第1章第12話「2つの魔法と真実」

「ハルト様!?大丈夫でしたか!?!?」


ギルドに入るなりニーナが飛びかかってきた


「痛たたたっ!!!」


折れた骨に響いて声を上げる


「片腕を折っちゃったよ」


「折っちゃったじゃないですよ!!何があったんですか、、、って、、え、、?」


ニーナがハクの抱えているものをみて目を丸くする


「ハ、ハルト様、、、?こ、この子は、、?」


ハクの腕の中にはスヤスヤと眠るワイバーンの赤ちゃんがいる


「な、懐かれちゃってさ、、」


「懐かれたんですか!?親のワイバーンはどうしたんですか!!?」


ニーナがハッ!っとした顔になり


「まさか倒したとか言うんじゃないですよね、、、?」


「、、、、」


実際に倒したのはハクだが面倒な事になりそうなので黙っておこう


「そんなまさか、、、」


ズタボロの装備、折れた骨、懐いたワイバーン見れば説明がつく


「死んじゃわなくて本当に良かったです、、、」


ニーナがその場に崩れ落ちた


「たまたま運が良くて、、、あ、これ納品する卵」


卵を渡すと


「たしかにワイバーンの卵ですね。手続きをするので無理をしないで座っていてください、、」


ふらふらと卵を持って歩いていき、同僚に頭を撫でられている


「大人しく座っておくとしよう」


だが、1つ疑問がある、魔物はどこからか湧いて出てくる物なのにワイバーンやドラゴンとかは産卵をして増えていくのか?ニーナが戻ってきたら聞いてみよう


しばらくするとニーナがもどってきてランクCへと更新されたギルド証を手渡してきた


「これでハルト様も高ランク冒険者の仲間入りですね」


「ありがと、頑張っていくよ」


「気になったんだけど、ドラゴンやワイバーンは産卵で増えてくみたいだけど魔物じゃないの?」


「えぇ龍種と竜種は我々人類が誕生する前からこの地上に存在していたといわれています。なので上位種の龍種は人間より高度な知性を持っていると言われています」


なるほど恐竜的な存在なのか


「ふむふむ」


「あ、、あのそちらのワイバーンちゃんは使役する形になるんですか?」


「んー、ハクが飼いたいっていってるからなぁ、できればそうしたいかな」


「でしたら、奴隷組合に行って刻印を施してもらってください」


「奴隷制度があるの?」


驚いた、あまり気にしてはいなかったがこの世界は奴隷制度もあるのか


「あ、奴隷っていっても魔物や危険度の高い生物に対して契約を結ぶ為の組合なので、人身売買などの行為はしていません。他国ではそういった奴隷制度を設けてる国もあるようですが」


「なるほど」


だが、他国はこの国ほど治安が良いってわけでもなさそうだな。覚えておこう


「あと、ハルト様は骨折をしてるので教会にて治療をしてもらってくださいね」


「病院じゃなくて教会?」


「はい、その病院というのが何を指してるのかは分かりませんが、教会が良いですよ」


どうやら、この世界に病院というものは存在せず、基本的にそういった重症患者を治療する際は最も神々に近い場所で治療するのが一般的らしい


「わかった、行ってみるよ」


「はい、お大事にしてくださいね?

