、ドワーフといったファンタジー代表種族。
そこにダンジョンに潜ることはもちろん、神の力を使う事もタブーとして多くの枷を抱えてでも下界での暮らしを満喫しようとする神々。
そのやりとりが原作では事細かに描かれていて、漫画版でもそれが余すことなく魅力的に引き出されていた作品です。
ではアニメはどうか……と言う前に少しあらすじを。
主人公ベル・クラネルはある日レベル2最強格とも呼ばれるミノタウロスに襲われた。
それはダンジョンの中層と呼ばれる階層にいるはずのモンスターだったが、とある一派(以後ファミリア)の不手際でベル達初心者のいる上層まで逃げてきたモンスターだった。
間一髪のところでダンジョンを中心に発展した街(以後オラリオ)でもトップクラスの一流冒険者、レベル5のアイズ・ヴァレンシュタインに救われる。
この出会いからベルは一つの憧れと、恋心を芽生えさせた。
それは神々の恩恵であるステイタスに、一つのスキルを発現させる事になる。
その名は憧憬一途【リアリス・フレーゼ】、特定の相手を想う心に比例して成長促進というレア、あるいはユニークスキル。
ここから始まるリトルルーキーの出会いと、冒険と、波乱の日々こそがダンまちである。
と、まぁ私なりに頑張ってまとめてみました。
ではようやくですがアニメの感想に移らせていただきます。
まずこのアニメ、結構原作での描写がカットされています。
以前お話しした「アニメは起承転結で描くパターンの他に、序破急で描く1巻3話方式」が使われているためか、尺の分配が少し詰め込んだ形でした。
そのためカットに合わせてつじつま合わせ、と言えば聞こえは悪いかもしれませんが改変も含まれています。
導入は簡潔に、最終回は濃厚にと言った作りですね。
さて、ではその改変は果たして良かったのか悪かったのかで言えば……。
私は非常に良かったとお答えしましょう。
こう言ってしまうとなんですが、原作では無駄な描写がありません。
例えばアニメではカットされてしまったシーンの一例。
この世界で最高レベルは原作15巻まででもレベル7、初心者はみんなレベル1スタートで、そこから神々も認める偉業を成し遂げたとみなされると経験値を得ることができます。
基本的にはこれをコツコツとためてレベルアップを狙い、そしてダンジョンの奥深くへと潜り莫大な金銭を得る、その金銭を元に再びダンジョンへ潜る、あるいは神様の眷属ことファミリアの存続の為に鍛冶や調合で必要な物を揃える等々ありますが、上級冒険者と呼ばれる存在。
あらすじで紹介したアイズ・ヴァレンシュタインのような存在、レベル5に至るのは途方もない時間と偉業の数々を経験しなければいけないわけです。
つまりは命懸けの冒険を何度も潜り抜けるという事で、当然レベルアップを考えるならば掛け金は自分の命。
死線を潜り抜ければ待っているのは名誉と、レベルアップによる戦闘力の増強、そして神から名付けられる二つ名。
はい、この二つ名ですが……ちょっと代表的な物をいくつかあげましょう。
まずアイズ・ヴァレンシュタインは【剣姫】、かっこいいうえにわかりやすい二つ名ですね。
まさしく戦うヒロインといった異名です。
その上司にあたるフィン(レベル6)の二つ名は【勇者】、勇気を武器に戦う、種族的には最も劣っているにもかかわらずレベルを6まで上げた者にふさわしい異名ですね。
えー、はい……では続けて命と言うキャラクターなんですが【絶†影】。
「ん?」と思ったあなた、その感性は正しい物です。
実は二つ名をつけるとき神々は遊び半分で痛々しい名前を付けているのです。
遊び半分と言うか、遊び全部です。
剣姫や勇者はファミリアの勢力図で最上級に属しているため、妙な名前が付けられなかったというパワーバランスがあるのです。
そのパワーバランスの最下層にいたファミリアの一員、命は痛々しい異名をいただき……感動しました。
下界の子供たちは神々が「いてぇ!」と言って爆笑するような名前を、「なんてすばらしい名前……俺達にはない感性だ……流石神だぜ」と受け取っているのです。
個人的に原作のここ好きシーンを長々と書かせてもらった次第ですが、このくだりは基本的にほぼほぼカットされました。
