第1章第10話「策動」

ギルドの会議室にて、ニーナは上司たちにハルト達が見た出来事を説明していた


「私の管轄する冒険者であるハルト様が、王都の地下にある古い地下水路にて魔物の出現を確認しました。迅速な対応で魔物たちは討伐されましたが、また出現する可能性があります」


上司の1人であるバブリアという男は不思議そうに聞いた


「そのハルトと言ったか、そやつは何者なのだ?」


「はい、まだギルドに登録して間もない冒険者でランクはGです」


「ランクがGでは、魔物は荷が重かったのではないか?」


「一度目の依頼は何とかアイテムの使用で難を逃れたそうで、今回の地下水路の一件では新しくできた仲間が加わり戦力が大幅に上がった事で解決できたとのことです」


「ふむ、その仲間とはどんな冒険者なのだね」


「いえ、冒険者ではありません。白い髪と青い瞳を持つハクちゃんというオートマタです」


ピク


「白い髪と青い瞳だと?」


どうやら彼はその情報に何かが引っかかるようだ


「ふむ、、、」


「どうなされましたか?」


「いや、数百年前、大賢者様と共に戦ったオートマタが白い髪をしていたという話を聞いたことがある」


ざわ


もう1人の男のフューリーはバブリアに問う


「でしたら、バブリア殿はそのハルトという冒険者と共にいるオートマタが大賢者様のオートマタだと言うのですか?」


「いや、わからないな。そのオートマタの瞳は赤かったと言われているのだ。仮にそうだとするのならば。【それ】を従えている冒険者をGランクに留めておくことはできなくなる」


「なぜです?ハクちゃんが大賢者様の眷属なら安全なのでは?」


ニーナが疑問を言うと、ギルドマスターであるドラゴ=クリスは固く閉ざしていた口を開いた


「伝説の通りならば、【それ】は強制的に戦争の不利を有利に変えてしまう程の力であるからだ」


「そして、ランクを上げさえすれば【それ】はギルドの監視下に置くことができる」


低ランク帯は脅威度の低さからギルドからの縛りは少ないが、高ランク帯は報酬が高い代わりに脅威度も高いのでギルドから監視などの縛りを受けることがある


「ニーナよ」


「は、はい!」


「そのオートマタはハルトとという冒険者の道具扱いで構わない、1組としてランクCへの昇格試験を受けさせろ」


「ランクCですか!?危険過ぎます!いくらハクちゃんが強いかもしれないと言っても無謀です!ハルト様はついこの間ランクGに上がったばかりですよ!?それにハクちゃんは物ではありません!」


ランクCまでに至る間が低ランクとされ、

ランクS-Cは高ランクという括りになる

高ランクになると低ランク依頼の独占防止の為、高ランク依頼以外ほとんど受けられなくなる規則があるのだ


それだけではなく、ランクCに上がるには昇格試験を受ける必要があり、その課題は過酷を極めるという


「いずれにせよ、監視対象にしなければならないのだ」


「それは、、どういう、、」


クリスは付け加える


「噂によると彼は黒い狼と関係している」


「え、、?邪神のですか、、?」


「そうだ。ニーナ、この事が事実にしろ虚実にしろ本人に悟られてはならぬ」


「いつも通り笑顔で対応し、昇格試験を受けさせるんだ。わかったな?」


「はい―――」


こうして

ハルト本人の知らない所で何かが動き出した



―――――――――――――――――――


「おきろー!ハク!」


「むにゃ、、?まふたー??」


「ハルトだ!ねぼけるなー!引っ越しするぞ~!」

今日は昨日手に入れた新居に引っ越す日だ

自分とハクの服を詰め込みながら起こしていた


「まだ、、ねむぃ、、」


「早く起きたら美味しいもの買ってあげるんだけどなぁ、、、チラ」


がば!!!


「起きた!」


こいつ、、()


「食いしん坊め」


「その前にお世話になったミーナと他の宿の人達に挨拶しないとな」


異世界に来て数日だがこの宿には感謝している。


「ん、わかた!」


とてとてとてとて


「こら!俺もいくから待てー!」


みんな優しくてここが家のような場所だった。


「いーや!」


とてとてとて!


