第1章第7話「食いしん坊な相棒」
「オハヨウ、、」
「おはよ、、むにゃむにゃ」
朝起きたらハクのヨダレで服がびしょ濡れだった
寝ながらご飯と勘違いして食べていたようだ
食いしん抱め、、、
そう思いながらも
頭をわしゃわしゃと撫でた
「んん」
どうやら心地よいようだ
まるで猫だ
今日は同居人が増えた事だし、買い物をして物を揃えなければならない
「いっそ家でも買うか?」
などとも考えるが相場が分からないので保留だ
現在の所持金は出店での食事、本のレンタル、ステーキ3食分、ハクの分の残りの3日間の宿泊費などを差し引いた額とマンドラゴラの報酬である銀貨5枚を足して
王章金貨2枚、金貨90枚、銀貨541枚、銅貨70枚
である
前回の計算から銅貨10枚ほどふえたな()
やはり家の相場も調べに行こう
このまま2人で宿に住むと3日後から1日銀貨2枚と銅貨40枚を消費していく事になる
それは洒落にならないな
「ほら、寝てないでご飯にするぞ」
「ごはん!」
ご飯という言葉に反応して元気になったハクを連れて食堂へと降りた
「ミーナおはよう」
「ハルトさんおはようございます!」
「ハクちゃんもおはようね」
「おはよ!ミーナ!」
「いま2人分の食事をお持ちしますね」
「やった!ごっはっん!ごっはっん!」
謎のコールを始めた
「うん、ありがとう」
返事をすると
ミーナはいつものように厨房に入って行った
「ハルト ハルト 今日は何するの?」
ハクが尋ねてきたので
「今日はハクの服と防具を見に行くかな」
「あとは家の下見にいくよ。いつまでも宿暮らしってわけにも行かないからね」
「いい場所が見つかるといいな」
頭を撫でてやる
「ん」
「お待たせしましたぁ」
「今日のメニューは―――」
――――――――――――――
ベーコンエッグトースト
ポテのスープ
サラダドワーフ
――――――――――――――
「―――です」
2つ目までは想像できるが
3つ目がまるで想像できない
サラダドワーフとはどんなサラダなのか
自分の前に置かれたサラダの入った皿をみて
理解した
カルボナーラが出来た由来の一説を知っているだろうか?カルボナーラは炭焼き職人、炭鉱夫達が食べていた料理とされていて
上にかかっている胡椒は炭を表現しているという。
このサラダドワーフにかかっているドレッシングはメインに使われている材料がどうやら見た感じ胡椒のようだ
ドワーフが鍛冶屋をやっていたり、力仕事をやっているイメージから似たような由来で名前がついたのであろう
「いつもありがとう、ミーナ」
「いえいえお仕事ですから!」
ガッツポーズをするミーナに笑顔で返し食べる事にした
それでは実食といこう!
などと考察してる間にも
横でハクは既にムシャムシャとたべている
「くっ、、折角のおれの食レポタイムを、、」
などと言いながら、サラダから一口食べてみた
「ツッ!!」
スパイシィィイイーーーーー!!!!
あまりの美味さに思わず叫びそうになるのをこらえた
メインは胡椒だが他にも色々なスパイスが混ざっているようでとてもパンチの効いたドレッシングだ
「サラダドワーフ恐るべし、、、」
「どしたのハルト?(モグモグ)」
ハクがリスのように両頬を膨らませ
頭の上に「?」を浮かべながら聞いてきた
「いや、何でもないよ」
さぁ、次は
メーンディイッシュ!
ベーコンエッグトーストだ
こんなのうまいに決まってる
さながらア◯プスの少女の如き食事だ
そして口に入れると
「【食あってこその人生である
人は食なしにして幸福を語れず】相澤春人」
と悟った目で呟き謎の格言を誕生させていた
「ハ、ハルト?」
流石に食べる手を止めハクが心配そうに見てきたので食レポコーナーは止める事にした
「お、おいしいか?」
「うん、美味しい!」
最後にポテのスープを飲んで体に染み渡らせ
2人は食堂を後にした
――――――――――――――――――――
「んんんんん」
「決まりそうか?」
「んんんんん!」
「というか、同じ商品じゃないか?どっちを買っても一緒だろ?」
「なんか微妙に違う気がしないでもない」
今は2人でアルゴの武器防具店に来ている
ハクの装備を整えるためだ
「お前さんみたいに即決でおすすめ買うより、よっぽどあーやって悩んでくれる方が嬉しいがな! はっはっは!」
うるへえ!あれでも悩んでたわい!
