第1章第4話「異世界の神話」
「おはようミーナ、今日も相変わらずの鶏さんだったよ」
「ふふ、今朝ごはんをお待ちしますね」
そんな会話をし朝食を食べる事にした
今日やる事は、ギルドで新しい依頼の確認をした後、黒狼について調べるつもりだ
「ご飯お持ちしました」
「ありがとう、ところでここら辺に調べ物ができる場所はあるかい?」
「あー、それでしたら大図書館がありますね」
図書館か
「この三日月亭から左に向かってまっすぐ行って、ギルドの前を通り過ぎて最初の角で右に曲がったところにあります」
なるほど
「ありがとう、あとで行ってみるよ」
「何か調べ物ですか?」
「ちょっとね」
「何か分かると良いですね」
「そうだね、ご飯いただきます」
「はい!」
調べ物の目処が立った所で朝食を口に運んだ
メニューは昨日と同じだが、朝からこういう食事を取れると何だかホッと落ち着く
ずっとこんなゆったりとした生活ならいいんだが
「ご馳走さま、今日も美味しかったよ」
「ありがとうございます、今日も頑張ってくださいね」
そう見送られ、食堂を後にした
装備を整え宿を出た後、ギルドへと向かう
―――――――――――――――――
一方その頃ニーナは
「昨日のハルト様大変そうでした、、、、」
ハルトに次どんな依頼を渡したらいいか悩んでいた
「やっぱり採取依頼かなぁ、、」
紙の束をペラペラとめくりながらそう呟く
ニーナ的には担当する冒険者はできるだけ死なせたくない、その人に合った依頼を提供するのもニーナの仕事の1つである
「あ、、これ、、」
1つの依頼に目をつけた
これなら安心だろう
ニーナが選んだのは
――――――――――――――――――
ギルドに入るとニーナが何だか自信ありげに手招きをしていた
「な、なんだ?」
恐る恐る近くと
「ハルト様!」
「は、はい!」
びっくりした、、、
「この依頼どうですか?」
そこには
【マンドラゴラ 5株 採取 無期限】
と書かれていた 報酬は銀貨5枚とこう報酬だ
「マンドラゴラ?」
「はい、石化の魔法をかけられてしまった人向けのお薬に使う材料ですね」
「どして、昨日の依頼より株数は少ないのに報酬が段違いなんです?」
「マンドラゴラちゃんの声が苦手という事でみんな毛嫌いして採取してくれないんです、、、」
「そんなにですか?」
「はい、、」
どうやらマンドラゴラは地面から引き抜いた際に叫び声をあげるようだ
◯リー • ◯ッターかな?あの通りなら確かに毛嫌いされそうだ
「しかも、このマンドラゴラの依頼のランクはハルトさんの1つ上のGランク依頼で、採取方法などの座学を受けてもらう事になるので。ハルトさんのランクを1つ上げる事ができます」
それはありがたいが、昨日は最低難易度で苦戦していたのに、ランクを上げてしまって大丈夫なのだろうか、、、、
苦笑いをしていると
「ランクが上がってもまた下のランクの依頼も受けられますし。マンドラゴラの採取依頼は天命草の依頼と難易度はあまり変わらないので安心してもらって大丈夫ですよ!」
ランクを上げれば報酬も高くなるし少しは安定するか
「わかりました、ではその依頼を受けてみますね」
「ありがとうございます!座学といっても数分で終わる程度の説明だけなのでギルド側からの知識の共有程度に思っていて下さい」
「それではマンドラゴラ採取についての注意点と採取方法について説明を行いますね」
「よろしくおねがいします」
「マンドラゴラ、マンドレイクは古来より石化魔法の特効薬としての効果を持った薬草の1つです」
「マンドラゴラは地面から採取した際、赤子の泣き声のような叫び声をあげます」
「あまりその泣き声を長く聞いてしまうと吐き気や失神などに陥ってしまうので注意が必要です」
「マンドラゴラを引き抜く際には迅速にマンドラゴラの首の部位をへし折って締めてください」
え???なんかすごいこと言われた???
