第1章第11話「昇格試験」
王都は森に囲まれており北に進むと海、南に進むと山に着く位置にある
ハルトは今、昇格試験の為、山の麓にある森の中に来ていた
「富士の樹海みたいに遭難とかしたりして、、」
「この課題って本当に2人で出来るものなのかなぁ、、」
「ハルトとなら大丈夫!たぶん」
妙に自信満々に胸を張っているハクを尻目に山の山頂付近に目をやる
「まさかランクC昇格の為の課題があんな物とは、、」
時間は少しだけ遡り、ニーナに課題を聞いた場面まで戻る
―――――――――――――――――――
「それは―――」
「―――竜種の卵の納品です」
ん?????
「え??ドラゴン!?」
ハルトが驚くと補足をしてくれた
「いえ、ドラゴンは竜種ではなく龍種ですね」
なんでも、龍種は知能レベルが高く人の言葉を理解できる個体もいるという、一方で竜種はより獣に近いらしく知能レベルも低いようだ
この世界に龍を倒した物は、2人いるようで1人はあの大賢者ヒューゲル=エイジス、そして2人目はギルドマスターであるドラゴ=クリスだそうだ
龍殺しをした1人であるクリスはその恩恵としてドラゴの名を得たという
名前の前に名がある人間は何かしらの偉業を成し得た人間だということだ
そして、ニーナは説明を続けた
「王都から南に行った所にある山の山頂付近に竜種である【ワイバーン】の巣があると報告を受けています」
「ハルト様にはその竜種の卵を納品して頂きたいのです―――」
――――――――――――――――――――
「はぁ、、、、、」
ハルトは歩きながら深い溜息をつく
「龍じゃないっていっても、似たようなもんだよなぁ、、」
「んっ、、!」
するとハクがピクリと動く
「ハルト、敵の気配する」
立ち止まり短剣の柄を持つ
「何匹とかはわかるのか?」
「分からないけど1匹じゃない」
「わかった、ハクは外套で身を隠して合図をしたら攻撃してくれ」
「ん」
フードを被るとハクは茂みに身を隠した
その時、反対側の茂みから2体の【コボルト】が現れた
コボルトは犬の様な風貌で二足歩行する魔物だ、体格は小さいが素早くゴブリンよりも力強い
装備は冒険者から奪い取ったであろう剣を待っている
相手はこちらが1人だと思っているのか
挟み撃ちにするかの様に回り込もうとしている
(よし、そのままハクが背後を取れれば)
コボルトが武器を構えて、ハルトを挟み対角線上になったところで
合図をする
「いまだ!」
呪文を唱えていたハクが氷の槍を飛ばす
バゥ!!という鳴き声と共に1体が倒れた
同時にもう一方のコボルトに向かいハルトは短剣で切りかかる
「おりゃぁ!」
コボルトは素早く
「ツっ!!」
やばっ、、!
二撃目を繰り出そうとするコボルトにとっさにバックラーを押し付ける
ドスンッ!
体の小さいコボルトは後ろの木に叩きつけられた
ッ!!!
力強く抵抗されるが必死で押さえ込み、短剣で留めをさす
グボァ!!
「はぁ、、はぁ、、はぁ、、危なかった、」
「そろそろ、ハクのサポートもあるし、短剣卒業した方が良いかな、、」
ハクが駆け寄ってきて頬の傷に回復の呪文を唱える
《シャイオ/ヒーラ》
「ありがとう、ハク」
コボルトが持っていた剣に目をやり、その剣を拾い上げる
「試しに使ってみるか」
鞘に入れベルトにつけ先に進む
ギャァァオオ!!
「鳴き声だ、ワイバーンか?」
山頂付近からまだかまだかと、鳴き声が聞こえる
――――――――――――――――
「あっ!!!!!!」
ニーナは自分の失態に気付き震える
「どうしよう、、、、ワイバーンとは戦わなくて良いって伝え忘れた、、、、」
「ハルト様、、、、」
「こんなの受付失格だよおぉおお!!」
ジト目でその様子を見ていたエミリは溜息をつき、ニーナをなだめる
「はぁ、あーもー、ニーナ大丈夫よ」
「ぶえええバルドざまをごろじぢゃううう」
「はは、、だめだこりゃ、」
――――――――――――――
そして夕刻
「もうそろそろかな?」
貰った地図を見ながら歩く
「ハルト、多分あれ」
ちょいちゃいと袖を引っ張りながらハクは指を指す
道が広がり少しひらけた場所に斜面がありその上の崖部分に枯れた木々が集められた鳥の巣のような物がある
どうやら主は今は出かけているようだ
「今なら、、いけそうだな」
ハクに待機するように言い
斜面を登り巣の中に入る。すると、ダチョウの卵ほどの大きさの卵が複数個あった
「よし―――」
グルルルルル、、、
卵に触れようとした瞬間、唸り声が聞こえ鼓膜が破れそうになるほどの咆哮が鳴った
グオオァァァァァア!!!!
