第1章第6話「謎の少女」

「んー!今日も天気良し!依頼日和だ!」




図書館に本を返したハルトは大通りで伸びていた




本から出てきた鍵はとりあえず持っている




「ぼちぼち森に向かうかな」




今日はマンドラゴラ採取だ


昨日ニーナに教えてもらった注意点を忘れずに採取していこう




森に入るとちらほら他の冒険者を見かけた




皆さんご苦労様です




と心の中で思い自分の依頼に集中する事にした




「あ、、見つけたマンドラゴラだ、、」




ほうれん草の様な葉に薄紫色の花が咲いている、図の通りで間違いないようだ




葉の根元に手を当て握り、もう片方の手で


首を折る準備をする




「せーのっ!」




引き抜くと思った以上に大きい泣き声が響き渡った




ホギャァァァァァ!!!!




ポキッ




ギャッ!




えぇ、、、




勢いよく曲げると「ギャッ」という声とともに静かになった




「なんか可哀想になってきた、、()」




とは言いつつ1株目を採取できた




この調子で残り4株か




― 数時間後 ―




「無い!」




数時間探したが最初の1つを見つけてから


1つも見つけることができなかった




「もう少し奥に行ってみるかなぁ」




もう少しだけ森の奥に進んで見ることにした




森の中にいると狼に追われ異世界に来た時のことを思い出す




そんな事を思っていると




「あっ、なんだあるじゃん」




数10分歩いたところで2つ目のマンドラゴラを見つけた




と、手を伸ばそうと踏み出した瞬間


視界が暗転した




落ちたのだ




そして、意識を失った


この世界に来て二度目だ






―――――――――――――――




目を覚ますとそこは暗い空間だった




「いててて、、、」




結構な高さから落ちたようだ




上を見上げると空はすっかり暗くなっていた




「なんなんだここは」




暗くてよく見えない




「そうだ」




《ファスタ/フェイム/トータ》




覚えたての魔法を使ってみる




「これで見えるな」




照らされた周りには人が住んでいた形跡があった




ますます理解ができなくなる




「こんな森の奥で誰が住んでたんだ?」




机の上には紙が散乱しており乱雑に書かれた文字や図形が並んでいる




『六大魔法の組み合わせ』


『機械骨格によるゴーレム作製』


『自己成長ゴーレム』


『闇魔法による起動魔法』


『ゴーレムによる魔法行使』


『自我の芽生えと暴走』




六大魔法?




「何をしようとしてたんだ、、?」




そして、その紙の一枚にサインを見つける




「ヒューゲル=エイジス、、、?またお前か、、、」




何かと縁のある人だ




偶然なのか必然なのか、はたまた何者かが導いてるのかハルトの行く場所には彼の名前がある




「そうだ、確か鍵にも、、、」




鍵穴が合う場所を探した




すると本棚の裏に道が続いていた


道を進むと扉があり、鍵がかかっていた




「ここか、、?」




鍵を差し込みゆっくりと回すと




カチッ




という音がして扉が解錠した




そして、部屋の中を見て驚いた




「女の子、、?」




その部屋には台があり、その上に女の子が横たわっていた、窓もないのに女の子は月明かりのような優しい光に照らされている




そして、その台の上には1枚の紙が共に添えてある




こう書かれている




―――――――――――――――――――


やぁ、来てくれたね




ここに来たということは




【初めての魔法とその基礎知識】




を読んで鍵を見つけたということだな?




この世界では魔法というものは


普通幼少期に習うものだ




わざわざ改めて「初めての」と記された本を読む人間はいない




私の予想が正しければ、君ははこの世界のものではないね?




だから、鍵にはここへと導く魔法をかけておいたんだ




そして君は闇魔法の一節も本を読んで予想できた筈だ




今から君に教えるのは


《スタト》《起動》の呪文だ


闇の魔法と組み合わせれば




そこに寝ているオートマタを動かせる筈だ




私は老いこの世界にはいない




起動したその子は人間と同じだ




食べ、学び、成長する




どうかその子を大切にしてやってくれ




そして、ここが誰にも見つからないように


全てを燃やしてくれ




【初めての魔法とその基礎知識】で最初に君に教えた魔法が「火」だったのはそのためだ




                       ヒューゲル=エイジス




―――――――――――――――――――




「闇の魔法、、、」




「この子がオートマタ?」




人間の女の子にしか見えない




確かに、昨晩適当にやった闇魔法が発動したがこんな形で使う事になるとは思いもしなかった




「やってみるか、、」




少女に両手をかざし呪文を唱える




《ファスタ/シャドア――




両手が黒く光る




――スタト》!