「首、、ですか?」
「はい!マンドラゴラは見た目が人型の形をしていて。見たらすぐにわかると思います」
どうやら聞き間違いではなかったようだ
「以上がマンドラゴラの注意点と採取方法ですね」
「ありがとうございます」
お礼を言い、ギルドを出た
「次は、図書館か」
ついにあの黒い狼について知る事ができるかもしれない。元の世界には帰る事が出来るのだろうか
図書館はミーナに聞いた通りギルドを過ぎ右に曲がったところに見えてきた
昨日、焼き菓子を食べた噴水の近くだったようだ
「ここか」
見た目は柱が見えるローマ建築の様な建物で
本を守るのに適した石造建築の様だ
入り口を入るとカウンターがあり何も言われないので素通りした
どうやら本を持ち出す際にお金が発生するシステムらしい
見渡す限り本、何処から探したものか、、
ふと、一昨日のゲイルの話を思い出す
「邪神、、」
ハルトは神話に関する本棚を探す事にした
「すみません、宗教系の本は何処らへんにありますか?」
さっき素通りしたカウンターに戻り訪ねてみた
「それでした、2階の11-Eの本棚ですね」
真面目そうな司書さんが眼鏡を片手で持ち上げながら教えてくれた
その手の人には萌えるのだろうか
「ありがとうございます」
お礼をいい二階へと上がった
「えーと、11-E、11-Eっと、、」
「ここだ」
そこには各地域の宗教の本から結婚の作法など様々な宗教に関わる本が並んでいた
その中の1つに気になる本をみつけた
【五柱神と禁忌の闇神録】
と書かれていた。始まりはこうだ
―――――――――――――――
元々この世には火 水 土 風 闇 光 の六柱の神々とそれを統べる主神が居たという
それぞれ
火は砂漠の生物
水は水に住む生物
土は地中に住む生物
風は空に生きる生物
の眷属がおり、地上へ生命を宿した
闇は時空
光は空間
の力を持っており
その力の大きさから眷属を持つことを
主神に禁止されていた
闇は他の神々たちが眷属を持つ事に嫉妬を抱いていた
光は闇を止めようとしたが、時すでに遅く
闇は魔獣を作りあげた
主神は光の神に眷属を作る事を許し、そして闇の神の創り上げた魔獣の討伐を命じた
光は地上に最初の人間の男女を創造した
魔獣は闇の時空の力の影響で何処からともなく湧いてくる、魔獣が何処からやってくるのかは主神ですらわからない
人間は光の空間の力を使って街を作りあげたという
禁忌を破り追放された闇は1匹の狼の姿へと形を変え時空の狭間に逃げ込んだ
そこから神々の誰も闇の行方は分からない
「五柱神と禁忌の闇神録」
著書:ヒューゲル=エイジス
―――――――――――――――
「なるほど、、」
「どうやら、俺を異世界に飛ばしたのは闇の神様御本人だったか」
続きは他の五柱神達について書いてある
闇の神様はあまり触れてはいけないのか、得られる情報は少なかった
他にも昔話や童話など、闇の神について書かれている本は見つかったが、ストーリー性を加え子供向けにしたものだけで最初に見た本から得られる情報と変わりなかった
「そうだ」
受付に戻りとある人物についての本を尋ねた
「すみません、ヒューゲル=エイジスって人について書かれてる本はありますか?」
最初に見た本を書いた著者だ
「ヒューゲル=エイジス氏ですね、少々お待ちください」
そういうと、おそらく全ての本の情報が書かれているであろう冊子を見て答えてくれた
「それでしたら、1階283-Fにある魔法に関する棚にあるようですね」
「ありがとうございます」
魔法か、、
歩きながら自分が着ている外套を撫で
改めて自分がファンタジー世界にいる事を再確認する
「おっと、ここか」
そんな事を考えていたら通り過ぎそうになった
「ヒューゲルー、ヒューゲルー、、」
「これが良さそうだな」
【大賢者ヒューゲル=エイジス】
ふむふむ、この人は
この世界一の魔法使いと呼ばれていたようだ
魔法使いを志すもので知らない人は居ないらしい
この人に聞けば色々とわかる気がしたがどうやら、もうこの世からは去ってしまってるようだ
その横に面白そうな本をみつけた
【初めての魔法とその基礎知識】
「お、ちょっとやってみたいかも、、」
未だこの外套以外で魔法!って物は見た事がない、自分に出来るかは分からないが試してみる価値はありそうだな
とりあえずこれは借りて後で読む事にしよう
受付で貸し出し料金を払い図書館を出た
「結構図書館に入り浸ってたんだな」
空はすっかり青から赤い空にかわり
涼しげな風が夜が来る事を知らせてくれた
「帰りながら何か食うか」
今日の儲けはゼロだが、腹が空いては戦はできぬ、明日に備えしっかりと食べる事にした
「ひさびさにお酒でものみたいなぁ」
と思いながら昨日通りで見かけたテラス席のある酒場を思い出した
「今日は涼しいしあのテラスで一杯やるかな」
着いたのは【ジャイアント フット】という酒場で、夕方から大盛況のようだ
空いていたテラスの席にすわると
ウェイターさんがやってきた
「いらっしゃい!何飲みます?」
「オススメのお酒はありますか?」
「今日は涼しいですからねぇ、濃度が高いのいっときます?」
「そうですね、濃度が高くてさっぱりしたのでお願いします」
「あいよ!ご飯はどうします?」
ハルトはメニューに目を落とした
気になる、、【ドラゴンのステーキ】、、
なんてパワーワードなんだ、、、
これしかないと思った
「じゃ、じゃあこのワイルドドラゴンのステーキ1ついただけますか?」
「あいよ、ちょっと待っててくださいねー」
というとウェイターは離れていった
そうかこの世界ドラゴンも居るのか、、
どこまでもファンタジーだ
この時間になると街灯が灯り照らされる
昨日も思ったがこの街の夜景はとても美しい
「とりあえずお酒おまち!」
「ありがとうございます」
持ってきたのはカクテル系のお酒だった
とりあえず一口
「ッ!確かに強い」
だがそれと同時に感じたのは
レモン?のような柑橘系の味だ
なるほどレモンサワーに近い飲み物か
これは名前からコッテリ系のドラゴンステーキと合いそうだ
「お次はドラゴンステーキおまちー!」
「ソースはオニオのソースですー!」
「それじゃ、ごゆっくり!」
「おぉ」
思わず声が出た
見た目は百点満点だ
ザ ステーキと言うような見た目は食欲をさらに引き立てた
高級なフィレステーキのような肉の周りにはベーコンらしきものが巻きついている
熱いうちに食べてしまおうと
一切れ食べてみる
「んんん!!いける!いけるぞドラゴン!」
周りについているベーコンが塩味を整え、ドラゴン特有の匂いを消すために使われたハーブとそれに負けじと押し寄せてくるドラゴンの味が癖になる
そして何より筋肉質で硬いと思っていたドラゴンの肉はとても柔らかい
これは世界最強の生物にして、世界最強の食べ物か!
などと頭の中では食レポをする
「そ、そうだ」
続けてお酒を口に流し込んだ
「くううぅぅ!」
「キンキンに冷えてやがる!!」
とどこぞの奴が言っていた言葉を叫び
ペロリと完食した
三日月亭に帰りミーナに挨拶をして部屋に戻り
借りてきた一冊の本を見つめる
【初めての魔法とその基礎知識】
「よし」
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