親が帰ってきたのだ
咄嗟に短剣とバックラーを構えたハルトであったがバックラーごと吹き飛ばされ壁に叩きつけられる
「グッ、、ハッ!!」
そのまま、斜面を転がりハクのいる道まで落とされる
「ハルト!!」
「だ、、だいじょぶ、、ゲホッゲホッ、」
(骨は折れてはいないようだが、、、バックラーで防御していなかったらあぶなかった、、)
巣の方を見ると、巣を守るようにワイバーンは覆い被さりこちらを見ている
グルルル、、、
「どうやら怒らせてしまったらしい、、」
そして、飛翔するとこちらに向かって突進してきた
「危ないっ!!」
ハクを突き飛ばし、再びワイバーンはハルトに直撃する
「ぐぁあ!!!」
どうやら今回は完全に折れてしまった様だ
バックラーを持つ手が上がらない、一度目の衝撃で短剣を失ったハルトはコボルトから奪い取った剣を構える
体制を整えたワイバーンの喉が赤く光り始めた
「まずい、、!」
「ハク!水の魔法をたのむ!」」
「ん!」
魔法は間に合いそうもなく
《ウォテア/シュト》!!!
一段階弱い魔法を発動する時間しかなかった
ワイバーンの炎がハクの水魔法と接触し、押し負けたハクの近くで水蒸気爆破を起こした
その衝撃でハクは吹き飛び動かなくなった
「くそ、、、もう少し警戒するべきだった、、」
ゴブリンやコボルトでの戦闘で浮かれていたが、忘れてはならない、ここはゲームなどではない、れっきとした現実で気を抜いたら奪われてしまう世界なんだと
ワイバーンは残ったハルトを睨みつけ再度攻撃を加えた
「くそ、、、こんな所で―――」
――――――――――――――――
「【00】よ」
「はい、マスター」
「お主を停止するわけだが、もう戦争も終わり平和な世界が訪れようとしておる」
ヒューゲルはその
「お主の力はとても強大で人類には手が余る代物だ。わしはその力は出来るだけ使って欲しくないのだ」
「停止するのと同時にその力は封印させてもらう。わかったな?【00】よ」
「はい、マスター」
「もし、、、次の主人が危険に及んだ時、、お主がその者を助けてやりたいと思ったら」
「この言葉を言うのじゃ―――」
―――――――――――――
《
―――――――――――――
「―――!」
あれ、、?
(いま俺はワイバーンに攻撃を受けそうだったはずだ、、、)
ゆっくりと目を開けるとそこにはワイバーンの死骸があった
そして、その
「、、ハ、ク、、?」
折れた腕を抑えハクを呼ぶと、ゆっくりとこちらを見た
日が沈みかけ、あたりは真っ赤に染まる中、ハクの瞳もまた夕陽と同じように真っ赤に染まっていた
「ハ、、ル、ト、」
バタッ
振り返りハルトが無事だと分かると、ハクはその場に倒れた
「ハク!!!!」
ハルトは足を引きずりながらハクの近くに行き抱き寄せる
ワイバーンは後尾後に栄養を得るため雄の命を糧に産卵をすると言う情報を聞いていたハルトはワイバーンの巣の中にハクを運ぶ
「ここなら、、、他のモンスターに狙われる事も無いだろう、、、」
ハクを膝枕し頭を撫でる
「ごめんな、、ありがとな、、」
涙が溢れた。そして、夜明けまでハルトはハクの頭を撫でて続けた
―――――――――――――――――――――――
「ハ、、、、ト」
「、、、ル、、ト」
「ハールートー!」
「、、んん、、?」
「おきた!」
太陽が真上に上がり昼を過ぎた頃のようだ
どうやら寝てしまっていたらしい
「ハクッ!!」
ッ!!折れた腕が痛む
「大丈夫か?怪我とか、、!」
「ハルトより平気」
無邪気に笑うその瞳は
夢でも見ていたのであろうか
「いや、、」
あれは夢ではない、この子はワイバーンに勝ったのだ。あの力は一体――――
「あー!ハルトまた聞いてない!」
「ごめんごめん、どうしたの?」
「みて!羽化しそうなの!」
卵の方をみると、その中の1つが割れ始めた
パキッ、パキパキ、、
ハルトは身構えその様子を見守る
「お、襲ってこないよな、、?」
パキパキ、、、キュ!
キュゥ!キュゥウ!キュウ!!
産まれた雛がハルトを見ると親だと思ったのか擦り寄ってくる
「か、可愛い、、、」
「ハルトがパパだね!じゃあ私の妹!!」
「はは、弟かもしれないぞ、、?って連れて帰る気なの!?」
「ん!!」
「まぁ、、とりあえず帰るとするか」
片腕で卵を1つ抱えその場を後にした
「あ、この子の名前何がいい?ハク」
帰りの道中ハクにワイバーンの名前を提案してみる
「んんん!!ん!キュウちゃん!」
お前のネーミングセンスは誰に似たんだ?まぁこの子がキュウちゃんと言うならそうしよう
「おっし!キュウちゃんよろしくな」
ハクに抱っこされてるキュウちゃんの頭を撫でてやる
キュウ!!
どうやら喜んでるようだ
「むぅ!!!ハクもハクも!!」
「はいはい」
「ん!」
あの赤い目についてはギルドに報告するのはやめておこう、何か嫌な予感がする
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