理由はおそらくですが、この描写を入れても入れなくても作品の進行には影響がないという事でしょう。
つまり焦点を「神と下界の子供たちとダンジョン、その中で突出したベル・クラネル」というものから「ベル・クラネルとその周囲」という物へ絞った結果ではないかと考察します。
個人的には見たかったというのが本音ですが、4巻までをアニメとして見る事ができたためこのカットなどもやむなし。
むしろ収めるためならばよくぞやってくれたという感じです。
さて、では各話の感想ですがこれはそこそこ省略させていただく方針で……。
1~3話は主人公ベル・クラネルとその主神であるヘスティア、発現した憧憬一途と言うスキルのデタラメ加減についてを中心としています。
この作品の魅力的な部分は主人公が戦うのは常に格上、どうやって勝つのか、これ本当に生き残れるのかといったドキドキが怒涛の如く押し寄せてくるのです。
ベルの成長のデタラメさは他の冒険者のステイタスが出てこないのでいまいち分りにくいかもしれませんが、心身ともに強くなっていく彼に火をつけた1話、その一方でオラリオでの日常を描いた2話、日常が崩れダンジョンで行われるような命のやり取りが描かれる3話と緩急が素晴らしい出来栄えです。
続けての4~6話。
ダンジョンに潜るにあたってサポーターと言う存在がいます。
冒険者になるには才能が足りない、そんな人々は荷物持ちやドロップアイテムなどの回収作業者として冒険者に着いてダンジョンに潜るのです。
そんな【弱者】の存在に触れた4話から、【弱者】の葛藤と純真無垢なベルのやり取りを描いた5話6話。
1~3話と比べて生々しい話が続くのですが、それをストンと受け入れられて次はどうなるとワクワクしていました。
そしてここ重要7~9話。
重要すぎて何も語れないため、たった一つ名言を。
「僕は今日、初めて冒険をする」
これがベル・クラネルの成長の物語であると痛感させてくれる話です。
そして4巻にあたる9~13話。
7~9話を語れないため、こちらも多くは語ることができないのですが……。
9話で装備を新調しようとして出会った鍛冶師のヴェルフと、4話で初登場して6話で正式に仲間になったサポーターのリリを連れてのダンジョン探索。
そして日常の後に待ち受けるトラブル。
ダンジョンの中にはモンスターが自然発生しない(ダンジョン内では壁からモンスターが湧いて出てくる)セーフティゾーンがあり、そこを目指す事にした一行。
妬み、やっかみ、嫉みなどから他の冒険者から目の敵にされるベル。
それを跳ね返すほどの活躍がこの4話のうちに凝縮されています。
うむ、やはり好きな作品は語るとどこまでも語ってしまいそうで、しかしネタバレを避けようとするともどかしくなる。
このもやもやがたまらないですね。
これ以上書いているとうっかりを発動させそうなので総評に入らせていただきます。
えー、まず映像作品として原作をどう落とし込んだかと言う点についてですがこれは満点です。
もちろん個人的評価なので「いやちげーだろ、そこカットしてちゃダメだろ」と言う意見もあるかもしれませんが私は十分楽しめたので満点です!
で、初見の方に優しいというのも考慮すべきですね。
話の進行がとてもわかりやすいので、ファンタジー入門にもちょうどいいかもしれません。
世界観もストンと落ちるので、ネット小説系初心者にもおすすめです。
レベルやステイタスの表現も慣れ親しんだ物なのでわかりやすく、更に神々が割と俗っぽい存在で、言うなれば我々視聴者に近しい存在であるというのも面白いところ。
痛々しい二つ名とかそういうの含めて喜んでいる遠い世界の住民と、それをあざ笑う我々と言う構図も見ていて楽しい物です(が、こちらはアニメではあまり描かれていませんのでそれも楽しみたいという人は原作か漫画版を)。
ということであと一歩欲しいけど時間配分的には仕方ないよねと言う意味を込めて4点です。
十分に満足できるけど十二分とは言えない。
90点で100点には至らないけど上々の作品でした。
総評:☆☆☆☆
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