すると、ゆっくりと眠っていた少女が目を開けた




「おはよう、パパ」




ん?パパ!?とりあえずスルーしよう




「お、おはよう」




「パパ、お腹すいたぁ」




「へ?」




グゥウと少女のお腹が鳴る




「それ、、それ食べたい」




少女が指差したのは1つだけ取れていたマンドラゴラだ




また1からになるがしょうがない




「ほら、お食べ」




マンドラゴラを手渡すとムシャムシャと食べ始めた




可愛らしい少女が人面の植物を食べている絵面は何とも言えなかった




帰ったらちゃんとしたご飯を食べさせてあげよう




とりあえず




「名前だな」




目は透き通った青色で宝石のようだ


髪は白く腰くらいまである




「君の名前はこれからハクだ。いいかな?」




白いからハクとは我ながら安易な名前の付け方だと思う




「ん」




ハクは食事を続けながら小さく頷いた




「俺のことはパパじゃなくてハルトって呼んでね」




流石にパパはムズムズする




「わかったハルト」




「あとは服だな、、、」




ハルトは黒い外套を脱ぐとハクに着せた


認識阻害があればこの子の安全は守れる




「いい?フードを被ってって言った時にちゃんと被るんだよ?」




「ん」




「とりあえず明るくなってから王都に帰ろう」




「ん、わかった」




早くも自分が親バカになってそうで怖かった




――――――――――――――――


チュン チュンチュン




どうやら眠っていたようだ


落ちてきた穴からは光が注いでいた




「んんん!腰が痛い、、、、ベッドで寝たい、、」




こちとらおっさんだぞ!




「ハルトおはよう」




ハクが話しかけてきた、どうやら夢ではなかったらしい




「おはようハク、外に出よっか」




とりあえず穴から出ることにした




ヒューゲルもこの穴から出入りしていたのか


部屋の隅には梯子はしごが置いてあった




「外だー!」


「ソトダー!」




と梯子を上って2人で空に腕を伸ばす




そして、




「お前ぇ、、」




と穴のそばに生えているマンドラゴラを引き抜き恨みを込めて首をへし折る




改めてあと4株だ




王都に戻りながら探すとしよう




「と、その前に」




ヒューゲル=エイジスの言いつけを守る事にする




それは敵に向かって使う為に覚えた筈だった火の魔法




《ファスタ/フェイム/アーロ/シュト》!




呪文を唱えると一本の火の矢が穴の中へ向かって射出された




これで大丈夫だろう




「大切にしますね」




そう言い残し王都へと向かった




―――――――――――――――――


ギルドに帰ると泣きながらニーナが駆け寄ってきた。


依頼に行ってから丸一日帰ってこないので死んだと思っていたらしい




「バルドざぁぁぁまぁあ!死んじゃったかと思いました!!!」


ぐすん




「お怪我はないですか!?」




「てかその女の子はなんです!?」




と状況がいまいち理解できていないようだ




だが、闇魔法について話すわけにもいかない


何とかして誤魔化さなければ




「この子は森で迷ってて、、たまたま、、」




「パパです」




「え?」




ニーナが固まった




「私のパパです」




やりやがった、、、、




「えっ、、えっ、、ハルト様お子さんいたんですか、、?」




もうだめだ、ここからどう誤魔化そう、、




― 数分後 ―




「なんだぁ、お子さんでは無いんですね」




その後、なんとか理解してもらえたようだ


限定的な情報とはいえ、この子がオートマタである事は伝えた




「それにしても、見た目は普通の女の子ですね。一般的なゴーレムやオートマタに人型をしているものは無いので、凄く魔法に秀でた方が作ったに違いありませんね、、!」




目をキラキラさせている


これを作ったのは伝説の賢者様だとは口が裂けても言えなかった




「はい、王都に帰る途中分かったんですけど


この子、魔法もそこそこできるみたいで依頼の補助とかもしてもらうつもりです」




なんと、帰る途中お腹が減ったと拗ね初め、出会った動物を倒しては食べていたのだ


しかもしっかり魔法で焼いて




「あら魔法ですか?凄いですね」




あまり詮索されるとボロが出そうだから誤魔化すか




「俺としては心強いです。あ、忘れてました」




帰りに集めたマンドラゴラ5株を出す




「依頼もなんとか終わらせてきたんです」




「お疲れ様です」




ニーナはニコッと笑い




「それでは、報酬の銀貨5枚ですね」




と報酬を手渡した




「あ、ハルト様、ギルドカードをお見せ願えますか?」




「わかりました」




すると、裏へ行き戻ってきた




「はい、返却しますね」




受け取ると、そこにはGランクの文字があった




「これでハルト様もGランクです、無理のないようこれからも頑張ってくださいね」




「はい、明日また依頼を受けにきますね」




「お待ちしてます」




ニーナに別れを告げ、ギルドを後にした




「ハクご飯食べに行こか」




「ん、いく」




「パパって呼ぶのもう禁止だからね」




色々とややこしくなる




「ん、わかった、ハルト」




「そうだ、何食べたい?」




ハクに食べたいものを聞くと




「肉!」




速攻で肉と返ってきた




しょうがないなぁ


昨日食べたドラゴンステーキでいいかと思い




【ジャイアント フット】へ向かい




2人でたらふく食べたのだった




――――――――――――――――――


三日月亭へ帰ると


ミーナも驚いていたがなんとか説明した




ベッドが2つある部屋に移動しようとしたが、ハクが一緒に寝ると暴れ始めたので




結局部屋はそのままだ




俺たちを見送ったミーナの顔が赤かったのは気にしないでおこう




この世界に来て思う事はとにかく1日が濃い!


という事だ




一旦部屋に帰ってから


支度をし風呂に入ろうとすると


私も入るというので一緒に入った




もうね、娘だからね、うん




そーゆーんじゃないからね




明日は、この子の装備と服を買いに行こう




その日から俺は1人ではなくなった


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