「お前さんの連れは、魔法戦闘がメインのスタイルだったか?」
「そうです」
「じゃあ、こいつを譲ってやらないでもない」
するとアルゴは1点の指輪を出してきた
「これは【省略の指輪】というものだ】
「どんな効果があるんですか?」
「この指輪は本来ならば魔法詠唱時に言わなければならない初節を指輪に刻まれた魔法陣に組み込んで省略する事に成功した指輪だ」
「お嬢ちゃんなら相性がぴったりだと思ってな」
「いくらなんです?」
「今後も店を使ってくれそうだからな。金貨20枚って所で譲ってやるとしようか」
金貨20枚か、、悪くない金額だ
詠唱が長くなると隙ができてしまう魔法が少しでも省略できるのは大きい
「ふむ、ではそれと今彼女が選んでる防具一式を買います」
「あと、俺用にただの黒い外套ってあります?それと、短剣も新しいのにしたいです」
「もちろんあるぞ、よし、わかった短剣の方も良いのにしてやる」
「それは、ありがとうございます」
代金は金貨26枚と銀貨75枚を支払った
当分は高価な装備購入は控えよう
―――――――――――――――――――
相澤春人
装備: 鋼鉄の短剣、バックラー、皮装備一式、黒外套
ハク
装備: 省略の指輪、認識阻害の黒い外套、魔法使いのローブ
認識阻害の外套は魔法職を守るため、そのままハクに着せることにした
―――――――――――――――――――
「よし次は新居探しだ!」
「おうちー!」
道の人に不動産の店について聞くと
どうやら土地関係の売買をする店は
ラドナーの服店の近くにあるようだ
不動産店に入ると
いくつかの受付があり
他の客が数人手続きなどを行なっていた
空いている受付があったので話しかける
「すみません、物件を探してるんですが」
「どういった物件をお探しかなど、ご要望はありますか?」
「んー、2人で住めて、出来るだけ安い物件が良いですね」
「ふむふむ、ではこちらの物件などいかがですか?」
広さは申し分ないが、三区画目の門近くか、、ギルドから少し遠いな
「他の物件を見せてください」
「かしこまりました」
― 数分後 ―
「んー!なかなか良いのがないなぁ」
良いなと思う物件は高かったり、遠いかったりでなかなか条件に合う家が見つからない
すると受付の人がこちらの服装を見て少し考えた後
「もしや冒険者様でございますか?」
と聞いてきた
「そうですけど、どうかしましたか?」
「んー、、お客様にこの物件をご紹介するのは失礼かもしれませんが、冒険者様と見込んでご紹介したい物件がございます」
どういうことだ?
恐る恐る物件について書かれた書類を手渡してきた
金貨150枚(王章金貨はあまり出回らないため表記するときは金貨の枚数で表記する)
「広いじゃないですか、しかも安いし近い」
良い物件だ、というより豪邸だ
なのに何を恐れている?
「はい、、ですが少々問題がございまして、、」
「入居される方は決まって、一週間以内に皆さん手放されるのです」
見てくださいと続けた
「その書類の下に原因と元入居者たちのアンケートが書いてあります」
そこには、誰も居ないはずの部屋に動く影を見た。夜になると呻うめき声が聞こえる。地下なんて無いはずなのに床下から何か聞こえる。などなど他にも沢山の事が書かれていた
「やるほど、訳あり物件って事ですね」
「はい、宜しければ。これを正式なギルドの依頼として出すので、指名依頼という形で対処してもらう事は可能ですか?」
「もちろん解決して頂いた後もこの書類に書かれている値段で構いません!」
「依頼達成の報酬も払いますので」
「そういう事でしたら断る理由はありません、お金も貰えて家も買えるならそれに越したことはないので」
「ありがとうございます!」
周りの店員の人達もお辞儀をする
「申し遅れました。私、この店のオーナー ラチェスと申します」
どうやらこの店員さんはこのお店のオーナーだったようだ
「ハルトです、こっちがハクです」
「改めてよろしくおねがいします」
ラチェスは紙とペンを出し文字を書き始めた
「では、指名依頼の契約書を書きますね。これを冒険者ギルドに提出しますと依頼が成立されます」
素早く契約書を書き手渡してきた
「わかりました」
返事をし店を出た
その後近くにある服屋に行きハクのための非戦闘服を買いに行った
これでも、女の子だ、服はあって困らないだろう
そして、その後ギルドに依頼の紙を提出しに向かった
「こんばんは」
「こんばんわ!」
「こんばんは、ハルト様ハクちゃん」
ニーナに紙を手渡すと、指名依頼はあらかじめ調査された依頼ではないのでランクが付けられないらしく、とても不安がっていた
「だ、大丈夫なんですか?」
はっきり言って受けたはものの俺も不安だ
「た、たぶん、、」
「でも家も手に入りそうだからね、やれるだけやってみるよ」
「無理せず頑張ってください」
そして、紙を返してきた
「これで正式な依頼になりました。そちらの紙は控えなので終わるまで取っておいてくださいね」
「わかりました」
と返事をするとついに痺れを切らしたのか
「あと!ミーナに聞いたんですが。ミーナには敬語使ってないんですよね?私にもそれでお願いします!」
などと言ってきた
「わ、わかった」
それで良い!といった顔をしている
「じゃあこれで失礼するよ」
「はい!ハクちゃんもまたね」
「ん!またねミーナ」
――――――――――――――――――――――
ギルドを出たあと
ハルトはいつもの屋台街にて夜ご飯について考えていた
「ハクそろそろお腹すいたね」
「すいた、凄いすいた、超すいた」
目を輝かせ
見えない尻尾がフリフリしている
「何が食べたい?」
「ハルトわかってない、もちろんお肉!」
起動したての頃の純粋な子供のようなハクは三日目にしてもうここには居ないようだ
「肉かぁ、とりあえず屋台まわってみるか」
「ん!名案」
その後ハクに連れ回され10件ほど屋台をはしごした
その中でも1番うまかったのは
バッフロアの粗挽きソーセージだ
この前の【バケス】の時も食べた肉だが
調理法が変わるだけでもこんなにも変わる物なのかと感心した
「もーお腹いっぱい、、、」
「俺もだ、、、」
2人して噴水の縁に横たわっていた
満足どころでは無いほど食べたと思う
この世界は色々とカロリーが凄すぎて1日2食にしたほどだ
明日は新居取得のための依頼が待っている
早めに帰って寝るか
三日月亭に帰りニーナに挨拶をしたあと、
ハクと一緒に風呂に入り
ベッドへと入った
そして何気なくこんな事をきいてみる
「どうだ、楽しいか?」
「ん、楽しい。ニーナもミーナも優しい、ハルトと一緒に居ると安心する、そして何よりごはんが美味しい!」
「はは、ハクらしいな」
「明日から一緒に頑張っていこうな」
「ん、、、」
「ハク?」
「すぅ、、」
「ふ、おやすみ」
まったくマイペースな奴だ
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