第2話 騎士子とプリ子、冒険の終わり
「村ではお父さんやお母さんを説得するために意気込んでたけど、本当は一人なんて不安だったの。だから、プリ子がついてきてくれて本当に嬉しかった。頼もしかったの。本当よ!」
「騎士子ちゃん……」
「小さいときからたくさん面倒かけてきちゃったし、これからもかけちゃうと思うけど……その、よ、よかったらこれからもよろしくね! あたし、騎士としてこの剣でプリ子を守るから! 絶対に! 約束よ!」
最後の方は早口になりながら、はにかんだ笑みを浮かべる騎士子。
そんな騎士子を、プリ子が強く抱きしめた。
街中での突然の抱擁に、周囲からは物珍しげな視線が集まる。
「へっ? ちょ、ちょっとプリ子?」
「騎士子ちゃんは、すごく頑張ったよ。誰よりも頑張ったよ。だから、その結果だよ。本当におめでとう、騎士子ちゃん。これで、一緒に魔王退治にいけるね。私たちの夢が始まるね」
「プリ子……」
抱きしめられている騎士子は、小さく震えるプリ子を見て苦笑する。
「……もう、どうしてプリ子の方が泣くのよ? ほら、みんな見てるからいこ。街中で恥ずかしいよ」
「う、うん。ごめんね騎士子ちゃん」
そっと身を離すプリ子。その頬に流れる涙を、騎士子は優しくぬぐい取る。
「泣いてるヒマなんてないよ。あたしたち、これから魔王を倒しにいくんだからね! そして、世界を平和にするんだよ!」
「うん、そうだね騎士子ちゃん」
そうして二人はまたしっかりと手を繋ぎ、歩き出す。
すると、街中に大きな声が響いた。
『号外! 号外~~~! 魔王が勇者に討伐されたぞぉぉぉ~~~~~~!!』
二人のそばを走り抜けていく一人の兵士が、たくさんの紙を空にばらまいていく。大勢の国民たちが何事かと驚き、次々と紙を拾っていた。
「「…………え?」」
騎士子とプリ子はまったく同時に同じリアクションを取り、騎士子が足元の紙を一枚拾う。
二人して紙を覗き込む。
そこにはこんなことが書かれていた。
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『――悲願! ついに魔王討伐!
人と魔族の戦争が始まって早数百年。これまで幾多の勇者たちが挑んでは敗北してきた中、希望の勇者エリシアが最強と呼ばれた魔王を討伐することに成功! 長きに渡る人と魔族の戦争は人類側の勝利となり、世界に平和が訪れることが期待される!』
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「「…………え」」
二人はまた声を揃えた。
気付けば王都中が歓喜の声に包まれていた中、二人だけは静かにお互いの顔を見つめ合っている。
プリ子が苦笑しながらつぶやいた。
「あ、あらら……。さっそく、冒険の目的がなくなっちゃったね……」
ぷるぷると震え始めた騎士子は、号外を投げ捨てて大きく口を開く。
「ちょっとぉ~~~っ! それじゃあたし、何のために騎士になったのよ~~~!!」
騎士子の叫びは人々の喝采をかき消すほどのもので、またもや注目が集まる。
さらにそのタイミングで、慣れないミニスカートがずり落ちてしまい、足をもつれさせて転ぶ騎士子。
「――ぷぎゃっ」
妙な声と共に、その真っ白な下着を公衆の面々に晒す。
プリ子が「まぁ」と頬を赤くして口元を覆い隠し、騎士子はまた子犬のようにぷるぷると震える。
そしてがばっと起き上がり、
「う、うわぁぁぁ~~~~~~ん! 王都になんて来なきゃよかったぁ~~~~~~!」
「えっ? き、騎士子ちゃん? 待って~!」
左手でスカートを持ち上げながら駆け出す騎士子。プリ子は慌てて追いかける。
国民たちは、いろんな意味の歓喜に湧くのだった。
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