最後にランクCの冒険者に向けた説明をさせていただきます」


低ランク冒険者とはルールが変わるようだ


「まず、S~CはD~Hの依頼を受けるのに制限がかかります。これは、低ランク帯の依頼を独占されてしまう可能性があるからです」


「高ランク冒険者は低ランク冒険者がパーティメンバーにいる場合のみに低ランク依頼を受けることが可能になります」


「以上が高ランク冒険者になるにあたっての変更点です」


「今まで以上に危険になる事が多いので、慎重に依頼をこなしてくださいね」


「大丈夫、気をつけるよ。何かあったら頼らせてもらうね」


ニーナがまた泣きそうになっているので笑顔で返してやる


「は、はい!」


そして、ハルトとハクと1匹はギルドを後にした


――――――――――――――――――――――



「ここが、奴隷組合か、、」


ギルドで教えてもらった場所にいくと、思っていたより作りの良い建物であった


中に入ると、檻に入れられた魔物やどう猛な動物達が居た。


そして、その檻の近くにある椅子に従業員であろう男が座っていた


「あのー、、」


「はい、どういったご用件でしょうかお客様」


「この子の登録をしたいんですけど可能ですか?」


そう尋ねるとハクの抱えてるキュウちゃんを見て興奮し始めた


「おおおっと!サラマンダーでございますか!なんとも珍しい!人に懐く事が稀なんですよ!どのようにして手にいれたのでございましょう!!」


「どうや、卵から生まれた時に俺の顔を見たから親だと思ってるみたいなんだ」


「なるぼどなるほど、雛鳥の刷り込みのようなものですね!」


「さ、さ!こちらへどうぞ!早速刻印を施しましょう!」


奥の部屋へと案内されると椅子に座らされ、どちらか片手を出すように言われた


「貴方様の血液にてこのワイバーンに刻印を施すのです」


「刻印とは血の制約、主人の命令に逆らった時や主人に危害を加えようと考えた場合に発動されるものです」


「むぅ、キュウちゃん可哀想、、」


ハクが拗ねるのも無理はない。だが、この子が成長すれば昨日のサラマンダーのようになる。俺たちに懐いているとはいえ、もしもがあってからでは遅いのだ


「それと、あまり無理な命令や虐待などの行為が発覚した場合は、奴隷組合から強制的に血の制約の破棄をして頂くことになっております」


「奴隷と言えば聞こえは悪いですが、あくまでこの国では安全に一緒に過ごして頂く為の処置に過ぎませんので」


「ふむ、わかりました。お願いしても良いですか?」


「はい、ではこちらの針を指先に刺して少量で大丈夫ですので血を出してください」


ハクが動かない片腕を見て手伝ってくれた


「ありがとうハク」


「ん!痛くない?」


「ハクがしてくれたね、大丈夫だったよ?」


ふふん!とドヤ顔をしているハクの頭は後で骨折がなおったら撫でてやろう


「それではこちらのサラマンダーの胸のあたりに指を置いてください」


指を置くと男は自分が知っている魔法とは違う言葉を口にした。すると指先が光りサラマンダーの胸のあたりに刻印と思われる模様が現れた


「これで、血の制約の完了となります」


「結構あっさりなんですね」


「簡単ですが主人との間に強い絆を得られるのが血の制約でございます」


「それでは、またのご利用をお待ちしてますね」


「はい、また機会があればお願いします」


お礼を言い奴隷組合から去ったハルト一行は次は教会を目指すことにした


教会は図書館に行った時に見かけた事がある。ギルドから図書館に向かう道で左に曲がった所にある

作りは元の世界の教会と相違はないが、十字架ではなく、五代神をモチーフにした物が飾られている


教会に入ると、1番前に祭壇があり、手前に椅子が並んでいた。どうやら傷の治癒をするのは二階のようだ


二階に上がると教会のシスターのような人が話しかけてきた


「治療のお方ですね?こちらへどうぞ」


歩いていると、子供達がこちらの様子を見ている。


「あの子達は?」


「あれは私達教会で保護している孤児の子達です」


孤児か、、


「ハク、治療が終わるまであの子達と遊んでおいで?」


「わかった!いこ!キュウちゃん!」


「キュ!」


「わ!このトカゲかわい!!」

「触っても良い?」

「俺が先だぞ!」


などとはしゃぎ声が聞こえ離れていった


「改めてよろしくお願いします」


「骨が折れているだけならすぐに動かせますよ」


「そうですか、それなら良かったです」


するとシスターは奴隷組合の人と同じように自分の知らない魔法を使った


「あの、奴隷組合でも気になっていたんですが、その魔法は俺の知ってる魔法とは違うみたいなんですが」


一般常識なのか聞かれて驚いたシスターは快く答えてくれた


「この世界には今現存するもので2つの魔法があります」


「1つは大賢者様が元にあった魔法を効率よく運用する為に作ったとされる神の言葉の魔法、もう1つは大賢者様が改善する前からあった元の魔法で、五代神様の恩恵ともいわれ傷の治癒や病の回復など生活に必要な魔法だったのです」


「そして、この国が建てられる以前、この場所にはイングラシア王国という国がありました。そこの宮廷魔法師をされていたヒューゲル=エイジスが戦争に勝ち魔物に勝つ為に作り上げた攻撃特化の魔法が新魔法と呼ばれ冒険者や兵士の方々が使われている魔法なのです」


「なので、治癒や先ほど言っていた制約などは元の魔法の方が効力は強いのです」


聞きなれない魔法はそういう事だったのか

新魔法を生み出すほどの力を持つヒューゲルとは一体何者なのだろうか、、、今度調べてみよう


「治療終わりましたよ?動かしてみてください」


魔法の事を聞いている間に治療は終わっていたらしい


「おぉ、、!」


確かにヒーラの魔法では治らなかった腕が治癒していた


「ありがとうございます」


「治ったとはいえ無理は禁物です。明日は冒険者としての活動は控えてくださいね」


「わかりました」


子供達と遊んでるハクとキュウちゃんのところに行こう


「ハクー帰るぞー」


「ええ!まだあそびたいー!」


「いやぁ、遊んでてもいいが、、」


シスターに目を向けるとニコニコしていたので


「少し、図書館で調べものをしてくるのでもうお願いします」


「はい、見ておきますね」


お願いをしハクとキュウちゃんを置いて図書館にむかった


今回調べるのは【イングラシア王国】についてだ、この情報を調べれば色々と分かるはずだ


受付に聞き、イングラシア王国について書かれている本を探していると数冊の本が見つかった。流しながら読んでみると驚くべき事が書いてあった


それは、イングラシア国王とエイジスの一部会話の記録とその計画の概要である


自律型オートマティカル戦闘人形兵器ストライカーユニット

【Eizi’s Series】


などその他、元の世界の言葉がズラリと並んでいた

この世界の人間には理解できないであろうがハルトの目にはしっかりと理解ができた


「エイジズシリーズ、、、?」


エイジズシリーズ変えて読めばエイジスと読めなくはない。そして、所有格だと仮定してそれを除けば名前はエイジという事になる


「エイジスは日本人なのか、、?」


「あとは、ストライカーユニットか、でも、実験の結果については記録が途中で終わってるな、、」


「多分これがハクの事なんだろな、、、」


赤い目については分からなかったが、ヒューゲルがもしかしたら日本人かもしれないという事が分かっただけでも十分だった


「帰るか」


教会にハクを迎えにいくと疲れて寝てしまったのか子供達とお団子状態で寝ていた


「ほらー起きろー帰るぞー」


「はるとおかえりぃ、、、」


目をこすりながらハクはこちらをみているので、折れていて動かなかった手で頭を撫でてやる


そして、ハクとキュウちゃんを抱え家に帰ったハルトであった

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