ここも今日でお別れだ。たまには遊びに来よう


「まったくー」


ハルトは頭をかき、そして笑っていた


中庭に行くとニーナが水やりをしながら挨拶をしてきた


「おはようハクちゃん」


「おーはよ!」


1番に挨拶をし満足したのかハクは鶏ちゃんと遊びはじめた


「ハルトさんもおはようございます。もう行かれるんですね」


「おはようミーナ。うん、明るいうちに済ませておきたいからね」


すると他の従業員達が出てきて何かを渡す


「これ、今日の分の朝ごはんです。新しいお家に着いてからでも食べてくださいね」


「ごはん!」


ハクが嬉しそうだ


「ありがたくいただくよ」


お礼を言い三日月亭を後にし、道中に約束どおり追加で食べ物を購入させられ新居に向かった




新居に着いた時である、


「ついたぞー」


「ぞー!」


玄関のドアを開けようとすると、ドアの下に手紙が挟まっていた


「ん?」


拾い上げると、どうやらギルドからの手紙らしい


【昇格試験のご案内】と書かれていた


「昇格って、、、この前したばかりなんだが?」


手紙を読んでみる


――――――――――――――

【昇格試験のご案内】

おめでとうございます


依頼での国、及びギルドへの貢献を称え


ランクCへの昇格資格が認められたことをここに記します


この手紙をギルド受付にて提示し昇格試験についての説明を受けてくださるようお願い致します


――――――――――――――


「ランクC!?!?!?」


4つも昇格するなんて飛び級もいい所だ、こんな事がありえるのか?


「とりあえず、後でミーナの所に行こう、、」


改めて家に入り、家の中をみる


依頼で調査してる時も思った事だがとても広い、2人で生活するには大き過ぎるほどだ


「避難経路もあるし、元々貴族様のいえなのかな?」


「ハク、リビングに行ってさっき貰ったご飯を食べようか」


「ん!」


ニーナ達から貰ったご飯を食べながら、ハクと今日の予定について話す


「今日はさっき貰った手紙に書いてあったようにギルドに行くよ、あと生活用品を買い足しにいこうか」


「ミーナの所?やったー!」


さっきの手紙は間違いなのではないか?昨日の依頼がそんなにも昇格するような依頼にも思えない。自分に高ランク帯の依頼がこなせるのであろうか、そう思いながらハルトは食事を済ませた


―――――――――――――


ミーナは複雑な心境であった。ハルトが昇格するのは嬉しいが危険が伴う、自分の手で冒険者を危険な目に合わせてしまうようなものだ


「はぁ、、、」


いくら上司からの命令とはいえ、そんな事を笑顔でやれなんて酷過ぎる。


「どうしたの?そんな顔してー」


同僚のエミリが心配そうに話しかけてきた


「それが―――」



「―――えぇぇ?この前登録してた彼、もうランクCなの?凄いじゃないの」


当然、上司達と話したことは言えなかった。黒狼やヒューゲルのオートマタの話なんて、荷が重過ぎる


「そうなんだけど、、危険じゃない」


「まぁ、そうね、、でも、そこをサポートするのがミーナの腕の見せ所よ!」


「がんばる、、」


後で同僚たちと酒場にでもいこう


すると、ギルドの扉がひらいた


―――――――――――――


「こんにちはミーナ」

「こんにちわ!」


ギルドに入るとミーナは同僚と話していたようだ


「こんにちは、ハルト様ハクちゃん」


挨拶をするとミーナは笑顔で返してくる


「ギルドから手紙が来てたんだ。ランクCランクの昇格試験って本当なの?」


「はい!!なんせ、気付かなければ王都内部で被害が出ていたかもしれませんからね」


「あと、ハクちゃんは一応オートマタなのでハルト様の所有物という形となるみたいで、ハルト様の冒険者としての戦力は2人で1つと認められたようです」


ギルド上層部ではハクは物という括りらしく嫌な気持ちではあるが、肉体を持つ人型のオートマタが異例なのであろう


「それで、昇格試験ってなにをするの?」


一瞬ミーナの顔が曇ったように見えたが、すぐに笑顔に戻りその問いに答えた



「それは―――」

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